スバルという自動車メーカーは、世界でもかなり特異な自動車メーカーだ。
けっして悪いイメージではない。航空機メーカーの流れを汲んでいるだけではなく、小なりともいえ独自性を出そうと長年頑張ってきたからだ。
そのスバルからニューモデルが登場した。「WRX S4」である。
1992年から、WRXシリーズが登場し、世界ラリー選手権でも何度も優勝し、その名を高らしめてきたブランドだ。でも、これまでのWRXはインプレッサをベースにしたいわばチューニングカー、バツの悪い言葉で言えば改造車みたいなもの。今回デビューしたのは新しいカテゴリーとしてひとり立ちさせたWRXなのである。300PSで、400Nmというラリーバージョン仕様に限りなく近い。つまり、スバルの狙いは、エコカーがはびこる世の中で、かなり尖ったキャラクターのクルマを登場させたわけだ。
でも、一昔前のプロしか扱えない車ではない。高トルク対応のリニアトロニックと呼ばれるCVT(つまり2ペダル)で、時速50キロまで対応の衝突予防装置(アイサイトのバージョン3)、ダイナミックな走りからジェントルな走りまでを選択できるSiドライブ機構を装備。しかもJC08モード燃費13.2km/lでエコカー減税対象車。S4というのはスポーツ・パフォーマンス、セーフティ・パフォーマンス、スマート・ドライビング、ソフィストケーティド・フィールの4つのSだという。
つまりこのクルマは、WRXの尖った部分を持ち、安全とクルマを操る楽しさを兼ね備えた、提案型のクルマなのである。気になる価格は税込みで334万8000円からだ。月販400台が目標だから、しばらくは、これを軽く超えることは間違いないが、それがいつまで続きロングセラーカーになるかどうかが注目だ。
自動車整備業界の人間でない限り、整備機器総合商社のことに気付くことはまずない。
日本にはおよそ7800万台の乗用車が存在し、9万軒ほどの整備工場があるという。整備工場といっても2人ぐらいで営む田舎の修理工場から整備士50名前後をようするメガディーラー工場までさまざま。そうした自動車の整備をおこなう工場を顧客として、ジャッキやリフト、車検機器といった整備機器からハンドツールまでを供給する役目をするのが「整備機器総合商社」である。大手商社としてバンザイ、安全自動車、イヤサカの3つがあり、それぞれスタッフ数は300~400名程度の規模だ。ふだんユーザーからはあまり顔が見えない存在。
先日、そのひとつイヤサカを取材したところ、思いのほかビジネスが受けにはいっていることがわかり驚いた。
ここ数年少子化と若者のクルマ離れが加速し、どこの自動車販売業も頭打ちの状態だということはよく知られている。ところが、とくにディーラーなどは、利益を挙げるため新車販売から軸足をクルマのサービス(整備ということだ)に移しつつあることから、新規の整備機器類の販売が好調で、イヤサカはじめ整備機器業界はホクホク顔というわけだ。しかも、ただ顧客の注文に答えるだけがビジネスではない。車検やクイック修理、板金修理だけでなく、ホイールアライメントテスターを導入してのアライメント調整、ハイブリッドカーの修理、洗車、室内リフレッシュ、タイヤやバッテリーの販売など幅広いサービスの展開を進めている。ユーザーから見るとワンストップ自動車サービスということだ。ディーラーから言えば、これまで外注していた業種も内製化することで、より利益を上げていこうということらしい。生き残りをかけてシノギを削っている。
ちなみにイヤサカは、アメリカのハンター(写真)というホイールアライメント・ブランドの日本代理店権を持ち、かれこれ60年。アライメントの大切さがなかなか日本では浸透しないなか、現在でも1台500万円ほどするアライメントテスターが月に20台は販売しており、日本でのこの分野のシェアは6割だという。
17万台以上のリコール問題を起こしたフィットとヴェゼルは、今後のクルマ作りに大きな課題を突きつけている。
JC08モードで、36.4km/lというクラス断トツの好燃費でデビューしたフィット、およびその姉妹車ヴェゼルが、発売早々好調な滑り出しをみせ販売数がぐんぐん伸びていた。
ところが、エンジンとトランスミッションにまつわる複数回のリコールで、このところホンダの信頼度は落ちたかに見える。ドライバーが意図しない状況で、急発進するという不具合は、数日前免許を取得した女性ドライバーでなくても、度肝を抜く不具合。原因は、クラッチの摩擦特性とマッチしないエンジンの制御コンピューターのプログラムの不適切だとされる。
早い話、このフィットもヴェゼルも、ドイツのシャフラーというボッシュと並ぶメガサプライヤー(部品製造企業)と共同で開発したツインクラッチ(DCT)がらみの不具合なのだ。1モーター内蔵の7速DCTに高容量・高出力のリチウムイオン電池、電動サーボブレーキ、それに電動のエアコンのコンプレッサーと新技術がてんこ盛り。燃費だけでなく、胸のすく走りを実現したいというホンダ側のココロザシを熱かった。リコール自体はプログラムの書き換えで解決したのだが、あまりにも高いハードル(もちろん対トヨタとのバトルもあって)を設定したのが遠因といえる。
これで、シャフラーとの技術協力がゼロ戻しになるという一部の見方もあるようだが、関係者に取材すると、「この経験を、チャレンジングなクルマづくりの糧にする」。ということは、今後発売予定の新型フリードハイブリッドやステップワゴンハイブリッドにもシェフラーのDCTが組み込まれると見ていいようだ。
小学生や中学生、あるいは高校生時代に見学した自動車工場を思い出してもらいたい。
車両が、縦に並ぶベルトコンベアで組み立てられていたはず。100年ほど前のフォードの古い自動車工場の映像を見ても、同じようにクルマが縦に流れながら大量生産されている。
ところが、先日愛知県岡崎市にある三菱自動車の工場を見学したところ、車両が横になって、まるでカニの横歩きのようにベルトコンベアで動いていたのだ。
ライン全体を上から見ると、アルファベットのUの字になっていて、エンジン+トランスミッションそれにフロントサスを組み付ける側とリアのサスペンションや電池などを組み付ける側に分かれる。電池というのは、アウトランダーのPHEV(プラグイン・ハイブリッド)だということだ。
この工場も実は、少し前まで縦型ベルトコンベアが長年稼動していたのだが、約45億円かけて、横歩き型「畳コンベア」に思い切ってフルチェンジしたのだという。そこで、何が変わったかというと、車両間の距離が5.6メートルから3.2メートルに約半減した。ということは、作業員の歩く距離が劇的に短縮し、作業効率が格段に高くなったということ。そのぶんクルマが安く造れるという理屈。
その工場に潜入して、もうひとつ大きなことを見つけた。
車両組み付け工程で当然あるはずの、ライン横の部品置き場がなくなっていたのだ。
替りにAGT(自動軌道輸送システム)と呼ばれる電動式の無人輸送装置で、ジャストタイムで組み付け部品を現場に運び込んでいるのだ。むろん、倉庫から必要部品を選び出し、AGTの車両に乗せるピッキング作業をおこなうのは人間だが。これでも、アジアでものづくりをするのにくらべ、生産コストはとても太刀打ちできない。
年間23万台生産で、うちPHEV車生産年間5万台体制が、これで整ったという。
次世代型先進ものづくり工場として、マザー工場としての位置づけは小さくないということだ。担当者によると、今後海外へも、この手法を広げていくという。
トヨタは、セダンタイプの燃料電池車(FCV)を2014年度内に700万円程度の価格で国内販売すると発表した。販売チャンネルはトヨタ店とトヨペット店で、当面は水素ステーションの整備が予定されている地域および周辺地域での販売となるという。北米では2015年の夏あたりからという。
パワートレインの出力や外形寸法などのいっさいは未公開だが、見たところプリウスの外寸とほぼ同じの4ドアセダンで、低いプロポーションでフロントグリルが大きくデザインされた近未来的フォルム。航続距離は水素一回の充填で約700キロ走行でき、水素の満充填に要する時間は3分程度という。燃料電池車は、水の電気分解の逆の原理、つまり水素と酸素の化学反応で電気を起こし、その電気でモーターを駆動しクルマを走らせる。走行中に排出するのは水素と酸素の化学反応で発生した水だけなので、CO2や環境負荷物質をいっさい出さない“究極のエコカー”だ。
トヨタはFCVの研究はかれこれ20年以上取り組んできた。2002年にはSUVタイプのFCVを限定販売し、現在100台以上が走行しているという。こうしたデータの蓄積とハイブリッドカーで培ってきた技術などで原価低減ができ、当初は1000万円以上ともいわれたFCVを700万円程度で販売できるまでにいたったわけだ。
技術的には、FCスタックと呼ばれる部品の小型化によりシート下部に収められ、水素タンクも従来の4本から2本に半減しコストダウンを図っている。FCVのオリジナル部品というのはこの2つの部品に補器類だけで、バッテリー、モーター、コントローラーなどはハイブリッドカーの部品を流用するという。トヨタ式コストダウンが大いに活用されてのことのようだ。
ただ、FCVが多数派になるには、水素ステーションの増加や税法上の優遇処置などまだまだハードルはいくつかあるものの、夢のエコカーが、手が届きそうなところまできたことはたしかだ。
平成生まれのクルマ好きはおそらく、“タイミングベルト”と聞いてもわからないかもしれない。オルタネーターベルトなどの補機ベルトと混同するひともいるかも。
タイミングベルトとは、エンジンのクランクシャフトとその倍の速さで回るカムシャフトをつなぎ、同期させているゴム部品だ。カムシャフトは、吸排気バルブの開閉をになう部品である。
イマドキのエンジンはベルトではなく、金属製のチェーンが使われ、それがタイミングチェーンと呼ばれている。1970年代後半ごろまでは、チェーンが主流派。ところが、チェーンでは静粛性に課題ありとして1980年代から90年代後半まではベルトが多数派を占めた。ベルトはエンジン長をながくし、それに10万キロごとの交換でメンテ費用が高く、万が一途中で切れたりするとエンジンの修理代がバカにならず・・・そのうち静粛性の高い金属チェーン(サイレントチェーン)が登場してチェーンは一生モノと落ち着いたものと思われた。ここまでは「チェーンの逆襲」が功を奏したカタチだった。ユーザーもベルト切れの心配から解放された!
ところが、世の中不思議なもので、こんどは「ベルトの逆襲」が起きそうなのである。
ドイツの巨大部品メーカーのシェフラーは、2017年にタイミングベルト駆動のシステムを世に出すというのだ。一昔前の乾式ではなくオイル潤滑の湿式タイプで、耐久性が30万キロに近いという。なぜベルトに回帰するのか? チェーンにくらべフリクション(抵抗)が小さくでき、クルマの燃費がよくなるからだという。まさに燃費戦争は、重箱の隅をつつく戦いだということだ。日本の場合、チェーンメーカーとベルトメーカーは別なので、なんだか禍福(かふく)はあざなえる縄のごとし。幸福と不幸は、縄をより合わせたように入れ替わり変転するものだ。そんなことわざが頭に浮かぶ。
いよいよ、クルマの完全自動運転化の流れが見えてきた。
すでに、高速道路上での自動運転に近い機能を持つクルマも現れ、徐々に、ステアリングから手を離す「ハンドルOFFする!」(写真)ことができる時代がやってくる。ボッシュと並ぶドイツのメガサプライヤーのコンチネンタル・オートモーティブ社では、この技術を確立するためソフトエンジニアと呼ばれる技術者をグローバルで1万人に増やしたという。自動車部品メーカーにとって、かつてないビッグビジネスであることは間違いない。
むろん、自動運転への実現には、法的な縛りをクリアする必要がある。現状では、ハンドルを放すと安全運転義務違反となるからだ。これはたぶん近々コンセンサスがとれるだろう。
そこで、気になるのがハンドルから手を離したドライバーが、たとえば東京から名古屋までの5~6時間をどう過ごすかだ? コンチネンタルは、このほどこれについてのアンケートを欧米と日本、中国などでおこなったという。「音楽を聴く」が45%、「同乗者とおしゃべりをする」が41%、「電話をかける」が34%と上位ベスト3。あと「メールをする」が21%、「新聞や本を読む」が20%、「ネットで検索する」が18~23%(世代で異なる!)。面白いのは「何もしたくない!」が2%だったという。
このなかには、「車内で映画を見る」も「キャンセルして自分で運転する」がなかったが、いずれにしろ、クルマの自動運転化で、人間の行動は大きく変化することは間違いないようだ。
ここまで書いてきて気付いたのだが、自動運転車とはいえ“ぶつけられる可能性を残している”。たとえば反対車線から飛び出したクルマとはぶつかる可能性があるし、併走するクルマが何かのトラブルでぶつかってくる可能性もある。ハンドルでこれを避けられるとしたら、ドライバーの腕次第。あるいはその瞬間宙に浮く機能を持たせるか? 自動運転のクルマ以外は走らせないか? ここまで考えると、交通事故ゼロへの道は難しい!?
このほどマイナーチェンジされたトヨタのコンパクトカーの代表車種ヴィッツの注目ポイントは、やはり燃費である。
エンジンは、3気筒の1000cc、4気筒の1300ccと1500ccの3本立てで、このなかで一番好燃費を叩き出しているのが、“売れ筋車種”の1300。JC08モードで25.0km/ⅼ。リッターカーの24.0km/l、1500ccの21.2km/lを凌駕している。
その秘密は、ズバリ言えば「合わせワザ」である。ハイブリッド車で培ってきたアトキンソン・サイクルを採用。膨張比を高くし排圧を抑制する、高圧縮比13.5で、熱効率を向上。可変バルブタイミング機構を従来の油圧から電動モーターに変更し、緻密に制御、低回転時や油温が低いときにも制御可能となり燃費に貢献。ディーゼルエンジンやスポーツエンジンでしか採用事例がなかったピストン冷却用のオイルジェットの採用や、これも高級車にしか採用できなかった液封エンジンマウントで静粛性を高める一方、樹脂製のヘッドカバーで軽量化を図るなど、涙ぐましい合わせワザ技術を駆使している。
もちろん、アイドリングストップももちろん組み込まれた。結果として、25.0km/lを叩き出し、ガソリン車でありながら100%の減税を獲得している。
エアコンにしろ、冷蔵庫にしろ、最近の家電は「エコ家電」。仕事量は格段に上がってはいるが、使う電気量が劇的に現状している。これと同じで、クルマのエンジンも本気になって燃費向上、高効率を目指している。ヴィッツの1300に、この姿を見ることができる。革新のガソリンエンジン車は、値段が高くなりがちなハイブリッドに好燃費の面で今後ますます迫る勢いと見た。なお、価格は145万円台から。
少し前までは、「高級車オーナーが燃費のことを、あれこれ議論するのはおかしい」というムードだった。だが、時代が確実に動いている。「高級車だからこそ、燃費もよく、走りもよく、乗り心地もよくて当たり前!」そんなかなりオキテ破りのクルマが登場しつつある。
ボルボのXC60(写真)やV60、S60などに搭載されているDRIVE-E(ドライブ・イー)という直噴4気筒2リッター・ガソリンエンジン車が、そのひとつだ。
結論から先に言えば、たとえばS60 T5というクルマでJC08モード燃費が14.6km/ⅼなのだ。車重が2トン近くもありながらこの燃費の良さは脱帽だ。
その秘密は、なんとデンソーとの共同開発にあったという。
2つの燃料ポンプで最終的に最大200バールの高燃圧にし、噴射回数も1~3回とまるでディーゼル並みで、より燃料の燃やし方を理想に近づけ燃焼効率を高めている。それをアシストするために、高圧ポンプをダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)仕様にして、スパークプラグも従来のイリジウムプラグよりさらに耐高電圧仕様にして出力エネルギーを1.6倍、寿命を2倍に。さらにエンジンコンピューターを1秒間に100万個の命令を実行可能なタイプに高め、酸素センサーなどの各センサー部もバージョンアップしたという。ひところで言えば、ここ数年VWやアウディなど欧州車の主流となるダウンサイジングエンジン技術をさらに進化させたものだが、日本の技術がその中核だというのは少し誇らしい。この技術が、軽自動車にまでダウンサイズできれば、リッター40キロも夢ではない!? 化石燃料エンジン車は、さらにこの先の未来があるのかもしれない。
誤解を恐れず言えば、ダイハツはときどき、とんでもないクルマを出してくる「要注意メーカー」だ。たとえば、ミラ・イースは、軽の燃費戦争のなかで、少しでも燃費のいいクルマを目標に創り上げたのだが、乗ってみると、走る喜びなど微塵もないトホホなクルマだった。買ったユーザーにはいい迷惑!?
ライトウエイトスポーツカーの「新型コペン」が6月にデビューし、その概略が伝えられた。
サスペンションが前マクファーソンストラット、後がトーションビーム、エンジンは660のターボエンジンで燃費はCVTで25.2km/ⅼと普通。だが、ボディパネルの13個がすべて樹脂製で、うち11個のパーツが購入後ユーザーの好きなように交換できるという。フード、ラゲージ、前後のバンパー、前後各2分割フェンダー、ロッカーパネル、ヒューエルリッドなどの11アイテム。締め付け手法はボルトオンだ。オーディオクラスターやトリムなど一部の内装パーツも取替えOKだという。ダイハツの言葉を借りると「ドレス・フォーメーション」だという。燃料タンクも交換こそできないが樹脂製で軽量化に貢献。車両重量は850kgとなかなかだ。
注目は、ボディの剛性強化。初代のコペンに比べ曲げ剛性で3倍、ねじれ剛性で1.5倍だという(写真)。初代でもとくに剛性不足を感じた記憶はないが、スポーツカーとしては“らしい走り”を楽しめる要素だ。空力は初代にくらべ約60%低減。電動サンルーフは初代同様20秒で開閉できる。ホンダからも軽のスポーツカーが出るので、セカンドカー選択には悩むひとが出てきそうだ。
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