日頃チョイ乗りで便利している排気量125ccクラスのスクーター。燃費も良く、維持費も安いこともあり、ホンダだけでも年間数100万台を世界で販売しているという。この単気筒4サイクル125ccの新エンジンがこのほど発表された。来年2012年から順次世界で販売するスクーターに搭載されるという。つまりグローバルエンジンだということだ。
この新型エンジンの注目点は、従来エンジンにくらべ、約25%も燃費が向上したことだ。
その背景には、2輪用のアイドリングストップ機構(電子制御式のACGスターター)が組み込まれていることだけではない。エンジン内部の低フリクション技術を多岐にわたり採用している。ピストンとシリンダーの摺動によるフリクションを低減させるオフセットシリンダー。コンピューターによる支援解析技術CAEによりとことん軽量化されたピストン、オイル消費を低減させるスパイニースリーブ。ロッカーアームシャフトに、シェルプロフィールタイプを使いバルブスプリング荷重を最適化。冷却効率の高いラジエーターの採用。トランスミッション各部の改良で、現行よりもオイル量を25%減らし、オイル攪拌ロスを低減。内部のベアリングを見直すことで転がり抵抗を現行エンジンより約20%(時速50キロ時)も低減。加えて、コンパクトな燃焼室と新設計の吸気ポートなどで燃焼効率を向上させている。
静粛性にもチカラを注いだという。ワイドレシオのVベルト式無段変速機構[Vマチック]には新開発の高弾性ゴムのドライベルトを採用し、耐久性と高効率な駆動力を実現することで、低燃費と静粛性を両立させている。
世界では、この排気量クラスのスクーターは、10インチから16インチまでさまざまなホイールサイズが選択できるが、もちろん、このエンジンは、ベルトハウジングの長さを調整することで、すべてのホイールサイズに対応できるという。日本でもこのエンジン搭載スクーターが来年デビューする予定。価格が気になるが、楽しみだ。
洗濯機や冷蔵庫といった白物家電もそうだが、自動車も、21世紀に入り電子制御技術がいたるところに入り込んできた。当初はエンジンだけだったのが、いまではトランスミッション、サスペンション、ブレーキなどにも。1台のクルマのECU(コンピューター)が100個付いているクルマもあるほど。
空気入り自動車用タイヤの発明は、スコットランド生まれのJBダンロップが19世紀中ごろに発明したもの。これがなければ今日のクルマの発達は考えられなかった。クルマの部品のなかで一番原始的(プリミティブ)と思われるタイヤにもハイテクな電子技術が導入されつつある。「タイヤ空気圧モニタリングシステム」である。タイヤ内の空気圧が下がると、事故につながるだけでなく、燃費悪化・乗り心地低下・タイヤの寿命低下につながる。ところが、リアルワールドで調べると「空気圧低下」の状態で走行しているクルマが少なくない。そこで、月に1回は、エアチェックが欠かせないのだが、人間の馴れもあり、標語通りいかないのが現状。
「タイヤ空気圧モニタリングシステム」は間接タイプと直接タイプがある。間接タイプは、ホイールスピードセンサーを使い空気圧ダウンにより起きるタイヤの直径の変化を察知することで、ドライバーに知らせるタイプ。直接タイプは、4つのタイヤの内部に、マイコンを組み込み、内圧の変化があれば、トランスミッターで運転席に取り付けられたモニターに知らせる。ざっくりいえば、前者はコストが安いが精度が低く、後者はコストが高いが精度が高いというものだ。コンチネンタルでは、このほど、さらにバージョンアップした直接タイプを開発した。従来はバルブに取り付けていたのが、タイヤとレットの裏側に付くタイプ。コストが安く軽量だという。それが、エレクトロニック・タイヤ・インフォメーション・システム(eTIS:写真)。
こうした「タイヤ空気圧モニタリングシステム」ががぜん注目される背景には、法制化の動きがあるからだ。アメリカではすでに2005年から、欧州では来年2012年から。日本もこれを受けて近々法制化される見通し。ところが、このシステム、一度空気圧が下がるともう一度初期化しないと正確に機能しないため、タイヤショップに駆け込む必要があるなど、使い勝手のうえで課題を抱えているようだ。便利なものの誕生で別の不便が生まれる・・・そんな状況のようだ。
釈迦に説法だが、クルマは、パーソナルな移動の手段であり、人やモノを運ぶモビリティ。モノを運ぶ手段は、クルマ(トラック)のほかに船、貨車、飛行機などがあるが、ここ数年都会でときどき目に付き始めた手段として台車や自転車というのがある。
たまたまこのモノをシステマチックに運んでいる自転車について取材したので、リポートしたい。
少し前までは、宅配便といえば小型トラックしかなかったが、市街地や住宅密集地域に限っていえばリヤカー付きの自転車が大活躍しているのである。たとえばヤマト運輸の場合、全国4000点ほどの拠点のうち約25%の1000店舗で、このリヤカー付き自転車ががんばっている。都内下町で取材したところ、半径500メートルほどの領域で、パートの女性がペダルをこいで、お客様のもとに荷物を届けている。朝からお昼過ぎまでに約60個の荷物を2回に分けて届けるのが仕事。荷物に貼ってあるバーコードに専用の機械をピッピッと当てて、お客様のもとにスピーディに運んでいるところは、トラックと変わりない。カーナビを使わないので、初心者の頃は地図とにらめっこだったという。自転車は、電動アシストタイプで、ハイブリッド自転車とも呼ばれるもの。このお店ではリヤカー付き電動自転車担当者8名のうち7名が女性だという。電動付きだから女性が進出できた仕事ともいえる。
一番の苦労が雨の日で、台風や夏場にゲリラ豪雨のときなどはトラックにバトンタッチするそうだ。ちなみに、銀座あたりでは一方通行が多いので、自転車ではなく台車がもっぱら大活躍だという。モビリティの歴史からいえば、≪逆行≫しているかに見えるが、トラックよりも効率が高く、CO2や大気汚染の削減にも結びつくとして、今後さらに増えると思われる。時代とともに物流の姿も変貌するということはたしかだ。
ふだんクルマの管理で、つい見落とされがちになるのは、ホイールアライメントではないだろうか? クルマには、安定して走行するための直進性、コーナーを曲がるときの旋回性、そこから直進状態に戻るための復元力、それにタイヤは衝撃を受けたときのサスペンションに伝わる衝撃を緩和するなどの性能が求められている。そのためにタイヤには、それぞれの目的に応じた角度が付けられている。トーイン、キャンバー、キャスターなどだ。これらを総称してホイールアライメントと呼んでいる。日本語でいうと“整列”。
ホイールアライメントの基準値は、ノーマルのタイヤ&ホイール、車高で、そのクルマにあった状態で自動車メーカーが決めている。車高、タイヤサイズなどが変われば、ホイールアライメントが基準値から外れ、不具合につながる。どんな不具合かというと、大きな事故につながるというわけではないが、タイヤの偏摩耗、ステアリングがどちらかにとられるなどの不安定さなどのトラブルとなる。タイヤは偏摩耗すればエコではないし、いつもハンドルを修正している運転は燃費にもよくない。逆にいえば、ホイールアライメントを常に基準値に収めていれば、気持ちいい運転ができ、しかもエコだといえる。
ところが、日本のクルマ文化にはホイールアライメント測定という項目が欠如していたので、プロの整備士のなかにもその必要性を認めない人もいるほど。一般ユーザーも、初めて聞いた人がほとんど。アライメントのデータをゲットしても、肝心のクルマの大半は、調整できないので、ユーザーの頭の中はモヤモヤができるだけということも、こうした傾向を加速していた。でも、アメリカから比較的安価でアライメント調整ができるパーツが上陸。フロントストラットには特殊ボルト(写真)を使い、リアのトーションビームアクスルには樹脂製のシムを使うというものだ。DIYではできないのが癪だが、2年に一度は、アライメントを調べ、調整するのが理想だ。http://www.ads-wired.com/
新型デミオは、ハイブリッドカーでないにもかかわらずリッター30kmを実現。燃費の概念を覆すことで世間を大いに騒がしているが、もうひとつ見逃せない≪魅力品質≫を備えていることを箱根の試乗で発見した。
ⅰ-DM(インテリジェント・ドライブ・マスター)というメーター内に組み込まれた装備である。当初、よくある≪エコラン≫を推し進めるギミック(奇をてらった装備)かな、と思っていたら、意外と新しい試みを含む装備だということに気付いた。前後のG(加速度のこと)と左右のGを感知して、車両が理にかなった動きをしているかどうかを総合的に判断し、そのドライバーの運転が上手か下手かを判定してくれる装置なのだ。やさしい運転の時はグリーンランプが点き、しなやかな運転のときはブルーのランプが点く。アクセルとブレーキの操作がだめな時は、前後Gの変化が大きいので、右側の白ランプ。ハンドル操作が下手なときは横G変化が大きいので、左側の白ランプが点灯・・・という具合。運転のティーチングとコーチングをすることで、燃費の良い、理屈にあった走りを促すというのが狙い。冷静にいえば画期的な装置。
この装置は、開発陣がテストドライバーと一般のドライバーをモニターした結果、あまりの違いを発見し、それを埋めるものとして誕生したものだという。一般ドライバーは、アクセルを離すのが早すぎて、後で余計にアクセルを踏まなくてはいけないとか・・・あるいはステアリングを切りすぎたり戻しすぎたりと、多くの無駄が見られる。この無駄を小さくすれば、走りがスムーズとなり、楽しい走りにつながるだけでなく、燃費も向上する。
おっしゃることはもっともだが、いくつかの異議を差し挟みたい。もともと自由な乗り物である自動車に、まるで電車のような動きを押し付けていいのか?
開発者に聞けば、やはり私と同じ意見が欧州で出たという。ヨーロッパの人からは≪何もクルマから教えてもらわなくてもいい!≫といわれたという。受け入れてくれないという。「クルマとのコミュニケーションを深める装置として開発したのに・・・」と担当のエンジニアは、いささか頭を抱えている。単なるひとつの装置だが、自動車をどう見るかの価値観まで踏み込ませる問題を浮き彫りにしたようだ。
「もし5000円余計にあげるといわれたら・・・どんなことをしますか?」
これは、ニューモデルを開発したエンジニアに対して、筆者がほとんど決まっておこなう質問である。走行性、燃費などの性能とコストなど100以上の要件を満たすなかで開発される現代の自動車。なかでもコストは、開発者にとって大きな壁でもあり、越えるべきハードルのひとつである。同じコストなら、ライバルのクルマより性能が少しでも上回りたい、というのが開発陣の正直な気持ちでもある。
だから、冒頭の質問をぶつけることで、エンジニアの本音を引き出せるのでは? と思う。だが、いつも上手くいくとは限らない。いくら待っても、あるいはこちらから助け舟を出しても答えが返ってこないケースもある。≪いくらもらえる≫という逆からの“発想”ができないエンジニアだ。これをまじめなエンジニア魂ととるか、逆に駄目のエンジニアの烙印を押すか、とても難しい。この質問の旨みはもうひとつある。文字通り予算ぎりぎりだったので、そのクルマの弱点(あるいは特徴)をさらけ出すことができるケースもある。
先日デビューしたフィットシャトルハイブリッドのエンジン屋さんにも同じ質問をしてみた。
すると「そうですね、5000円ですか? VVT(バリアブル・バルブ・タイミング機構)を付けて、さらにクールドEGRを付けたいですね。でも2つ付けると5000円では間に合わないですね」・・・この2つの機構、燃費と動力性、それに排気ガス対策に有効な手段。このエンジン、排気量1339ccなのだが、シングルカムの2バルブである。いわば“昭和のエンジン”と見られてもおかしくない。ツインプラグではあるが、見かけはローテク・エンジンなのである。ハイブリッド化するには、ざっくり言って2割り増しのコストがかかる。価格競争力を高めるため、インテリアではダウンサイジングしてきたユーザーがガッカリしない豪華さを維持しつつ、見えないところで主動力エンジンでは、できるだけ“既存のメカニズムをフル活用“している。このことを≪5000円あったらどうしますか?≫といういやらしい質問が浮き彫りにしてしまった!?
大人になると、ふと子供時代に遭遇した少し変わったオジサンのことを思い浮かべてみるときがあるものだ。筆者の場合、大工の幸七オジサンがそれで、お汁粉をなめながら酒をチビリチビリしていた光景が目に浮かぶ。特段の野心を持つことなく、器用な人物。退屈そうな私を見かけ、廃材を使い、あっという間に船を作ってくれたものだ。小市民だが、幸せの何たるかを承知していたような人物だった。
このおじさんと、どこか共通点のある人を一度見かけたことがある。1970年代後半、駆け出しの自動車雑誌記者だったころ。鈴鹿サーキットで見かけた本田宗一郎(1906~1991年)だ。確かホンダのアイディアコンテストの取材のときだった。二人三脚でホンダを世界のホンダに育て上げた藤澤武夫(1910~1988年)と一緒だった。社員であるホンダの若い人たちが各自のアイディアを元にモノを作り上げるコンテスト。量産品にはない、人間味あふれる“もの”を目を細めながら見て歩いていた。そのときはなんだか、「お偉い人なんだな~」と単純に思ったものだ。
いまやホンダは、かつてのような風通しのいい企業ではなくなったかもしれないが、ホンダの製品のどこかに本田宗一郎が宿っていると思いたい。とくにホンダファンではないが、本田宗一郎という一人の男には、大いに刺激されるものがある。昨年、彼のふるさとに『本田宗一郎ものづくり伝承館』なるものができたという。浜松から電車とバスを乗り継ぎ、小一時間の天竜川近くである。かつて町役場だった建物を活用した、吹けば飛ぶようなミニ博物館。90分もあればすべてに目を通せる。エッセイ集「私の手が語る」にもある、宗一郎の左手のキズの詳細イラストが、出迎えてくれる。旋盤を使っていたときバイトが突き抜けた痕、機械にはさまれた傷、ハンマーでつぶれかけた指先・・・45年間で約15個、小さい傷を入れると50個近い。こうしたキズはみんな私の“宝”だと宗一郎は告白している。「私がやってきたことのすべてを私の手が知っている。私の語ることは私の手が語ることなのだ」と。
プリウスやインサイトといったハイブリッドカーならわかるけど、“普通のエンジン”を載せたコンパクトカーがリッター30km(10・15モードで)を叩き出すなんてことは、Kカーでもせいぜい27km/lであることを思えば、5年前までは誰も考えなかった。このほどマイナーチェンジされたマツダのデミオのことだ。
エンジンの圧縮比を14にしたり、各部のフリクションを低減したり、アイドリングストップ機構を見直したり、発電制御を見直し無駄な電気エネルギーを削減したり・・・もちろん、ボディの軽量化を進めたり、トランスミッションのCVTをより効率よくシフトしたり・・・。とにかく燃費チャンピオンに仕立てるためにエンジニアたちが一丸となり、たぶん3年間ほどの捲土重来(けんどちょうらい)の気分で作り上げたのが、今回のデミオといえそうだ。ハイブリッド技術でトヨタやホンダなどに水を開けられていた、マツダのがんばりの結晶といえる。
なかで注目なのは、エンジンのインジェクターがディーゼル並みに6つの噴射口を備えたマルチホールタイプにした点。霧状のガソリンを燃焼室に直接噴射(直噴エンジンだから!)し、気化潜熱でシリンダー内を冷やしエンジンがもっとも嫌うノッキングを効果的に押さえ込んでいる。そのために、中央にキャビティと呼ばれる凹みを持つユニークなピストンを備えている。
マツダ独自のアイドリングストップⅰ-stopも、今回大きくテコ入れされている。再始動時の振動を小さくするため吸気バルブをやや遅く閉じさせている。バッテリーを2個から1個にし、さらにこれまでDレンジのみだったⅰ-stopの作動領域をNレンジ、Lレンジなどに拡大している。ボディの世界では、スポーツカー並みに、樹脂製のアンダーカバーを取り付けCd値(空気抵抗係数)をクラストップの0.29(ちなみにプリウスやインサイトは0.25、GT-Rは0.27)。こうしたいわば涙ぐましい努力で、リッター30kmを達成している。むろん、燃費がよくても走りが不十分ならクルマとしての存在理由がなくなるので、マツダらしい爽快な走りができる責任者は胸を張っていた・・・。ちなみに、従来エンジン搭載車のデミオは、23.0km/lだったのだが、新型デミオは、エンジンで24%、トランスミッションで2%、ボディで4%、計30%の燃費向上を実現して、30km/lとした。
ふだんクルマを運転していても、サスペンションに文句を言う筆者ではないが、たまにサーキットを走ったり、あるいは高級車の試乗に恵まれると、「同じクルマなのに、なぜにこんなに乗り心地、操縦安定性が違うものなのか?」初心者のような疑問が頭に浮かび、つぶやかざるを得ないときがある。
足回りの性能は、足回りの形式、ジオメトリー、バネ常数、ダンパーの容量、ホイールベース、トレッド、速度域など、いくつものファクターで左右される。もちろん、そこにドライバーの好みや同じドライバーでも、そのときに気分で評価が大きく変わることもある。実に厄介なものだ。「厄介なだけに、深みがあり、面白い」とする、私から見ると少しおかしいジャーナリストもいるほど。
足回り性能を大きく影響する部品といえばショックアブソーバー(ダンパー)を思い出すが、もうひとつにスプリングがある。乗用車の場合はコイルスプリングである。通常コイルスプリングは同じ線径(太さのこと)だが、「これでは巻き数ごとに応力が微妙に変化するのです」(日発のエンジニア)という。つまり下から力が加わると、応力振幅と呼ばれる荷重が巻き数ごとに凸凹するのである。「そこで、理想は、一部テーパー状にすることでより理想に近づけられる」という。たとえば、通常直径15.8ミリだったのを12ミリのところと16.4ミリのところを作る。もちろんコンピューター解析でどこを細くし、どこを太くするかを決めるのだ。こうすると、理想に近づき、サス特性が劇的に向上するという。15%ほど軽量化にもなる。
実は、このことはサスペンションに関わる技術者の中では、昔からの≪常識≫だという。モノづくりの課題もすでに解決済みだという。今年中にこのFSDスプリングを採用したクルマが登場するかもしれない。FSDとはフリー・ストレスド・デザインの略で、“全周均一な荷重を与えるデザイン”という意味だ。いやはや、30年以上クルマのことを学んでいても知らないことが、まだまだある!
台湾には、ここ数年シェアを伸ばしつつある韓国車も見ることはできるが、トヨタ車や三菱車などいわゆるジャパニーズカーが圧倒的ともいえる多数派である。とくに黄色のボディのタクシーはトヨタのウッシュが大半を占めている。つまり活躍するクルマが左ハンドルでクルマが右側通行という違いこそあれ、台湾のクルマ事情は、日本のそれとさほど異ならない・・・かに見える。
ところが、調べてみるとタマゲルほどの大きな違いを発見した。
“車検制度”である。日本の車検は、世界でも最も厳しいとされ、安全を担保する国民性として、それはそれで誇るべきこと。だが、ユーザーとしては、頭の痛い≪関所≫である。そのつど保険に入りなおし、税金は取られるし、安くない≪車検整備代≫なるものを支払わなくはいけない。だから、「この際、軽自動車に乗り換えようか?」あるいは「新車に乗り換えるか?」という気分にもなる。
ところが、台湾のユーザーに聞いても、車検を少しもハードルと感じていないようだ。だいたい、フロントガラスに車検期限を示すステッカーすらないのである。
台中にある「清水金龍験車廠」という名称の車検センターを取材した。ここは文字通り「車検」だけの整備工場だ。リフトやタイヤチェンジャーなどが置いてある整備ヤードの周りに円弧状の“車検ライン”を設け、そこで検査をするのである。下回り検査こそないが、サイドスリップ、ブレーキ試験、速度計の検査など、だいたい日本の車検と同じメニューだ。受付して検査終了まで約15分前後。もし不具合や、ユーザーから「この際だからエンジンオイルも交換してほしい」「ATFの交換をしてほしい」といわれればサービスをおこなうが、2時間の取材時間でわずかハイマウントランプのバルブ切れが1件あっただけ。
そこで気になる≪車検費用≫を聞いたところ、なんと450元。1元は約2.8円なので、日本円で約1260円だ。大型車でも650元(約1820円)。しかも新車時から5年前は車検免除で、5年~10年は1年ごと、11年以上たつと逆に1年に2回の車検となる。それでも、ベラボーに安いので、なんら苦にならない。自賠責保険は、車種により異なり、約1~2万元(2万8000~5万6000円)。ちなみに、警察車両やタクシーは毎年1回の車検が義務づけられているという。車検制度が緩やかな台湾でとくに交通事故が多いとは聞かない。ならば、日本もユーザー本意の視点で、もう一度「車検制度」を見直してもいいのではないか?
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