材料は、すべての産業の基盤であり、人間の生活と切っても切れない関係にある。料理ひとつとっても材料の占める割合は大きい。鉄ひとつみても、熱処理や鼻薬ひとつで、防錆を高めたり、ハイテンションというバリバリに強靭の鉄までいろいろある。クルマの場合、たとえば21世紀の主流となる電気自動車(燃料電池車も)の性能を大きく左右するリチウムイオン電池の材料研究が一番のハイライトだという。高容量化による航続距離の増大と耐久性の向上が今後の大きな課題だからだ。
今回取材した「日産アース」は日産直系の材料研究企業。なんとここで世界初というべき、「リチウムイオン電池の正極の電子のやり取りをはじめて捕らえることができ、これにより長寿命化と電気自動車の航続距離増大が期待できる」という。いわく「マンガン、コバルト、ニッケルなどの電極活物質のどの元素からどの程度電子が放出しているかを定量的に識別できた」という・・・その理屈はとんでもなく難しいので、スルーするが、スーパーコンピューターやX線吸収分光法などの最先端技術を駆使してできたという。
大きな疑問符を頭に付けながら半日がかりで、5つほどのラボを見てまわった。そのなかで一番すごいと思ったのが、MRIと同じ原理の試験機。ドラム缶ほどの大きさのスチールの器。その内部には強力な電磁石を内蔵し、ヘリウムガスが充満。リチウムイオン電池の素材の充放電能力を捉えるというものだという。その実験担当が、いま話題のリケジョ(理科系女史)であった。割烹着ではなく、白衣をまとっていたのである。恐る恐る、彼女にその原理を聞いたが、まったく理解不能で、お手上げだった!
ハイブリッドカーにクリーンディーゼル車、電気自動車などエコカーといわれるクルマがこれほど目白押しに登場する21世紀の初頭。後世のひとからは『自動車の新世紀』と言われる!?
究極のエコカーともいうべき「燃料電池車」が来年には市販される。トヨタは今年1月からその生産ラインが動き出しているし、ホンダも一般向けの燃料電池車の発売を予定しているといわれる。ただし、日産はダイムラーとフォードなどと研究段階に入ったばかり。
水素と酸素の化学反応を利用して電気を作りモーターを回し駆動する、というのが燃料電池車だ。インフラである水素ステーションもすでに神奈川の海老名、名古屋の神の倉、それに豊田市のエコフルタウンの計3拠点で実証実験がスタートを切り、本格的水素ステーションを増やしていく予定? 疑問符を付けたのは課題が山積しているからだ。
市販燃料電池車で一番その姿を明確にしたのは写真のトヨタFCV。昨年の東京モーターショーでお披露目したものだが、市販車はほぼ同じと見られる。全長4800ミリ、全幅1810ミリ、全高1535とスタイリッシュなセダンだ。水をイメージした、流れるようなエクステリアデザインが近未来を感じさせる。航続距離はJC08で700kmというから実用では500km以上はいけそうだ。水素充填時間は3分前後というから電気自動車のようなイライラはなくなる。
燃料電池車が普及するかの鍵は、車両価格と水素ステーションの数、つまりインフラ。価格がたとえば400万円だとしても、インフラがある程度整わないかぎり普及は見込めない。逆にある程度の数の燃料電池車が売れない限り、インフラも期待できない。このジレンマを解消する秘策はあるのか?
小型航空機やヘリコプターの整備をする整備士に会いたい。どんな工具を使い、日々どんなことに気をつけ仕事をしているのか?
ということで、歴史的大雪の翌日、横浜から難儀に難儀を重ね「本田航空」の整備士さんを訪ねた。高崎線の桶川駅からタクシーで30分の荒川沿いの田園地帯だが、その日はいちめん銀世界。秩父地方で孤立した村に救援物資を運ぶ、まさにそのヘリコプターが飛び立つときに居合わせた。
整備エリアは、セスナとビーチクラフトが翼を休める格納庫内にあった。ひとつの格納庫は、小学校の運動場ほどの広さもある。
工具は個人持ち、ドックツールと呼ばれる共用工具、それに特殊工具の3つのカテゴリーだった。個人持ちのツールは、1/4インチのちいさなサイズの工具を中心にハンディな樹脂製工具箱にすべて収まるほど。航空会社の持ち物だ。つまり自動車の整備士のように自分好みのブランドやアイテムを自分の工具箱に入れ、仕事で使うということは原則的にできない。ドックツールは、大きめサイズの工具やヘキサゴンレンチなど。特殊工具はその航空機独自の専用工具。すべて本数と内容が完全に管理され、いつも員数合せといって、所定のところにあるか、過不足はないかを確認されるからだ。うっかり飛行機のなかに置き忘れ事故につながることを防ぐという厳しい安全思想があるからだ。
飛行機はクルマと違い、信号があるわけでなし、車線があるわけではなく、文字通り自由に移動できる(もちろんキマリがあるが)乗り物。ところが、それを整備する整備士の工具箱は、ある意味実に退屈といえなくもない。しかも飛行機自体は、50年ほど前に設計された空冷の水平対向エンジンなど。電子制御などどこにもないし、排気ガス清浄装置もない。これこそが、事実は小説よりも奇なりというのだろうか?
5ナンバーワンボックス初のハイブリッドカーが登場した。
トヨタのヴォクシーとノアの兄弟車。2リッターガソリン車も、アイドリングストップや可変バルブタイミング、CVT,充電制御などの“合わせワザ”でリッター16.0kmと悪くないが、プリウスのハイブリッドシステムを移植した1.8リッターハイブリッドバージョンは、リッター23.8kmと圧倒的低燃費を誇る(いずれもJC08モード燃費)。
使い方にもよるが、実用燃費でリッター15km以上は期待できるので、年間走行キロ数が2万キロを超えるユーザーには、気になるだろう。リッター8kmのクルマとリッター15km走るクルマとでは、年間2万km走るとして、1200リッターの消費ガソリンの差。つまりリッター150年で、18万円の差が出る勘定だ。ガソリン車とハイブリッド仕様では、車両価格が40万円ほどの差があるので、3年弱でその差をカバーできる勘定だ。
ところが、日本のワンボックスというのはエクステリアが、まるで電車のようで、面白くないというひとが多い。デザイナーもようやくこのことに気付きたらしく、ヴォクシーのエクステリアは≪毒気のあるカッコよさ≫を表現したという。どこが毒気なのかとよくよく見るが・・・2段構成のフロントグリルにあるというが、正直よく分からない!? 欧州車のワンボックスのほうが数段かっこいい。イマドキの軽のワンボックスのほうがはるかにいい!? ジャパニーズカーのデザイン力に期待したいものだ。なお、ハイブリッド仕様のヴォクシーは、285万円からだ。
月に数回しか利用しないが、乗るタクシー乗るタクシー、ことごとく走行キロ数が30万キロ前後のクルマばかり。不景気が長く続いているせいか、代替えを先延ばししているからだ。その都度運転手さんに走行キロ数を聞くのだが、やっぱり・・・と肩を落とすことが少なくない。同じお金を払うのだったら、程度のいいクルマに乗りたい。オイル漏れしていない限りダンパー交換しないタクシー会社の良識を疑うばかり。
現在日本のタクシーは大半が「クラウンコンフォート」。これが2018年に生産中止となり、変わって前年の2017年から「LPGハイブリッドカーのタクシー」が走る予定だ。昨年の11月の東京モーターショーでトヨタがお披露目した「JPN TAXI」という名のコンセプトカーだ。正式名称はまだないようだが、全長4350ミリ、全幅1695ミリ、全高1700ミリ、ホイールベース2750ミリ、定員5名というのは既報されている。全幅1700ミリを切るのはキープコンセプトだが、全高1700ミリというのは凄い。
現物を見ると車高が高く、乗降性が劇的によくなった印象だ。
現在のタクシーはLPガス・エンジンだが、新型は電気―モーターとLPガス・エンジンのハイブリッド仕様。後部ドアは電動式のスライド式で、フロアもフラットだという。スーツケースなど大きな荷物も楽に持ち込めそうだ。
2017年発売となると、ちょうど次の東京オリンピックが開かれるときは、このやや背の高いタクシーが都内を走る光景が当たり前になるはず。“おもてなし精神”がどのくらい付加されているか、早く乗ってみたいものだ。
1月8日からスズキの新型軽自動車『ハスラー』が発売された。
ハスラーは、前号でも少し触れたとおり≪軽ワゴンタイプの乗用車とSUVを融合させた≫。ワゴンRのシャシーを使い、オフロード世界のスパルタンなジムニー的走りに近づけたところに新味がある。15インチタイヤで、最低地上高がワゴンRの150ミリとジムニーの200ミリのちょうど中間の175ミリという数字がそのあたりの事情を物語っている。
今年は、ホンダとダイハツから軽の2シータースポーツカーが登場する。ビートとコペンの後継モデルだ。現在日本の自動車市場は41%が軽自動車。「仕方なしに軽自動車にしたから、軽自動車こそ他にはない魅力があるので、軽にする!」というユーザーが増えつつある。考えて見れば、日本には3.8メートル幅の道路が8割近くにもおよぶ。全幅1.5メートルを切る軽自動車は、取り回しやすさを考えると理屈に合う。軽自動車が今後半分を超える日はそう遠くない!? スズキのダイハツが日本の自動車メーカーの首位に並ぶときがくることもありえる?
とにかくスズキの新しいカードは、2シータースポーツではなく軽のSUVハスラーということだ。「日常生活で使えて、休日にはアウトドアスポーツのお供のクルマ」のコンセプトは受け入れられるか? ターゲットは、クルマ離れが激しい若者だ。アイドリングストップのカスタマイズ化、衝突被害軽減装置、滑りやすい坂の途中で機能するヒルディセント・コントロールを軽初に取り付けるなど、小さな魅力も少なくない。ぱっと見はチャイナカーに見えなくもないが、新ジャンヌだけによく見るとスタイルも新鮮だ。燃費もNA車で29.2km/l、ターボ車で26.8km/lと悪くない。メインの車両価格が130万円前後で、比較的リーズナブル。
こういろいろ調べてみると、購入層の多くは若者ではなく、団塊世代のおじさんやおばさん、あるいは40代50代が購入するのではないかと思えてきた。
このところマツダの記事ばかりで、アンチ広島ファンの読者ごめんなさい。
先日、マツダの横浜研究所で、興味深いEVの試作車に試乗できた。わずか5分ほどの試乗だったが、知的好奇心をいたく刺激されたので報告したい。
マツダの電気自動車は、デミオをベースにしたもので、昨年日本市場に投入。リースということだから法人向けで、本気度は正直少ない。ところが、これでいろいろユーザー情報を獲得していた。一番のネックは、やはり航続距離だ。充電基地などのインフラも途上にあるため、いざマイカーとしては不安度が増す。しかも充電時間が長いのも気に食わないということもわかった。
そこで、マツダが出してきたのは「エクステンダー」という切り札。EXTENDは伸ばす、延長する、という英語。工具のエクステンションバーを想像すると分かりいい。トランクに小さなエンジンを備え、電池が切れる前にその小さなエンジンが動き、電気を作るという電気自動車の変化球バージョン。数年前浜松でスズキのスイフトベースのエクステンダーを取材したことがある。スズキの試作EVエクステンダー車はトランクに660ccエンジンを載せているので、完全にトランクルームは消滅。これでは「なんだかな~ッ」という感じだった。
マツダのデミオEVエクステンダーは、なんとシングルローター330ccのロータリーエンジン(RE)を横積みにしている。コンパクトなのでほとんどトランクルームを阻害していない。それでも発電機と9リッターの燃料タンクなど付属部品込みで約100キロ増だという。航続距離は200キロからいっきに倍の400キロに伸びるという。400キロなら、何の心配なく使える。試作第1号車にしてはかなり完成度が高かった。REがこんなカタチで蘇るとは思わなかった。
「ハイブリッドカー電気自動車はすでに市販、今後さらに燃料電池車とくると、もはや化石燃料エンジン車は“昭和のクルマ”のイメージ。従来エンジン車は風前の灯火!」
筆者ならずとも、そんなふうに思い込みがちだが、その思い込みが木っ端微塵になった。マツダの3ナンバー・コンパクトカーのアクセラを試乗したときの感慨だ。アクセラは初代から数えて3代目、累計370万台以上を超えるマツダの儲け頭。マツダの販売車両の3台に1台がアクセラだという。CX-5,アテンザも悪くなかったが、車幅が1840ミリとなると、現実的ではない。その点1795ミリの車幅のアクセラは、身近に感じる。
何が一番感激したかというと、走りである。ハンドリング、走行安定性、運転している喜び・・・といったものが高いレベルで確認できた。スカイアクティブ技術はいまや確固たる評価。2リッターガソリン車、1.5リッターガソリン車、ハイブリッド(これはプリウスとほぼ同じ)の3種が現時点で販売されているが、なかでも1.5リッターのガソリン車は、高速ではたしかに頭打ちになるものの、日本で使うにはジャストフィット。こんなに運転を楽しめるクルマは、近年お目にかかったことがないと言っても、けっしてオーバーではない。人馬一体感でロードスターを肉薄する勢い。エクステリアもどこかアルファロメオのジュリエッタに近く色っぽい。燃費はJC08で19.4km/l。価格は、200万円弱。
このアクセラにディーゼルバージョンが少し遅れ1月に追加されるという。このディーゼル・アクセラは、排気量2.2リッターでCX-5やアテンザのユニットと同じだが、車体が軽い分、とんでもなく動力性能にすぐれているという。トルクが420Nm(ニュートン・メーター)は、V8ガソリンエンジン並み。ボーズの高級スピーカーを付け価格が298万円。プレミアムディーゼル・コンパクトカーという位置づけだそうだ。燃費は、19.6km/l。
クルマの次世代型パワートレインは、ハイブリッドなのか、電気なのか、はたまた燃料電池車なのか? あるいはどっこい燃費を劇的に高めた化石燃料エンジン車がしぶとく生き残るのか? 今回の東京モーターショーを取材するポイントのひとつは、まさにこのことだ。
個人的にはあと10年、ハンドルを握って自分でドライブできるとして、FSXというか次期マイカーを何にするのかは、とても大きな興味だ。そんな視点でさほど広くもない会場(ソウルや上海の半分!?)を見て回った中で一番気になったのがVWのブース。
次世代型のパワートレインが展示してあった。なんと2気筒のターボディーゼルエンジンのハイブリッド仕様だ。排気量800cc、48PS,119Nmの出力とトルクに、27PS,139Nmの電気モーターが付く。トランスミッションはお得意の7速DSG(ツインクラッチ)だ。
ディーゼルエンジンのハイブリッド仕様。燃費と排ガスを考えれば一番の組み合わせだ。燃費はなんと1.1リッター/100km、つまりリッターあたり90.9kmという。こいつはスーパーカブ並みだ。気になる加速データは0→100km/hが15.7秒というから悪くない。EVモードで50kmも走れるというのも凄い。
欧州車勢はディーゼルがメインでハイブリッドには見向きもしなかったが、このところ様相に変化。プリウスの成功を見せられたことで、ハイブリッドの有効性に気付き急速にハイブリッド車の攻勢をかけるようだ。ちなみに、このパワーユニットはおそらくUp!(アップ)に載せるのだろうか。
多人数乗用車のパイオニア的ともいえるホンダのオデッセイが、このほどフルモデルチャンジされた。1994年にデビューした初代からかぞえて、20年目、5代目だという。
今度のオデッセイは、「3列すべてが広く快適で、上質な室内空間と走行性能をこれまでにない次元で両立した上級ミニバン」を目指したという。プラットフォームとパワートレインを一新し、居住性、走り、燃費性能、デザイン、使い勝手、安全性などすべてにわたり進化させたともいう。
とくに、ホンダ得意の低床レイアウトが効果をあらわし、大開口のスライドドアと地上高が約30センチの2列目ステップ高によるすぐれた乗降性やフレキシブルなシートアレンジは多少魅力ではあるが。今回からヒンジ式のセカンドドアをやめコストの高いスライド式に改めているのも注目ではあるが・・・。
現在日本のクルマ市場は、約半分は軽自動車、残りの半分がコンパクトカー、そんな時代。
そんな時代に平均で350万円の7~8名乗車の上級ミニバンが成功するのだろうか? これがもし、ハイブリッドシステムを積んで、燃費がノーマルの2倍近い、リッター25キロに迫れば話は違うのかもしれないが、排気量2.4リッターの直噴エンジンとCVTの組み合わせで、リッター14km/lでは、あまり魅力を感じない。むろん記者会見で、ホンダの社長は「ハイブリッド仕様も現在鋭意研究中です」というから、遠からず登場するのかもしれないが。
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