同じ昭和でも、名古屋に噴射ポンプとターボチャージャーをリビルト(再生)している「昭和」(℡052-751-3493)という企業がある。
リビルト企業がすごいのは、数多くの不具合部品を眺めているので、どの機種がどんな不具合で入庫してくるのかがわかってくることだ。季節によっても注文の多い製品もある・・・。エアコンのコンプレッサーなどはツユが始まる5月ぐらいからだというのも、そうしたことである。
冬場になると、とくに不具合が起きて入庫してくるのはディーゼルの噴射ポンプだという。
乗用車ディーゼルこそ少ないが、大型車や建設機械の噴射ポンプがやってくる。気温が下がり、シールが硬化してもともと経年劣化で固くなり始めたシールやOリングが硬化して、ついにはリーク(液漏れ)しはじめ入院となるのである。とくに分配式噴射ポンプは燃料で潤滑しているので、シールやOリングの劣化がエンジンオイルで潤滑している列型に比べやや早いともいわれる。夏場に不具合が内蔵され、冬にそれが露呈する、という図式らしい。
どんな商売でも「季節」を感じるときがあるものだが、噴射ポンプのリビルダーにとっては、仕事が忙しくなると冬が来たのを感じる!?
クルマの整備で欠かせないのは手袋である。通常は軍手を使うのだが、軍手で上手くゆかないケースもある。手狭なところにある部品をつまんだり、あるいは小さな部品を取ろうとするときには、医療の世界でもっぱら活躍している使い捨ての薄手の樹脂グローブがいい。ただ、この樹脂グローブも脱着がしづらいのと夏場には内部に汗がたまり気持ち悪くなるという欠点もあるが・・・。
ここで紹介するのは、NASCARやインディレースなどレースシーンで活躍しているメカニック専用のグローブ。MECHANIX WEARがそれで、ネットで探すとさまざまなタイプがあり、なかには熱いマフラーを握れるほど耐熱性の高いものもある。
このグローブがうれしいのは、値段が高い(1万円もするのも珍しくない!)せいか、5サイズあり、裁断ぐあいが優れているので装着感が抜群に高いことだ。はじめに少しニオイがきついが、もちろん洗濯すればニオイが消える。永く愛用するグローブとしてはお奨め。サイクリング、真冬のグローブ用としても使えるところもいい。
ブレーキパイプやクラッチ系に使われているフレアナット。女子がはくフレアスカートの語源と同じで朝顔の形状でネジ径のわりには頭が小さなナット。そのため、通常のスパナで回そうとするとナットのカドを舐めてしまいアウト! 高い圧力が加わるところなので、締め付けトルクが大きくスパナだと確実に舐めてしまうのだ。パイプの途中なので、もちろんメガネレンチは使えない。
そこで、先割れメガネの異名持つ「フレアナットレンチ」の登場である。メガネレンチの一部が切れていて、パイプに楽に通すことでナットを脱着できる。
ブレーキのフレアナットは、ネジ径が8ミリのわりには2面幅が10ミリというのが通常(普通のボルトはネジ径8ミリなら頭の2面幅は12ミリとか13ミリ。これがさっき言ったスパナで舐めてしまいやすい別の理由)。ちなみに、フェラーリなどはかなり特殊で9ミリという2面幅を持っている。
フレアナットレンチには、オーソドックスな棒状のレンチのほかに、クローフット(カラスの足の形状)、ソケットタイプのだいたい3タイプがある。
マスターシリンダー周辺の棒状レンチでは使えないところには、ソケットタイプが威力を発揮する。いずれにしろ、もしブレーキ周辺をDIYする機会があれば、このフレアナットレンチのことを思い出してほしい。
人に歴史あり、人の顔は百人百様。
エンジンオイル内の金属粉やゴミ、カーボンを除去してくれるオイルフィルター。その中身にも、実は百人百様、歴史が隠されている!?
写真を見てほしい。上から「菊花型」「アフターマーケット用スポーツタイプ」「成形体型」「エレメント交換型」。すべて中身がわかるようにカットしたものだ。
上3つは主流のカートリッジタイプ。一番上の菊花型は、英語ではなぜかローズ・シェイプ(バラのカタチ)と呼ばれるタイプで、昔からある。上から2つ目のスポーツタイプはろ紙にメッシュと強力マグネットを内蔵し高濾過効率を高め、しかも耐久性を高めている。3つ目の成形体型は、量産性が高くトヨタ紡織オリジナルタイプで、日本では一番売れており(ブランド名はデンソー)、耐久性は菊花型と同じ。リサイクル性、つまり分別性が比較的高い。一番下の交換型は、欧州車の主流で、フィルターのみ交換タイプの意味で廃棄物を大幅に削減する。ちなみに、日本では1万500キロごと交換が一般的だ。
東京モーターショーのトヨタ紡織のブースで見つけたものだ。
ラチェットハンドルを使ってボルトやナットを締めるとき、空転して共回りすることがたまにある。
そんなときは、ソケットを直接手で回すなどで対処するが、まわりがタイトだといらいらしてしまう・・・。上手く対処できないケースが出てくるからだ。
こうしたトラブルをいっきに解消してくれるのが≪スピンディスク≫(別名:クイックスピナー)
ソケットとラチェットハンドルのあいだにこれを取り付けておけば、もし共回りしてもスピンディスクの外周を指で回せば、いいだけ。あとは通常のようにラチェットハンドルで締めるだけだ。
スパークプラグを取り付ける際にも、エクステンションバーにスピンディスクを取り付け2~3山ほどねじ込めば、不用意なねじ山破損トラブルを完璧に回避できる。意外と使えるこのスピンディスクは、KO-KENやKTCのネプロスブランド(写真右)から発売している。たとえばネプロスだと3/8インチで2210円だ。
「クローフット」(カラスの足)という名称のハンドツールがある。日本では、ポピュラーなツールではないが、アメリカでは手軽に入手できる工具のひとつ。
ソケットツールの仲間で、筆者の手持ちは差し込み角3/8インチ。この工具、早い話がスパナの先端部に特化したもので、ラチェットハンドル、エクステンションバーと組み合わせで、手が入りづらいところにあるボルト・ナットを脱着する。
スナップオンで揃えようとすると目の玉が飛び出るほど高額になるが、「CRAFTSMAN クラフツマン」ならばバカ安で入手できる。写真は10ミリから19ミリまで10点セット。なにぶん10年ほど前に購入したものゆえ正確な価格は不明だが、20ドルはしなかったはず。
クラフトマンは、シアーズローバックというアメリカの大手百貨店の工具部門のブランド名だ。シアーズローバックは、1886年(明治19年)に創業。カタログによる通信販売で地盤を確立し、のち全米に3000以上の販売拠点を持つ巨大企業。シカゴにあるシアーズタワーは観光地としても有名だ。
アメリカに観光に出かけたおりは、全米の都市に必ず一軒はあるシアーズの販売店に立ち寄り「クラフツマン」の工具を手に入れて欲しい。
恥ずかしながら≪ハンドツール評論家≫でもある筆者は、12ミリサイズのコンビネーションレンチの収集家でもある。いつの間にか100本近く所有する。梨地仕上げの多いドイツ工具、鏡面仕上げの多いアメリカンツール、いろいろなタイプのある日本ツール・・・。使用頻度の高いコンビレンチをガチャガチャいじってみると、なにやらその国の背景らしきものが見えてくる!?
ごく最近発見したのがインドからやってきたキャンベルというブランドのツール。ドバイ、つまりアラビア半島の一角を占めるアラブ首長国連邦製である。ドバイは外国人が9割を占めうちインド人が一番の多数派を形成するだけに、「世界で最も美しいインド人の町」といわれるオイルで反映している砂漠の中の近代都市だ。1990年には人口が56万人だったのが、今年はその倍の120万人を越える急成長都市。
そこで作られたハンドツール。中国に次ぐ自動車消費大国になる予定のインド。そのインドの自動車を支えるハンドツールがこれである。そう考えると、モダンアラビアンナイトの物語をふと想像してみたくもなる。
車載用の上等のクロスレンチが欲しい。 そんな思いが強い読者に朗報だ。
ソケットツールでおなじみのKO-KEN(山下工業研究所)から、「フリーターンクロスレンチ」という名のクロスレンチがデビューした。レンチ部の先端は差し込み角1/2インチで、21ミリ、もしくは19ミリのソケットを取り付けて使うのだが、ハンドルバーが脱着式なので、収納に便利というのがいい。ハンドルバーは楕円断面で、高級感にあふれ、トルクをかけやすい。より高いトルクをかけるときはアルファベットのT字型にして使い、早回しのときにはクロス状で使う。
レンチのグリップ部はカラー形状なので、早回しがやりやすい。重量が940グラムと数字的にはやや重いが、使ってみるとその重量がプラスに働いていることが分かる。価格は7770円とやや高いのが難。近いうちに21ミリと19ミリの両口ソケット付きがデビューするというから、これを待って手に入れたほうが得策だ。
バイクのエンジンをばらしたことのある読者レベルならお分かりの通り、エンジンをはじめ最重要なところに使われているボルトやナットには修理書などを眺めると、締め付けトルクが表示されている。
乗客をたくさん輸送する観光バスが、高速道路のサービスエリアで点検ハンマーを使いホイールナットを叩いている情景に出くわした経験のある人もいると思う。点検ハンマーでナットを叩くと、緩んでいる場合の音が鈍くなり、すぐ分かるのである。ホイールナットがもし緩んでいたりすれば大事故につながりかねないための重要な点検である。
締め付けトルクの単位はNm(ニュートンメーター)である。乗用車のホイールナットの締め付けはだいたい90Nm。スパークプラグの締め付けトルクは約20Nmである。オイルパンのドレンボルトは30Nmぐらい(クルマやエンジンにより異なるので正確な数値はサービスマニュアルで確認すること)。それ以下の締め付け具合なら緩む恐れがあるし、逆に締め付け過ぎはネジ山を壊してしまう。
こうしたトルク感覚は一度トルクレンチを使い実際≪体験≫するのが一番だ。
ユニバーサルジョイントは持っていてもユニバーサルソケットを持っている読者はあまりいないと思う。
ユニバーサルジョイントはセットツールのなかに入っているため保有しているが、ユニバーサルソケットは、通常のソケットの約4~5倍の高価格のため購入に躊躇する。KTCのソケットでいえば、ネプロスのソケットが3/8インチ差し込み角で1000円前後なのに、ユニバーサルソケットとなると5000円近くもする。
使用頻度の高い10ミリ、12ミリ、14ミリの3つを手に入れるには1万5000円近くの散財となる。これはつらい。
ユニバーサルジョイントはソケット+ユニバーサルジョイントとなるため、全長がどうしても長くなり、そのぶん使いづらいケースとか、なかには使えない場合が出てくる。理屈の上ではそうなのだが、では超高コストなユニバーサルソケットでないとダメな場合があるのか? といえば、あまりない、といえる。それにユニバーサルジョイントにもいえるのだが、曲がり角度が大きくなると使えない宿命。
ユニバーサルソケットを1個だけ手に入れ、このあたりをあれこれやってみると面白い。
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