≪直噴エンジン+過給機(ターボチャージャー、スーパーチャージャー)+可変吸排気バルブ機構≫という、いわば20世紀のハイメカニズムを3点セットしたようなガソリンエンジンシステムが、ここ数年欧州の乗用車エンジンのトレンドになっている。
VWのTSIエンジンと呼ばれるエンジン、ボルボのエンジンの一部、アウディのエンジンの一部にも、このタイプのエンジンが≪21世紀型エンジン≫として登場している。これは排気管の圧力が吸気管より低いことを利用して、吸排気バルブを同時に開き、残留排ガスをいっきに押し出し、新気を導入する、スカベンジング技術。
これにより、より多くの空気を充填することになり充填効率を高め、エンジントルクを向上できる。ターボチャージャーが本来宿命としていた“ターボラグ”を解消し、低速トルクを飛躍的な高め、トルクを最大50%向上させる。くわえて、エンジンの直噴化、小排気量化とVVTで燃費が最大29%も向上させることができるという。
このあたりの燃焼理論は何度聴いても理解しづらい世界だが、もともとこうした理屈は昔からあったという。それが可能になった背景には、緻密な制御技術が可能になった現代のエレクトロニクスがあるという。
ボッシュでは、あと20年はこうした進化したガソリンエンジンで化石燃料を使った自動車が生き延びると予測している。その前に電気自動車とハイブリッド自動車がどのくらい進化し、庶民の支持を得られるかが大きな課題だ。
筆者が住む横浜の金沢区・幸浦はウオーターフロントの工場地帯なのだが、そこに電気自動車用の「急速充電設備」を備えるガソリンスタンドがある。気が付いたのは、昨年終わりだから、多分昨年中ごろにはできていたのではないだろうか? この近くにショッピングセンターがあるため、月に1回はクルマで通りかかるが、その充電器を使っているところを見かけたことがない。今のところ三菱のアイミーブぐらいしか存在しないことを思えば致し方ない。今後、日産のリーフが市場に出れば、頻繁に充電現場を見かけるかもしれない。
同じ横浜の赤レンガで先日「エコカーワールド2010」というイベントがあった。文字通りエコカーが50台以上集合したイベント。その中で、注目したいのは、「ゼロEVセラビューバンLi」なる車名の実用車。軽の働くクルマである。
岐阜県の各務原市にある㈱ゼロスポーツが製作した軽自動車をベースにしたEVである。ゼロスポーツは、同じ軽バンの郵便事業向けEVをすでに量産しており、その流れで今年デビューさせるものだという。リチウムイオン電池、交流モーターを搭載した日本初の軽バン電気自動車だという。商用業務車両には欠かせない左右のスライドドアにくわえ、荷室スペースもスクエアな形状で、大容量の荷室容積を確保しているという。乗り味も低速トルクを重視し、乗りやすさと加速性能を向上させるなど現場の意見を取り入れクルマ作りに反映させたともいう。気になる1充電あたりの走行キロ数は、180km。販売価格は、448万円だが、現在補助金申請中。
EVの課題はなんと言っても1充電あたりの走行キロ数。乗用車なら300kmないと不安だが、デリバリーサービスなどで使うクルマなら180kmあれば十分。EVはさしずめ、働くクルマからになるのがいいと思うね。急速充電器がフル活躍する日も近い!?
TSIエンジンを載せた新型ポロが日本で発売された。
TSIというのは、VW独自のダウンサイジングによる21世紀のエンジン理論。≪小さな排気量で、直噴エンジンに過給機を付けることで1クラス以上の走りと燃費を稼ぎ出す≫というもの。5代目ポロのTSIエンジン搭載車は、10・15モード燃費が、歴代VW車のなかで過去最高の20km/lをたたき出す。しかも、1.8リッター並の走りができるという。SOHCの2バルブ・エンジンに、初の電子制御式のウエストゲートバルブを組み込んだターボチャージャーで最大トルクが175Nmをエンジン回転数1550rpmで発生する。まさに1.8リッター並の高トルクともいえる。
このTSIエンジン、トランスミッションに7速DSG(デュアル・クラッチ・トランスミッション)というマニュアル・トランスミッションを電子制御化した21世紀型機構を取り入れてはいる。でも、過給機+直噴エンジンという構成は、20世紀型エンジンそのもの。新開発のアルミ合金製シリンダーブロックなどを採用することで、エンジン単体重量を1.4リッターTSIエンジンより24.5kgも軽量化してはいるものの、口汚く言えば「前世紀のエンジンの在庫一掃メカニズム」といえなくもない。
欧州=ディーゼル乗用車、日本=ハイブリッドカーという、仄見えてきた次世代型パワーユニット・バトルの中で、VWは、日本市場ではTSIエンジンという限りなく前世紀型パワーユニットで乗り切ろうという戦略。気になるポロ1.2TSIエンジン搭載車の価格は、213万円からと、こちらも戦略的である。
昨年11月に欧州でデビューしたシトロエンC3が、ようやく日本でも発売された。
このシトロエンC3なるコンパクトカーは、120PSの4気筒1.6リッターのエンジンを載せ、価格が209万円からとリーズナブル。一番のウリは、ドライバーの頭上後方までに広がるフロントウインドウ。なんと垂直視界方向の視野が最大で108度もあるのだ。これをシトロエンでは「ゼニス・フロントウインドウ」と呼んでいる。普通のクルマのフロントガラスの前後長が0.8メートル前後なのに比べ、こちらは1.35メートルもあるのだ。
座ると、パノラマビュー的な視界が広がり、圧倒的な開放感を感じるのも、まんざら嘘ではない。
よくこんなフロントガラスをつくったものだと感心する。ある意味≪先進性≫なのかもしれない。でも、冷静に考えればガラスの重量は重く、車両重量のなかで占める割合は小さくない。燃費にも露骨に影響する部品。通常のクルマより、ガラス面積が広いぶん厚くしているという。それにガラスのリサイクル性は正直遅れている。
先々の話になるが、中古部品として管理することを考えると、こんなにでかく大きくカーブしているガラスをどんなふうに管理するか、リサイクルショップは頭を悩ますハズ。大型バスのフロントガラスは100万円もするが、実際には大きすぎて管理できず、やむなく破砕しているのが現状。こう考えると、シトロエンC3の先進性にも暗雲が見える!?
リサイクル部品で愛車を修理すればお財布に優しいだけでなく、地球にも優しい。
リサイクル部品は、もともと純正部品で品質は安心だし、新品部品に比べCO2の発生がずいぶん抑制されるからだ。たとえばリサイクルのドアを使い修理すると新品部品を使ったときにくらべCO2を98.7kgも削減できるというのだ。気になる価格は純正新品の半値以下と思えばいい。
ところが、この2重のお勧めのリサイクル部品は、活用するうえで大きなハードルがあった。
自動車部品の取り外し&取り付け作業には、それなりのノウハウが必要だからである。修理工場やカーディーラーでないと処理できない。手に入れたリサイクル部品を修理屋さんに持参するといったこともあった。つまり、いま流行の言葉で言えば≪ワンストップサービス≫でリサイクル部品を活用できなかったのだ。リサイクル部品店からみても卸のビジネスなので、本当のユーザーの顔を見ることがなかった、とも言える。
昨年12月オープンした「タイヤショップショウワ越谷店」(℡048-970-0505)は、認証工場の資格を持つため、お客様が購入したリサイクル部品をその場で取り付けてくれる。タイヤショップなので、もちろん新品タイヤ、良品の中古タイヤの販売取り付けだけではなく、2階には各種のリサイクル部品(エンジンフード、バンパー、フロントグリル、ヘッドライト、テールレンズ、マフラーなど)が置いてある。もちろん、タイヤショップの親会社は昭和メタルなので、3万点を誇るパーツセンターから顧客の必要とするリサイクル部品を発送、取り付けサービスも展開している。
クルマを所有し、使ううえで頭の痛い課題のひとつは≪車検≫ではないだろうか。
車検時には安くない重量税を払い、自賠責保険を支払い、さらに車検整備代と呼ばれるメンテナンス料金が飛んでいき、いっきに財布が軽くなる。車検は江戸時代の関所のようなもの。庶民の切ない努力で、ユーザー車検にチャレンジするも、やってみると意外とハードルが高い。車検場の雰囲気が素人を寄せ付けない独特のものがあるからだ。
先日2年ぶりに川崎の車検場に足を運んだところ、その“空気”がずいぶん変化していた。
車検ラインに入ると、担当のおじさんが寄ってきてあれこれ、指示をしてくれるのだ。「前輪をここまで進めて・・・」とか、「時速40キロで、パッシングしてください」はたまた「そんなに慌てなくてもいいですよ」。これまで20回近くユーザー車検を受けた経験がある。その意味ではベテラン。(だが、おじさんにはそうは見えなかった!) なんだか後ろの車両にせかされ、あわてることが多いが、おじさんのおかげで今回はなんだか安心して受験することができ、無事合格となった。
帰路、「以前はお役所120%の臭気を放っていた車検場だったのが・・・なぜ?」と考えるうちにふと腑に落ちた。あまり知られていないのだが、実は車検場(陸運局)は、平成9年の行政改革にともない、「自動車の検査業務」を独立させ、平成14年7月から「自動車検査独立行政法人」がおこなっている。6年前から独立行政法人化されたのだ。ところが、民主党政権下で、例の事業仕分けにより現在独立行政法人への風当たりがきつくなっている。その影響で,より国民に理解されやすい組織を目指し変化を見せなくては、自分たちの組織が危うい。そんなところから、民間企業並(とは言わないまでも)の国民目線(?)のサービスを始めたものと推理される。ユーザー車検に二の足を踏んでいる読者はぜひ挑戦してもらいたい。「車検」の何たるかを身を持って知るだけでも面白い。
ホンダのCR-Z(シーアルールジー)に乗った。
事前にある程度どんなクルマなのか、想定していたので驚くほどの新鮮な発見はなかった・・・。
とはいえ、一番の注目点は、ハイブリッドのスポーツカーというコンセプト。いっけん21世紀の自動車のコンセプトとしては無理があるというか、矛盾するコンセプトのクルマと思われる。スポーツカーというのはある意味、非日常のクルマ。ハイブリッドカーというのは、燃費重視のきわめて真面目なクルマだからだ。ところが、ハンドルを握り実際道路に出ていろいろいじってみると、うまく表現できないが「これもありかな」と思えてきた。クルマの在りようにさほど目くじらを立てるバカラシサがその思いの底にある!?
矛盾するコンセプトを成立させているもののひとつに、3モードドライブ・システムという仕掛けがある。ハンドルの左右にサテライトスイッチがあるのだが、右端にスポーツモード、ノーマルモード、ECONモードの3つの走行モード選択スイッチを備える。
スイッチを切り替えることで、いわば走りの個性をドライバー自身が作り出せる仕掛けなのだ。たとえば、スポーツモードに入れると、アクセルペダルの操作量に対し、スロットル開度を大きくコントロール。モーターのアシスト量も増大。加えて、EPS(電動パワステ)の操舵力も調節され、手応えのあるフィールとなる。ECONモードはスポーツモードの逆で燃費重視。ノーマルはその中間。その日、あるいは時々の気分で選択できる。
こうした仕掛けは、ドライブ・バイ・ワイヤーなどの電子制御技術のおかげである。一昔前のスポーツカーでは真似のできないハイテク技術なのである。21世紀の新しいスポーツカー像をホンダは表現しきったかどうかは、あと数年たたないと評価が定まらないが、個人的にはいいセンいっているのではないかと思うね。
ハイブリッドカーや電気自動車も未来志向の乗り物として注目されているが、燃料電池車こそが、究極の未来カーというのは、誰しもの一致するところ。クルマの内部に水素と酸素を反応させて電気を作り出す発電機構を持ち、モーターを回し車輪を動かす。出るのは水だけという完璧なゼロ・エミッションカーである。ところが、この燃料電池車、トヨタ、ホンダ、日産、ダイムラー、GMなど世界な名だたる自動車メーカーが試作し、一部にリース販売をしているものの、まだまだ量産という段階ではない。1台当たり1000万円以上とべらぼうに高価だからだ。
そんな“燃料電池未来図”の閉塞感漂うなかで、登場したのが岩谷産業の提案する≪水素自転車≫である。リアの荷物台に水素カートリッジとその下に燃料電池システムを搭載。サドルの下には電気を貯める役目のリチウムイオンバッテリーがセットされている。バッテリーの残量が少なくなると自動的に水素カートリッジから燃料電池に水素を供給して発電をおこない、バッテリーを充電。そのため、充電器によるバッテリーの充電が不要。
バッテリーの電力でモーターを駆動し、自転車の走行をアシストする仕組み。充電しながらアシスト走行ができるので、バッテリーのみでの走行にくらべ、約1.5倍の走行、具体的には約45km可能だという。
現在「誰にでも、安全に、簡単に、快適に乗ることができる水素自転車」を目標に多角的に実証実験を繰り返している最中だという。試作車ということで、総重量31kgと普通の自転車にくらべ約2倍、現在のハイブリッド自転車にくらべても1.5倍の重さなど克服すべき課題はあるものの、庶民がまず手に入れる燃料電池による移動手段としては、自転車が一番乗りする可能性ありだ。
いまや自動車という自動車は、CO2の削減の一途である。CO2が削減は、燃費低減に直接つながるため、商品性が高くなり、商品性が高ければ売れ行きがよくなる・・・という理屈である。
一方、最近のハリウッド映画に登場するクルマをあげつらうまでもなく、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)が増加している。腰高のスタイルは都会をキビキビと走るダイナミック性をかもし出し、かっこいいクルマだからである。
ところが従来のSUVは、どちらかというと、車両重量が重くて空気抵抗が低く、そのぶん燃費のクルマというイメージが強い。ところがこのほどデビューした三菱の2代目RVRは、10・15モード燃費が2WDで15.2km/L、4WDでも15.0km/Lという、このクラスでは注目すべき低燃費車である。
この秘密は、全長が4295ミリというコンパクトなボディだけでなく、フロントフェンダーに樹脂フェンダーを採用したり、エンジンフードとテールゲートの板金の板厚を薄くし、すべてのドア全体で合計約7.6kgの減量作戦を行い、オルタネーター(発電機)と車載バッテリーによる減速エネルギー回生システムを導入するなどの合わせワザが効を奏しているからだ。CO2削減に忘れてはいけないのが、CD(空気抵抗係数)が0.33とSUVの世界ではトップクラスの数値。むろん、プリウスの0.25にはとてもかなわないが、車高が1615ミリのクルマとしては金メダル級。リアの絞込みやフロントフェンダー部の形状を緻密に煮詰めたおかげだという。
エンジンは、1.8リッターのNA(自然吸気)で、車両価格は178万5000円からとリーズナブルである点にも注目したい。
「横滑り防止装置」といわれるESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)をご存知だろうか? ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)というのはよく知られていてもESCの認知度はあまり高くない。
実は、ESCは、ABSから進化したものなのである。電子制御で4輪の制動をコントロールすることで、たとえば雪道などの滑りやすい路面で、車両が横滑りするのを感知すると、自動的に車両の進行方向を保つように車両を制御する仕掛けである。具体的には車両がアンダーステア(カーブより外に膨らむ現象)となるとリアの内側の車輪にブレーキをかけ、車両の方向を修正するという具合である。
ESCを装着することで、自動車事故の30~35%を減らすことができるというデータも出ている。ドイツではすでにこのESCの装着率が約80%、アメリカでも約50%のクルマにESCが取り付けられているといわれる。ところが、日本では法制化が遅れていることもあり、わずか10%のクルマにしかESCが装着されていないのが現状。
実はESC,4つの車輪に電子制御で制動をかけるところから、坂道発進機能や急坂をゆっくり走破できる仕掛けとか、前方のクルマに追従するシステムなどいろいろな安全装置としても応用が利く仕掛け。ESCが認知しづらい理由のひとつは、自動車メーカーにより呼び名が異なる(たとえばトヨタはVSC,ホンダはVSA,日産はVDCという具合)ためもあり、今後ESCに統一される動きである。
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