台湾に世界選手権で優勝したメカニックがいるというので、出かけてみた。
2008年のマツダのサービスマン・コンテストで優勝したというリュウさん、35歳である。
リュウさんは、整備関係の専門学校を終え16歳からメカニックを経験している。トータル19年間のうち、ここ8年間はマツダのディーラーで腕を振るっているという。これまで100名近くの自動車整備士さんにインタビューした経験で言わせてもらえば、整備士の多くは電気が弱いというケースが多い。ところが、リュウさんは、「電気が大得意です」と、かなり異端!? 小学生のころからプラモデルで遊ぶのが大好きで、学生時代はモノを壊したり組み付けたりすることに大いに関心を抱いたという。
そんなリュウさんの大きな悩みは、英語力を磨くことだという。「中国語で書かれた整備書には時々ニュアンスの違いで、勘違いさせられることがあるからです」という。「原書の英文に当たるとその辺がすっきり解消するのです」。たぶん、これはどこの世界にも当てはまることかもしれない!? リュウさんとは通訳を介して1時間ほどの話をしたが、なかで一番面白かったのは≪リュウさんの愛車管理術≫。父親から譲り受けた1995年式のいささかくたびれたシビック。何と走行キロ数は25万キロを超えているという。「でも、まったくノートラブルです。足回りのブッシュに亀裂こそあるものの、エンジンのオイル消費は問題ないです。きちんと5000キロごとにオイルとフィルターの交換をしているからです。この調子でいけば、あと10万キロは大丈夫ですよ」と胸を張った。よほどクルマに優しい走り方もしているはずだ。
日本の街中にもぼちぼちEV時代の到来の姿が見え始めている。タクシーのなかにもリーフがいたり、横に停まったクルマが三菱のアイ・ミーブだったり、あるいは三菱や日産のディーラーの看板に大きく電気コンセントのアイコンを掲げているところもある。
でも、正直いえばこの2台には、21世紀の乗り物EVのワクワク感がまるでない。なぜだろう? リーフでさえ100kmあたりで電池残量が気になる。つまりあまりの航続距離の短さもあるが、エクステリアデザインがまるで、フツーだからだと思う。アイ・ミーブは、軽自動車と共通なので、致し方ないが、リーフはせっかくのEV専用車にもかかわらず、なんだか縮こまったカタチをした電気自動車だ。≪流行はカタチから入る!≫であれば、もっと斬新性が求められる。
その点、4月初頭に開かれたソウル・モーターショーのアウディe-tron(イートロン)は、強い感動を与えてくれた。このクルマ、一昨年のフランクフルト国際モーターショーでベールを脱いだコンセプトカーなのだが、2シーターのおしゃれなスポーツEV。4つの電気モーターを備え4輪を駆動するだけでなく、各車輪を制御することで、目の覚めるような走行性能と、比類なく俊敏性を実現したという(あくまでも広報資料だが・・)。最高出力は313PS、最大トルク450Nm。最高速度が200km/h(リミッター付き)で0→100km/hを4.8秒で駆け抜けるという。肝心の航続距離は248kmだ。これなら、東京から箱根往復ができそうだ。面白いのは、暖房がヒートポンプといってビル暖房などで使われる効率のよいシステムを組み込んでいる点。ドア、サイドウォール、ルーフなどの外装部品は強化プラスチック製だという。全長が4260ミリ、全幅1900ミリ、全高1230ミリ、ホイールベース2600ミリで、車両重量は1600kg。
とにかく、このクルマ、ワクワク感が120%だ。欧州車にはときどき度肝を抜かれる思いをすることがあるが、e-tronもその1台だ。
今年は、自動車の誕生からちょうど125年にあたるそうだ。これを記念して、愛知県にあるトヨタ博物館では「自動車125年の歴史」展が開かれている(4月3日まで)。自動車の歴史は、1886年に試作車ができたベンツ・パテント・モトールヴァーゲンという3輪のガソリン自動車から始まったとされるのだが、いつ日本で自動車が走ったかは、不透明だったため、あまり正確には知られていない。
実は、面白いことに、ベンツの発明からわずか12年後の1898年(明治31年)に、日本に始めて自動車がやってきたのだ。フランス人のセールス・エンジニアであるジャン・マリー・テブネが機械関係の事業の可能性を探りに来日したとき、1台のガソリン自動車を携えていたというのだ。自動車のような大きなものを携えてくるとは奇妙だが、なぜかクルマと一緒にやってきた。テブネは、その年の2月に築地から上野までを試運転し、当時の日本人を驚かせたという。そのときの写真がこれで、和服姿の日本人(現代人から見ると3世代前)が見える。中央でひげを蓄えた人物がテブネ。そのクルマとは、ベンツではなくフランスのパナール・ルヴァッソールで、エンジンこそベンツ製だが、FR方式で、フロントにラジエーターを持つ史上初の自動車レースで大活躍した流れを持つ車両でもあった。
気になるのは、その後、このクルマがどうなったかだ。テブネは、日本での事業がまだ次期早々だと判断し、帰国する決意をし、ルバソールを競売にかけた。ところが、落札希望額の6000円に達しなかったので、あえなくクルマとともに帰国してしまったのだ。家賃が75銭の時代だから、6000円は、いまの貨幣価値に直すと約6億円!? スペースシャトル並み? 吹っかけすぎ!? 売れなかったはずだ。
電気自動車リーフのカタログを見て驚いた。
樹脂製のパーツのほとんどが、再生の樹脂素材だというのだ。同じリサイクル材でも、使用済み車両の樹脂部品から再生したもの、旧いクルマのバンパーから再生したもの、洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどの家電製品からのもの、実にさまざまなところを由来としたリサイクル素材を活用している。
担当者に聞くと「世界広しといえども、カーTOカーというか、自動車の部材を新車の部品に活用しようという試みをこれほど積極的に展開しているメーカーはないと思います」と胸を張る。
なかでも、バンパーTOバンパーは、表面の塗膜をいかに除去するかで、長年苦心したうえでのリサイクルだという。旧いバンパーを細かく砕き、塗膜を精米で長年培われた技術を応用して、ほぼ99%取り除くことができたという。しかも、そのコストは、バージン材よりも2~3割も安くできたとも言われる。いまのところ、リサイクル材の生産がごく限られているので、せいぜい20%入れるだけだが、開発者に言わせると100%のリサイクル材でも自動車のバンパーの品質は充分保証できるという。今後この割合が増加すれば、バンパー価格が安くなるかもしれない。
とはいえ、リサイクル材を新車の部品に採用するには、複数の課題があったという。年月がたった樹脂だけに退色したり、耐衝撃性などの物性に問題があった。これをバージン材レベルまでに持ち上げるために、鼻薬などを混ぜているのだが、その試行錯誤に苦心したという。
「イマドキのクルマは外付けコンピューター診断機がないと不具合を追求できない」・・・といったことはすでにご存知の読者も多いと思う。スキャンツールという道具である。SCAN TOOLとは「走査(そうさ)する道具」あるいは「細かく調べる道具」である。クルマには10個以上のコンピューターが付いており、スキャンツールはこれらのコンピューターの異常をリサーチする道具なのである。異常は「故障コード」というカタチで教えてくれる。たとえば、エンジンのどのあたりの異常・・・という大まかな回答なので、それをメカニックは培ったスキルを発揮してテスターなどで追求していく。故障コードは、インパネに表示するケースもあるので、これを消去するときも、このスキャンツールが活躍する。
ところが少し前までは、クルマの銘柄により同じスキャンツールが使えなかった事態であったが、ここ数年統一が図られ、スキャンツールがいっきに整備業界で大きな比重を占め始めた。しかもより使いやすく、ハンディなタイプも出てきた。50万円以上の多機能を供えたものから、10万円を切る小型バージョンまで登場している。なかには表示部を持たず、通信機能を持たせ、手元の携帯電話のモニターやパソコンの画面に情報を表示するタイプもある。一般ユーザーがこれを使うことはまずないが、とにかくイマドキの整備士はこれなしでは仕事できないということぐらい知っておいてもらいたい。なお、昭和メタルでは自動車解体業としては珍しく、今後商品によってはスキャンツールを使い動作確認をするなど、より高い信頼性を得ていく考えだという。
ふだん走行12万キロオーバーのコンパクトカーを転がしている筆者には、縁もゆかりもないクルマの世界をたまには紹介しよう。
SUVの仲間にはプレミアムバージョンがあるそうだ。プレミアムSUVというのは単に値段が高いというだけでなく、スポーツカーに匹敵するオンロード走行、本格的オフロード性能、高級サルーン並みに上質な乗り心地を兼ね備えるいわば21世紀のスーパーカー!? 日本だけでこれまでトゥアレグは1万台以上売れているという。価格が600万以上の雲の上のクルマがこんなに売れているなんて知りませんでした。
このほど、そのトゥアレグにハイブリッドモデルが登場した。VW初のハイブリッド車だ。プリウスなどよりも比較的構成がシンプルなパラレルハイブリッドで、エンジンに3リッターV6 TSIエンジン(直噴エンジンで、スーパーチャージャー過給付き)。これに電気モーターとトランスミッション(アイシンAW製の8速タイプ)が直列にレイアウト。エンジンと電気モーターのあいだにはクラッチが配され、低速時や低負荷走行中にはエンジンが停止し、EV走行が最大で2kmできるという。通常の走行時には、エンジンが主役で、モーターはもっぱらボディ電装(エアコンやカーオーディオ)に電気を供給し、バッテリーへの充電にもあてられる。VWに言わせると、V8エンジン並みの動力性能で、燃費は4気筒並みだという。たしかに10・15モード燃費が13.8km/lは、初期型トゥアレグ(V8エンジン車)の6.6km/ⅼからみると2倍の好燃費。トランクに詰まれるバッテリーは、ニッケル水素タイプで、システム重量(冷却系やケースを含む)は79kgもある。車両重量は2340kg。価格は898万円もするので1000万円手元にないと安心して買えないクルマ。
ちなみに、併売されるハイブリッドではないノーマル車は、同じV6エンジンを搭載し、燃費は9.5km/lで価格はハイブリッドより275万円安い623万円。
「6~7台に1台のわりで電気自動車リーフが作られていますよ」
製造担当者は、自信ありげに説明してくれた。東京湾に面した神奈川県横須賀市にある追浜工場。都心から約40分のところに電気自動車の製造ラインがあった。バッテリーは座間工場、モーターは横浜工場、インバーターは埼玉の児玉工場でそれぞれつくられ、それらが一堂に集められ、ここ追浜でアッセンブリーされているのだ。
この工場、1961年に操業開始というからちょうど半世紀の歴史。どちらかというと旧い工場で21世紀にふさわしいEVが誕生しているのは不思議な感じもしないではない。それにも増して、面白いのが、通常のガソリン車と混流で組み立てられていることだ。ジューク、ノート、キューブといったおなじみのコンパクトカーに混じりリーフが組み付けられている。写真にあるように通常のクルマではガソリンタンクが組まれるラインではバッテリーパックがリーフに組み付けられていたし、エンジン+トランスミッション(パワートレイン)が組み付けられるシーンではモーター+インバーターがリーフに組み込まれていた。見ていてまったく違和感なく、延べ16時間で、1台のリーフが誕生していた。この見ていて違和感がないということはその背後にすごい努力の跡があるはず!
担当重役に言わせると「ごくスムーズにモノづくり開発は進みました」と涼しい顔をしていたが、近くに工場担当者に組み付け時の苦心談を聞いたところ、「いや大変でしたよ。組み付けに必要なジグが異なるので、間違えないように、色別でジグを分けています。それと工員全員に電気の知識をみっちり学習させています」と苦労の一端を告白。ちなみに、2015年までには日産は、グローバルで年間25万台のEV製造を完成させると息巻いている。ガソリンがリッター500円ぐらいになればEVの天下がやってくると思われる!? それは20年後なのかしら?
ダブルフォールディングタイプのリアシートを床に格納すると、26インチと20インチの自転車が見事同時に立てた状態で積載できる。しかも、10・15モード燃費がこのジャンヌのクルマとしてはトップクラスのリッターあたり22.5kmをマークするワンボックスがスズキから登場した。
写真でもわかるように文字通りのワンボックススタイルだが、ハンドルを握り走らせると活発に走ってくれる。エンジンとトランスミッションは、スイフトとまったく同じ。吸排気にVVT(バルブタイミング機構)を取り付けた1.2リッター4気筒エンジンと副変速機付きのVVTとの組み合わせ。新型プラットフォームで軽量化に意を注いでおり、車両重量もGタイプは1000kgとかなり軽い。最近の流行で燃費の良い運転を支援してくれる「エコドライブ・インジケーター」付きである。
このクルマの面白いところは、直接のコンペティター(競合車)が存在しないということだ。あえて言えば、トヨタbB,ホンダフリードあたりになるが、彼らはコンパクトカーのジャンヌ。ソリオは、あくまでもワンボックスなので、居住空間がライバルを蹴散らすほど広い。ふた昔前のスバルのドミンゴ(1983年~1998年)あたりが、このクルマに近い!? かつてのワンボックスは、広いだけで、乗用車のような静粛性は望めなかったが、このソリオは上々と見た。リアシートにもリクライニング機構が付いている。クルマを道具と見た場合、このソリオはかなりいい線いっているといえる。ただ、自動車という商品は、変な話時代の風を背負わないと売れないというシロモノ。ソリオも、21世紀の風にのれるか、今後の動向が注目だ。価格は、128万円からとかなりリーズナブルだ。
大幅な補助金制度がなくなったいま、乗用車の世界での話題がリッターのガソリンで0.5キロでも多く走れるかのバトルになってきた。
このほどデビューしたダイハツの新型ムーヴは、ハイブリッドカーを除くガソリンエンジン車の世界で、最上の燃費チャンピオンとなった。リッター27キロなのだ。従来型車よりもリッター5km、ライバルに比べリッター2~3kmほど水を開けたことになる!? その燃費向上の秘密は、どこにあるのか?
ボディ骨格のスリム化、インパネやドアトリムのスリム化など車体側で約35kgの軽量化を実現させたこと。それにプラスして、より使いやすくて静粛性の高いアイドリングストップを導入したことも大きいが、一番の立役者は燃費性能を進化させた第2世代のKFエンジンを実現させたからだ。樹脂製のスロットルボディでCVTとの協調制御させていること、ウォーターポンプの効率向上、エンジンのムービングパーツ(稼動部品)の機械的抵抗を減らしたこと、ⅰ-EGR(アイ・イージーアール)と呼ばれる排気ガスの一部を吸気に戻すシステムをより緻密にできたことなどの合せワザによる。ⅰ-EGRというのはスパークプラグをセンサーにして燃焼室内のイオンの量をチェックしながらEGRの量をコントロールするもので、世界初の仕掛けだという。なお、カタログ燃費向上だけでなく、実用燃費向上のため、エアコンの制御に力瘤を入れたということだ。
ちなみに、新型ムーヴは全車オートエアコン付きとなり、価格は、112万円からだ。
ふだん乗用車ばかりに目を向けていると、乗り物の世界の全体を見ていないことにもなりかねない!?
トラックの世界も意外と面白いのである。このほど8年ぶりにフルモデルチェンジされた三菱ふそうの小型トラック・キャンターは、1963年に初代誕生以来、なんと8代目に当たるという。小口配送はいまや世界的な潮流で、小型トラックの需要はグローバルな市場だという。乗用車感覚で運転できるトラックという理由で、採用されたのは、デュアルクラッチ式のトランスミッションだ。VWのDSG(ツインクラッチ)、ランサーエボリューションⅩ、GT-Rなどに採用されているのと基本的に同じ手法。マニュアルトランスミッションの好燃費性とATの利便性(2ペダル)を兼ね備えた理想により近いトランスミッションである。
と言葉にすると簡単そうに見えるが、ゼロからの設計だったという。
トラックはFR(フロントエンジン・リアドライブ)なので、縦置きのトランスミッション。マニュアルトランスミッションの製造ラインを生かすために、ハウジング(ケース)は共通で、通常のクラッチが占める部分にバルブボディ(油圧制御部)とアウター、インナー各3枚ずつのデュアルクラッチ(湿式)を巧妙に収めている。モノづくりではゴミを異常に嫌うのでクリーンルームでの組み立てだという。DUONIC(デュオニック)の愛称を持つこのトランスミッション。従来型のAMT(MTの電子制御タイプ)に比べ変速ショックが劇的に小さくなり、変速時のトルク抜けも限りなくゼロになり、燃費向上とスムーズな走りが実現できている。先日河口湖で試乗した限り、乗用車とまるで同じで退屈!? なほどだった。ちなみにキャンターの価格は418万円台からだ。
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