プロが使い工具のなかで、時として光り輝く製品を見つけることがある。
「フラット板金ハンマー」もそのひとつ。
板金ハンマーというのは、いうまでもなくフェンダーなど外装パーツを修復するときに使う板金業者が使うハンマーである。高度のスキル(経験と技術)が要求されるので、素人が紛れ込む余地はない。でも、高いハードルを見ると試してみたくなるものだし、自己責任でやれば問題ない。
そんな思いの読者にぜひ教えたいのが、この≪打撃面をへこませない!≫というセールスポイントを持つオーエッチ工業製の「フラット板金ハンマー」である。オーエッチ工業は、大阪にあるハンマーの専門メーカーだ。http://www.ohnet.co.jp/ である。
通常の板金ハンマーだと、どうしてもハンマーのヘリが相手に当たり傷がつきやすい。この製品は、内部の耐震ゴムを内蔵していて、ヘッドの首や少し振る構造。しかも打撃時にヘッドが少し回転する仕組みが組み込まれているので、従来型ハンマーにくらべ、格段に打痕が付かないというのである。しかも内蔵の耐震ゴムは万が一へたった時は交換がきくので、一生ものの工具ということらしい。
DEEN(ディーン)工具紹介、3つ目は、「カーブド・ラチェットハンドル」である。
カーブド、というのはヘッド部分と柄が、ヘッド根元でグイっとひねって曲がっているタイプ。工具など使ったことがない人から見ると「不良品!?」と首をかしげたくなる製品。大きくトルクをかける時はもちろんグリップ(やや柔らかい樹脂製だが)を握るが、いわゆる“早回し”といわれる使い方の時は手のひら全体をヘッドにかぶせてスナップを利かせてクイックイッと回す。カーブドラチェットは、まさにこの使い方を想定してデザインされているのである。
で、使い心地はどうか? 親指の位置が決まり、実に具合がいいのである。握ったときの心地がいいということは、手に馴染んでいる証拠。ラチェットも丸型の72ギアで、小気味のいいフィール。丸型ゆえ、さすがに左右に切り替えは両手を使うことになるが、片手の親指でプッシュボタンの押したときのフィールも悪くない。全長180ミリのなかなかお勧めの3/8インチ・ラチェットハンドルである。価格も3900円とリーズナブル。
DEEN(ディーン)工具紹介、2つ目は、憧れのピストル型ラチェットドライバーである。
“憧れ”とあえて枕詞じみた言葉をつけたのは、もちろんスナップオンの同タイプのラチェットドライバーがあってのことだ。
DEENのピストル型ラチェットドライバーは、価格が4200円とリーズナブルというだけでなく、実は、スナップオンに比べ、アドバンテージがある。付属のビットが実に豊富だという点がひとつ。プラスのビット3本、ヘキサゴン(6角)ビットが3番、4番、5番の3本、それに差し込み角1/4インチ(6.35ミリ)ビットが1個、計7つのビットも付属しているのである。しかも、グリップの中央をぐっとプッシュすると付属ビットケースがポイッと顔を出すという仕掛け。グリップのアングルは、グリップ中央のボタンを押すことでストレートあるいはガンタイプの2つに変化させられる。加えて、DEENのいい点は、シャンクが付属の150ミリだけでなく、オプションとして用意されている50ミリ(390円)も使えるという点だ。
ところが肝心のシャンク、個体差なのか、ややグズグズで、少し大きく振るとグリップから外れそうな気配。それと、可変グリップのジョイントのガタ(遊び)が、大きいため、工具自体を左右に振ると不愉快なカタカタ音が気になった。でも、ラチェットのフィールは細かい感じで悪くない。
こうなると・・・むしろ2400円で手に入る「スタビラチェットドライバー」のほうが使えるのかもしれない!? ハンドツールは手の延長線の道具、価格が安くて満点という製品はないと考えたほうがいいのかもしれない。
DEEN(ディーン)という工具ブランドをご存知だろうか?
工具専門メーカー≪ファクトリーギア≫という全国8店舗で展開しているショップのオリジナルブランド(プライベートブランド)である。
既存のハンドツールにはない「痒いところに手が届く」感じを持った工具でアピールしている。活字世界の雑誌やこうしたブログ媒体では、記事にしやすいこともあって認知度が上がりつつあるようだ。手にとってみると、まんざら悪くないので、いくつかを紹介してみよう。
第1バッターは「ドライバーハンドル」。一見どこにでもありそうだが、グリップエンドを見て「ややっ!」となる。エクステンションバーとしても使えるドライバーハンドルなのである。たしかKO-KENの1/4インチに昔からこのタイプがあり、筆者も愛用しているが、この3/8インチバージョン(むろんディーンにも1/4インチがある)。全長200ミリで、同じ寸法のKTCよりもなぜか8グラム軽い182グラム。ただし、KO-KENの250ミリ・エクステンションバーは250ミリで196グラムとかなり軽いのであまり自慢できない。
やはり工具は使ってナンボの世界。この製品の気に入らない点は2つ。5角断面の樹脂グリップがスナップオン風の刷毛でなでた風合いなのだが、表面がテカテカしていかにも滑りやすい感じ。それに、肝心の差し込み角部の精度がいまひとつなのか相手のソケットなどとの結合が固すぎるのである。脱着にチカラを必要としすぎるのだ。価格1500円とリーズナブルなだけに残念だ。
スピードハンドルという工具をご存知だろうか?
日本の整備士はあまり使わないのだが、欧米の整備の現場、とくにF1などモータースポーツのメカニックが好んで使っているハンドツールのひとつ。クランク状になっていて、先端にソケットを取り付け、早回しと大きなトルクを変えられるとして重宝がられている。
そのスピードハンドルの先端差し込み部をフレキシブルにしたハンドツールが登場した。KO-KENの「フレックススピーダー」がそれ。差し込み部は1/2インチ(12.7ミリ)。エクステンションバーとソケットと組み合わせ、ホイールレンチとして活躍できる。ただし、力の伝達にコツがいるため、使いこなすにはすこし慣れが必要だ。スキルが必要という意味では珍しいハンドツールである!
通常ホイールレンチは、クロスタイプで工具箱に入れるのが難儀だが、フレックススピーダーなら、比較的楽に収納できるのが大きなポイント。ホイールナットの脱着だけでなく、全長450ミリのロングハンドルとして高いトルクがかけられ、さまざまなシーンで使えそうだ。価格は、8500円といささかお高いが、珍しいツールだけに自慢の1本になることを思えば高くないのかもしれない!?
世の中には「よくぞこんな奇妙なものをつくったものだ!」とたまげることがあるが、まさにこのラチェットハンドルもその部類だ。
1本のラチェットハンドルの頭部に、差し込み角1/4インチと3/8インチの差し込み角が2つも付いているのである。両方にたとえば10ミリと12ミリのソケットを付けておき、スピーディに作業を進めることができる。ソケットを付け替える手間が省け、2本のラチェットハンドルを準備することも要らないということか? 出張サービスのときなどには便利かもしれないが、通常のシチュエーションではあまり便利と思うことがないのではないだろうか?
それよりも、このツールには不満がある。ギア数が48.つまり振り角7.7度と比較的小さく狭いところでの作業性がいいのだが、ギアのフィーリングがあまり褒められたものではない。スムーズさにも欠ける。ヘッドが重いので、バランスもあまりよろしくない。
工具というものは、手の延長線で使うものなので、意外とこうしたフィールの良し悪しが大切となる。そうした“反面教師的ツール”と一刀両断に切りつけると、お叱りを受けるかもしれないが。価格が1600円とバカ安なので、笑って済ませるという向きもあるが・・・。購入先はストレート(http://www.straight.co.jp)。
たとえば、バッテリーを車体に止めているブラケット。そのブラケットは2面幅が10ミリのナットでとまっていることが多い。このナットを取り外したり、締め付ける際に使うのはスパナ、あるいはメガネレンチ。
ところが通しボルトのため、スパナもメガネレンチもうっかりすると、つい相手のナットのかどを外し、空振り! ということになってしまう。実にいまいましい限りである。スパナの場合、とくにこの空振り率が多くなりイライラ度が急上昇。そんな時、板ラチェットがあると実にスピーディにことが運ぶ。だが、これもうっかりすると≪取り逃がす≫ということもある。
そこで第3のツールというべき存在がある。
それが『ヘッドストップタイプのメガネレンチ』である。一見すると、なんら変哲のないオフセット45度のメガネレンチに見えるが、実は、メガネ部のどちらか片側に「ツバ」を付け、そこでナットを押さえるのである。つまり、あまり神経を使うことなく、スムーズに通しボルトのナットの脱着が可能となるのである。台湾製だというが、なかなかいけている。ブレーキのブリーダーニップルに使うと便利そうだ。8×10ミリで価格は580円とバカ安だった。7×9ミリのタイプもあるようだ。9ミリといえばフェラーリのブリーダーを持つのでフェラーリオーナーは必携。ただしフェラーリをDIYする人はあまりいないと思うが・・・。購入先はストレート(http://www.straight.co.jp)。
今回も、LAのスーパーマーケット「ウオルマート」で見つけたカー用品を紹介しよう。
「スイス・テック ボディガード」というのがそれ。手のひらに載るほどの樹脂製の小物で、キーホルダーとしてクルマの鍵と一緒にしておく。
商品名の“ボディガード”とは何ぞや?
まず、先端部の突起をクルマのガラスに強く押し付けると、ガラスが粉々になる! つまり、たとえば水没などで車内に閉じ込められた場合、これを使いドアガラスを破ることができる。車外に脱出できるエマージェンシーツールである。
2つ目が、シートベルトカッターも付いているので、万が一事故にあい身動きできない場合、シートベルトをこれでカットできる。
加えて、エマージェンシー用の点滅赤ランプ、夜間鍵穴に光を照らすフラッシュライトとしての役目、耳を切り裂くエマージェンシーを知らせるアラーム音を鳴らすこともできる。これらはすべて、内蔵のボタン電池とスピーカーが活躍するから。つまりひとり5役のサバイバル・ツールなのである。気になる価格は、12ドル96セント。日本円で約1300円とリーズナブルだった。
LAで立ち寄ったスーパーマーケット「ウオルマート」は、不景気風が吹くアメリカ小売業界でもいわゆる勝ち組で、活気がみなぎっていた。
ウオルマートの工具売り場で見つけたのが、この「マルチビット・ラチェット・スクリュードライバー」。ビットがなんと10個も付いているラチェットドライバーで、価格は10ドルとバカ安。日本円で約1000円だ。
ビットはドライバーの軸に6個、ホルダーに4個。プラス、マイナスビットがそれぞれ2個ずつ、トルクス2個、ヘックス2個、それにポジドライブ2個。壁掛け用のホルダーがおまけに付いているのは泣かせるが、全長が270ミリといささか長いのはいただけない。これは軸に予備のビットを付けたこともあるが、グリップ部がでかすぎるから。
左右に切り替えのフィールについてはどうか? 正直、あまり節度がない。カキカキッと切り替えられる・・なんて期待したら裏切られる。しかもギア数が15と少なすぎ!? でも、価格から見たら、十分元は取った工具。価格が約10倍近いスナップオンと比べたらトホホな気分になるが、日本製のラチェットドライバーと比べるといい勝負すると見た。それがこのラチェットドライバーの結論だ。
TONEのハンドツールというと、いささかダサい感じを受ける。一昔前の整備専門学校の推薦工具、あるいはくたびれたおじさん整備士の工具箱でポピュラーに見かけるせいかもしれない。どちらかというとブランド戦略に背を向け、質実剛健さを売りにしているイメージ(苦しい表現)である。
そのTONEのハンドツールのなかに他メーカーを圧倒するハンドツールがあることはあまり知られていない。
チタン製のコンビネーションレンチとステンレス製のコンビネーションレンチである。つまり通常のスチール製ではなく、耐食性にすぐれ、超軽量のチタン製と錆にめっぽう強いステンレス製の2大素材のハンドツールなのである。写真はいずれもサイズが12ミリ。チタン製は35グラム。ステンレス製は約3割り増しの60グラム。とくにTONEではステンレス製のツールは、ドラインバー、ソケット、ラチェットハンドル、エクステンションバー、ハンマー、モンキー、ニッパー、ラジオペンチなどフルラインナップ。一方のチタン製はコンビレンチしかないが、磁化しないので、電子関係の機械の整備にも使えるというのがウリだ。手に持つとウソのように軽い。でも、チタン製ツールの弱点は、高価なこと。1本1万690円。ステンレス製の約3倍! 通常のスチール製の約10倍。そう聞くと、思わず後ずさりする!?
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