前回紹介したTOPTULのハンドツールのほかにもうひとつ興味あるハンドツールを紹介したい。「ダイナミック・コンビネーションレンチ」という名のコンビレンチ。
どこがダイナミックなのかというと、スパナ部だ。通常のスパナ部は、構造上振り角度が60度。ところが、この工具はスパナ部に巧妙にギザギザを付け、振り角度を半分の30度にしている点。タイトな場所にあるボルトやナットも回しやすい。
この工具の利点はもうひとつある。
通常のスパナ部は、相手のボルトの頭との接点が2点なので、ともすれば滑りやすく、なめやすい宿命がある。スパナが当てにできない工具だという理由はここにある。ところが、この工具はギザギザ形状のおかげで、5点保持で、応力が分散。そのぶんトルク伝達を確実なものとし、本締めができちゃうという理屈なのだ。仕上げは鏡面仕上げで、価格もたとえば12ミリで880円と安い部類。
“台湾ツール、恐るべし”という感、ありだ。問合せ先は、TOPTULブランド(TOPTUL JAPAN 電話06-6452-3226E-mail [email protected])。
一昔前まで、「あまり近づきたくないツール」の代名詞だった台湾製ツールも、このところ長足の進化を遂げている。むしろ、老舗ブランドにはない自由度が高い冒険心旺盛なツールが少なくない。
TOPTULブランド(TOPTUL JAPAN 電話06-6452-3226E-mail [email protected])のハンドツールもそのひとつ。
プロ向けハンドツールと謳っているだけに、中身はジャパニーズツールやジャーマンツールと互角に戦える魅力を備える。たとえばスタビ・スイベル・ラチェットハンドルなどはお勧めだと思う。スイベル(SWIVEL:回転する)というのは、ヘッドがくるくる回ることができるため、ハンドルに対しゼロ度から90度はむろん、180度にも自在に動き使える。
スナップオンの通称「ベンツラチェット」、KO-KEN、スエカゲツールにも同じタイプがあるが、スタビ(小人の意味)タイプでグリップがエルゴノミックなのはこれしかない。グリップの握り具合がなんとも言えず上々で、末永く使える予感に満ちている。
ギア数は72なので、最少送り角度が5度。つまり狭いところでの使い勝手が高いという証拠。差し込み角は3/8インチ(9.5ミリ)で、全長は160ミリ。価格は6800円だ。
この時代、ユーザーが心底欲しい工具を見つけるのは至難の業だが、かなりイケてるというドライバーを見つけたので紹介したい。
大阪にあるドライバーの老舗メーカー・ベッセル(電話06-6976-7771)のラチェットドライバーである。品番840―L.。数ヶ月前同じベッセルのラチェットドライバー(品番830-MG4)をこの欄でお披露目したが、その姉妹バージョンといったところ。
これは手のひら形状を強く意識したエルゴノミック(人間工学)のハンドルで、しかも全長が110ミリ弱と、通常のドライバーの約半分。スタビドライバー並みのコンパクトさなので、狭い場所にあるビスやボルトを脱着しやすいのが大きなアドバンテージ。スタビドライバーはともすればトルク伝達力に難があるが、これが手にピタリ密着するためシュアなグリップ感で頼もしい。
しかも、115ミリの長めのビット(プラス3本、マイナス2本の計5本)もスタンバイしているので、これを付けると全長が約200ミリになり、通常のドライバーの全長に変身できる。小さなビットは、グリップ内に2本収納できる。しかも本締めできる高トルク対応型。どこにも死角がないと思えるが、ひとつだけ不満がある。左右の切り替え時のフィールにやや節度がないだけでなく、現在右回しか左回しなのかが目視で確認しづらい点だ。
ここ数回続け、このコーナーはハンドツール漬けである。
映画と同じで、一度興味を抱くと新しい工具はないものかと3日にあげず工具屋通い!?
そこで、見つけたのが、TOP工業の「両口ストレート・メガネレンチ(超ロング)」である。超ロングを強調したいわけだから、商品名の最初に≪超ロング≫を持っていくべきところ、最後に、しかもカッコ付きで(超ロング)と表現するあたり、なにやら奥ゆかしい!?
そんな与太解説はともかく、エンジンルームの奥にあるボルトを緩めようとこのレンチでアタックしてみた。普通、メガネレンチは30度ほどオフセット、といって軸とボルトのメガネ部がずれていて、それはそれで使いやすいケースがあるのだが、このレンチはストレート。オフセットした工具ではどうにもなりません! というときに威力を発揮するのである。ストレートなので、相手のボルトに対してトルク伝達フィールが高く、いわゆるシュアな感じで上々だ。しかも超ロングゆえ、てこの原理で小さな力でも楽々回せる。メーカーによると7割の力で同じ締め付け力が得られるとのことだ。堅く締まったボルトの脱着がスムーズと見た。10×12ミリで全長300ミリ、価格は2069円。TOP工業のホームページは、http://www.toptools.co.jp
コンビネーションレンチのメガネ部が、ラチェットタイプになっているレンチである。
通常ラチェット機構を組み込むとヘッドが大きくなりがちだが、サイズ12ミリで24.2ミリとスパナ部の25ミリよりわずかにコンパクトに仕上げている。締め付け方向と緩め方向は、レンチを逆にして使うのだが、暗がりでもたちどころに分かるように締め付け方向(右回し)には黄色のリングが、12角部近くに配する。使ううちに禿げてはくるだろうが、なかなかお洒落である。
しかも、72ギアを使っているので、送り角度が5度、つまり5度レンチを振るスペースさえあれば回せる理屈。手狭なところにあるボルト・ナットに対することができるということだ。加えて、ギアを受け止める歯を6枚にすることで、本締めできるほどの高トルクに耐える。もちろん、レンチにパイプをつなげて過度なトルクをかけるのはご法度だ。
ラチェット機構を持つメガネ部は、上下に180度首を振ることができる点も使い勝手の向上に貢献している。メガネ部には、相手のボルトやナットの角を痛めない角丸形状(スナップオンで言うところのフランクドライブ)としている。スタンダードの長さのほかに、ロングタイプ(たとえば12ミリでスタンダード172ミリに対し312ミリ)も用意されている。ちなみに、表面仕上げは梨地と鏡面の中くらいのサテン仕上げと呼ばれるフィニッシュでいい感じである。TOP工業のホームページは、http://www.toptools.co.jp
RATCHETというのは英語で「・・・に歯止めをかます」という動詞。ラチェットハンドルをはじめハンドツールの世界ではそのラチェット機構を持つ工具が少なくない。ハンドツールにラチェット機構を組み込むことで、飛躍的に工具が使いやすくなったのも歴史的背景もある。
一昔前まで日本製ラチェットハンドルは、安っぽくて本格的な作業には向かなかった。ホビー工具の領域だった。ところが、最近はこの常識が覆りつつある。本締めができる本格的なラチェットドライバーが登場している。
ドライバーメーカーの老舗であるベッセル(電話06-6976-7771)から発売されたのが、「メタルライン・ラチェットドライバー」。いわゆる大きなトルクをかけられるプロ向けの製品だ。スナップオンなどに比べ小ぶりで軽量なので、日本人の手になじみやすい。
送り角度が15度と細かいギアで作業時のフィーリングも上々と見た。うれしいのは、ビットが豊富だということ。とくに使用頻度の高いプラスビッドが1番2番3番とフルラインナップ。これにマイナスビッドも加わり計4個。ハンドルエンドに付いているネジ式キャップを開けるとビット収納場所となる。欲を言えば、ヘックスビッドが追加でき、左右の切り替えフィールがもう少し重厚感があればさらによかった。
エンジンルームの込み入ったところにある、たとえばオルタネーターを取り外すときに威力を発揮するのがショートタイプのメガネレンチ。
長いレンチだと振り角度が小さくなり、いちじるしく使いづらいか、もしくは全く使えないケースがある。無論そんなときには素早く作業ができるはずのラチェットハンドルはまずお呼びじゃないのだ。その点ショートタイプのメガネレンチは、相手のボルトの頭にレンチをかける回数こそ多くなるが、実に小回りが利くハンドツールの一品だ。
新潟三条市は、知る人ぞ知る金物の町。その工場団地の一角にあるTOP工業(http://www.toptools.co.jp)の製品群のなかに「両口ショート・メガネレンチ」というのがある。小さいサイズだと5.5×7ミリ、一番大きなサイズで17×19。その間に7サイズだから計9サイズのシリーズ工具。使用頻度が高いのは10×12ミリ。価格は1330円とお手ごろ。メガネ部の立ち上がり角度は45度(オフセット角度ともいう)で使いやすい。ちなみに、KTCにも同じタイプがあるが、全長が127ミリ。TOPのほうは115ミリとより短いので、私はこちらに軍配を上げる。
省資源指向が一段と加速しつつある車社会だが、このほどブリヂストンが、大々的にリトレッドビジネスを打ち上げた。リトレッドというのは、磨り減った使用済みタイヤのトレッド(地面と接するギザギザ部分)の張替え作業のことである。いきなりブリヂストンがこの商売を広げようとしたのは、アメリカのリトレッド専門企業「バンダグ社」を買収したからだ。
実は、欧米ではリトレッドの需要は約半数。日本では現在1割程度。大型タイヤのユーザーである輸送業界、バス業界は、少しでも安いメンテナンスを求めている。新品タイヤよりも3割ほど安く付くリトレッドはこれから注目されるというわけだ。
実際取材したところ、実にコンパクトな工場だった。6名のスタッフで一日44本の少量生産。2重3重の受け入れチェック、2重の試験をへてクオリティの高いリトレッドタイヤが出来上がっていた。ちなみに、新品タイヤよりも資源の節約は68%に達し、CO2の削減は1本当たり165kgだという。乗用車用のタイヤのリトレッドは需要も少なくコスト的にも引き合わず、いまのところ存在しないようだ。このリトレッド工場、今後数年間で全国に20拠点程度設置するという。
前回デジタルトルクレンチを紹介したが、同じスエカゲツール(http://www.suekage.co.jp)の商品群のなかに、実にユニークで便利なツールセットがあるので眺めてみよう。
「カプリングソケットハンドル・セット」である。
カップリングというのは≪連結≫の意味。それ単独ではほとんど役に立たないが、連結することで、あっと驚くほどの機動性を見せるツールといえそうだ。
300mmの長めのハンドルを軸に、「カプリングソケットヘッド」「カプリングエクス」「カプリングバー」「カプリングアダプター」など8ピース(8つの小部品という意味)で構成される。カプリングという文字が邪魔だが、要するに12段階(360度割る12で1段階30度)の角度がハンドルとのジョイント角度で選択できるのがアドバンテージ、その1.。2つ目のアドバンテージは、ソケットヘッドがサイズ8,10,12ミリと専用で、全高は通常のラチェットハンドルの場合の半分。3つ目の利点は「カプリングエクス」(エクスはエクステンション:延長の意味)を使うことで、手が入りづらいところにあるボルトやナット脱着に威力を発揮する点だ・・・言葉にするのがもどかしいほど使うと、なるほどと思わずつぶやきたくなるツールセットである。
かつての日本の機械整備の世界では「小さなボルトは腕の力でグイッと締め、大きなボルトは身体全体を使い締めこむ」というのが締め付けトルクの概念だった。
それから60数年、いわゆるサンデーメカニックの世界にもトルク感覚は必須のものとなっている。クルマやバイクの整備(サービス)ではトルク管理がごく当たり前なのだ。
そのバックアップする道具の決定版ともいえるツールが登場している。
デジタル式のトルクレンチである。「プロオート・デジタルトルクレンチ」(スエカゲツール:http://www.suekage.co.jp)は、一度手に持つと愛着の工具のひとつになる。
使い方は至極簡単。設定トルクを最大9件まで予約できるので、愛車の主要ボルト、たとえばシリンダーヘッドボルト、タイミングベルトカバーボルト、ヘッドカバーボルト、サーモスタット取り付けボルト、カムシャフトプーリーボルト、スパークプラグ締め付けトルクなどをあらかじめセット。これを即座に呼び出し、ヘッド部にエクステンションバー+ソケットを付け締め付ける。すると液晶表示部にトルクがリアルタイムで表示されると同時に、表示部上にあるLEDのグリーンランプが表示。1~5までのグリーン表示で、設定トルクの80%、85%・・・と5%刻みで第5のグリーンランプで97.5%。第6ランプの赤ランプで設定トルクの100%を示し、同時にブザーの音で教えてくれる。これなら薄暗がりのなかでも作業ができ、エキサイティングなのだ。トルク値も㎏-m,Nm,インチなど即座に切り替えられる。旧いアメ車のオーナーにも便利。
手に持つハンドツールとしてもバランスがよく、使い勝手も2重マルと見た。トルクの守備範囲別に全部で8種類あり、写真は8.5~85Nmの測定範囲の製品で価格は2万9500円だ。
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