みなさん!知ってますCAR?

2010年2 月 1日 (月曜日)

厚さ20ミクロンのシームレスパイプとは何ぞや?

Pho1  取材に出かけると、時として、これまで自分が抱いていた「常識」が砕け散る瞬間に出会うときがある。
 先日、東京ビッグサイトで開催された「EV/HEV技術展」という、かなりマニアックなイベントを取材しているとき、そんなカミナリにうたれた経験をした。EVというのは電気自動車であり、HEVというのはハイブリッドカーのことであり、そうしたクルマを支える新しい技術の展示会なのである。
 「メタルスリーブ」と呼ばれる加工技術を展示する企業。平たくいえば「金属の円筒形半製品」のことである。これまでOA関連の世界で、500万本の生産実績があり、これからEVやハイブリッドカーの領域に乗り出そうという新潟にある従業員240数名の企業である。このメタルスリーブというのが、文字通りシームレス(つなぎ目ナシ)の極薄チューブなのである。どのくらい薄いかというと、20ミクロン(0.02ミリ)で、その厚みのばらつきがなんと3~7ミクロンだという。
 造り方を聞いても素人の私には半分しか分からないが・・・まず円形のステンレス製の丸状の材料を温間で、深絞り加工し、さらに回転させながら≪超深絞り加工≫させていき、結果として20ミクロンの極薄のチューブを作り出すのだという。この深絞り加工のことを別名「スピニング」とも言うそうだ。判りやすくいえばビールのアルミ缶や携帯電話の筐体にも深絞り加工を用いられ、成形されているが、その超ミクロン領域の世界と思えばいい。今後リチウムイオン電池のケースにこの技術が用いられると思われる。

2010年1 月15日 (金曜日)

燃費が3.5%向上するエコタイヤとは何ぞや?

IMG_7501     世に言う「エコタイヤ」とは空気圧を高めにして、転がり抵抗をノーマルタイヤより若干よくしてある、いわゆる≪おためごかしのタイヤのこと≫とひそかに考えていたが、それがとんでもない思い違いをしていたことが、ある体験で判明した。
    先日、BS(ブリヂストン)の発表会見&試乗会にお台場まで出かけた。
    「従来タイヤより転がり抵抗が25%低減し、ウエットでのブレーキ性能が14%向上したエコピアEX10なるエコタイヤ」のイベントである。シリカ(ケイ素)の配分を整理整頓しタイヤ回転時に発生するエネルギーロスを抑制することで、劇的に転がり抵抗の低減ができたという。しかも従来技術では転がり抵抗を小さくするとウエット性能がダウンする、俗に言うトレードオフの関係があった。だが、それをナノプロテックなる技術で克服したという。加えて、トレッドショルダー部の無駄な変形を抑制することで偏摩耗を少なくし、タイヤ自体のロングライフ化も図っている。実はことほど左様にタイヤの技術を言葉で表現すればするほど空しくなる・・・。
    従来タイヤを履いた3輪自転車とエコピアEX10を履いた3輪自転車(もちろんサイズは同じ!)で路面の抵抗を体験してみた。従来タイヤ付きの3輪車は漕ぎ出すときエイッとばかり足に力を入れないといけなかったが、エコピアEX10を履いた3輪車は文字通りスイ~ッと進んだのだ。たとえてみればハイブリッド自転車と普通の自転車の漕ぎ出すときの差異に似ている!?
    ちなみに、タイヤは、ライフサイクルを見ると使用段階でのCO2発生量が87%と圧倒的に多い製品。転がり抵抗25%減ということは、燃費で言うと3.5%もの向上率にあたる。つまりそのぶんCO2の低減に結びつくという理屈だ。しかも気になるこのエコタイヤの価格、通常タイヤとほぼ同じか若干お安いという。近い将来、日本のタイヤはエコタイヤが多数派になると見た。

2010年1 月 1日 (金曜日)

アルトが7代目。30年目のフルモデルチェンジ

IMG_7471  スズキ・アルトの7代目がこのほどデビューした。
 アルトといえば、30年前「全国統一価格47万円」で一世を風靡して以来、運転のしやすさ、使い勝手のよさ、経済性の高さを受け継ぎ、軽自動車市場で確固とした地位を築いている。
軽自動車はいまや新車販売の3割を占めるものの、ここ半年レベルで見ると売り上げが伸びていないのが実情。昨年のリーマンショック以来の不況対策として打ち出されている、エコカー減税と補助金。その効果でコンパクトカーなどの新車の売れ行きが伸びるなか、軽自動車の売り上げは頭打ちなのである。むろん、軽自動車にもこうした優遇税制があるものの、普通車などとくらべると薄い。しかも、プリウスはじめハイブリッドカー、コンパクトカーの中には、軽自動車をしのぐ好燃費カーが登場していることも、軽自動車の販売にブレーキをかけている要因になっている。
 新型アルトのウリは、10・15モード24.5㎞/ⅼというクラストップクラスの燃費。だが、これでは正直、贔屓目(ひいきめ)に見ても「燃費のいいクルマ」とはいいがたい。
 物理的にもコスト的にも軽自動車にハイブリッドシステムを積むことができないので、レシプロエンジンのさらなる高効率化とボディの軽量化作戦をさらに推し進めるしかない。いまどきリッター30キロを叩き出せる軽自動車でなければ、魅力を感じないのではないだろうか。生活の足である軽自動車の正念場である。

2009年12 月15日 (火曜日)

ABSの製造から25年たったコンチネンタル社

IMG_7367少し運転に自信のある読者なら、ABSの効き具合をふだんの運転のなかで体験することがあると思う。たとえば、路上に砂がのっているところで、少し急激なブレーキングをすると、ABSが効くのが分かるし、濡れている路面でも同じように体験できる。
そのABSの製造開始から今年で四半世紀(25年)を迎えた企業がある。ドイツの企業コンチネンタルである。コンチネンタルというとタイヤメーカーとしてのイメージが強いが、実は、ブレーキをはじめとする安全装置をつくる企業でもある。ABSの世界シェアは35%。日本でも5台に1台はコンチネンタル製のABSが採用されているという。そのコンチネンタルが世界初の一体型ABSを製造したのが1984年。マツダのコスモやリンカーンコンチネンタルに採用されている。このときの単体重量がなんと11.5kg。それから25年、軽量コンパクトになった。重量は初期モデルの約1/10の1.3kg(写真)。しかもABSだけでなく、横滑り防止装置ESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)も組み込まれている。
驚くべきデータだが、すべての交通死亡事故数の約4割はなんらかの“横滑り現象”を起こしているという。そのうちの8割は、ESCが装着されていれば防げたというリサーチがある。欧米では新車時のESCの装着義務付けが法制化されつつあるが、日本ではほとんどオプション設定が少なくない。日本でも法制化が急がれるところである。

2009年12 月 1日 (火曜日)

ステップワゴンの3番目のシートの秘密とは?

Img_7108 自動車開発のエンジニアに話を聞いている仕事のなかで、すごい! とつぶやくときがある。これまでの常識ではできなかったことを事もなげにやってしまった場合である。

ホンダから最近発売されたステップワゴンのサードシートの秘話が、そのひとつである。従来車のサードシートの格納は、サイドに跳ね上げ方式だったが、これではせっかくの広いはずの荷室容積が狭められる。やはりここは床下に格納すべし。
ということで、サードシートを床下に収めた・・・。言葉にするとわずか1行だが、ステップワゴンは5ナンバーで,車幅が1.7メートル以下である。3ナンバーのでかいクルマなら確かに床下格納車はこれまで存在したが,5ナンバーで,3人掛けシートが床下に格納できるタイプはなかったのだ。

ホンダのボディ開発者は、1年半がかりでこれに取り組み、見事やってのけた。リアのサブフレームを巧妙に湾曲させ、軽量・強度、剛性・コストなどの複数の要求を満たすべく具現化したのである。何度もトライ&エラーをして実現にこぎつけたという。ということは「事もなげに」ではなく、≪奮闘努力の末≫商品化したということになる。ちなみに、このサードシート、実測で約30kgもあるが、格納をおこなってみると女性の非力なチカラでも、楽々床下に収めることができた。回転軸にスパイラルスプリングなるバネを仕込んでいるのがその秘密である。

2009年11 月15日 (日曜日)

自動車の軽量化は足元にまで及ぶ!?

64 職業柄、自動車メーカーの開発エンジニアと話をするチャンスが多い。インタビュー記事を作成するため、月に15名ぐらいのエンジニアに話をうかがうのである。
ここ数年、エンジニアの口から共通に飛び出す言葉は、「軽量化」である。

クルマの軽量化、ひいては自動車部品の軽量化だ。クルマを軽くできれば、燃費もよくなり、その分CO2の排出量も少なくなる。動力性能が同じなら、軽いクルマのほうがよりキビキビ走れる。しかも軽量化するということは、材料がそのぶん少なくて済むことにつながるため、コストも下がる。いいこと尽くめと言ってもいい。自動車をつくるうえで軽量化は至上命題であり、正義のキーワードなのである。

そんななか、現在催されている東京モーターショーで軽さを追求したペダルを見つけた。
中空構造の板金製のブレーキペダル(写真右)と樹脂製のクラッチペダル(左)である。樹脂のクラッチペダルはナイロン樹脂にガラス繊維を混ぜ強化しているタイプ。自動車のペダルなんか、しげしげ観察したことのない読者はあまり関心がないかもしれないが、これって一大革命なのだ。ブレーキペダルも樹脂で作ったほうが簡単でいいと思われるが、ブレーキペダルは踏力が大きいため、どうやら樹脂では強度が持たないらしい。これを試作した広島県の㈱オートテクニカのエンジニアによると、いずれのペダルも従来型の鉄製ペダルに比べ、6割弱の軽量化と20%強のコストダウンができるという。いまのところ「提案部品」の領域だが、近々どこかのメーカーの自動車に採用されると思われる。

2009年11 月 1日 (日曜日)

池に生息する! 微細な藻(も)が地球を救う!?

Img_6725_2 エンジン部品をはじめ、さまざまな自動車部品を供給している巨大な自動車部品企業のデンソーがいま面白い実験をしている。

池や温泉に生息する「シュードコリシスチス」という舌を噛みそうな名前の5マイクロメーター(1ミリの1/200)の藻に注目している。この藻を使って工場内で排出するCO2を吸収、さらにこの藻のなかにディーゼルエンジンで使う軽油と同じ成分が存在することを突き止め、近い将来バイオ燃料として役立てる計画だという。この研究は、デンソーと慶応大学の先端生命科学研究所が共同で展開中。
意外に知られていない事実だが、藻は樹木にくらべCO2の吸収効率が高く、同じ面積で比較した場合、藻の培養池は森林の約10倍のCO2を吸収する能力があるという。藻はわずか2週間と成長が速く、丈夫で培養しやすい特徴を持つという。

この藻を使いデンソーは工場内の製造工程で発生したCO2を効率よく削減する一方、バイオ燃料としても2次利用していくのだという。現在バイオ燃料はトウモロコシや大豆などから作られるため、穀物価格の上昇につながる可能性がある。食糧問題と地球環境問題がバッティングするのである。この藻の研究が実用化されれば、その心配もなく、エネルギー問題や地球温暖化対策に大きく貢献すると見込んでいる。

2009年10 月15日 (木曜日)

欧州車にもメイド・イン・チャイナのエンジンパーツが

Img_5737 たとえばマツダのアクセラのエンジン部品にドイツ製のピストンやフランス製のVリブドベルトといった舶来もの部品を採用していることはさほど珍しくない。あるいはエクストレールのディーゼルエンジンなど日産車の一部のエンジンはフランスで組み立てていることも事実。いまや自動車部品は、グローバルな世界に突入しているのである。

「安くて信頼性の高い部品なら地球の裏側からも調達したいです」そんな言葉を某自動車メーカーのエンジン開発者から聞いたことがある。

そんな折、ある欧州車の整備士コンテストの取材で面白い部品を≪発見≫した。
VWとアウディで使われている1.4リッター直列4気筒の直噴ターボエンジンTFSI。アウディなどではA3スポーツパック1.4TFSIという車名で、戦略的な価格299万円で販売しているクルマの心臓部だ。そのエンジン部品の一部に中国製の部品を発見したのだ。欧州車のエンジンに、それもカムシャフトのスプロケットという重要部品にメイド・イン・チャイナの自動車部品が採用されている。

いまや中国は日本を追い抜いて世界で有数の自動車製造国。そう思えば欧州車のエンジンに中国製の部品が使われていても少しも不思議ではない。それに・・・もちろん、価格が安いということがその採用理由なのだろうが、品質基準もアウディあるいはVWの基準を満たしていることは疑問符を付けないが、ユーザーは知るよしもない。

2009年10 月 1日 (木曜日)

ホンダの近未来パーソナルモビリティとは?

Img_5613 ホンダは、よく知られるようにここ20数年かけて二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」の開発をおこなってきた。これを難しくいうとロボテックス研究だという。このロボテックス研究での一番の成果は、≪バランス制御≫。

このほど近未来のパーソナルモビリティ(一人用乗り物)として一輪試作機「U3-X」が発表されたが、これこそバランス制御をフル活用した提案マシン。
「U3-X」と名乗るこの乗り物、重量10㎏前後。ひょいと手に持てるひょうたん型をした超軽量マシン。上部に折り畳み式シート、下部にも折り畳み式ステップが付いていて、スイッチを入れればぶるぶる震えながら自立している。

さっそく試乗した。身体を前に傾けると、前に、後ろに傾けると後ろに、横に傾けると横に、斜めに傾けると斜めに進む。身体を傾け体重移動すると、自動的に速度と距離を演算し、進んでくれる仕掛け。上部にリチウムイオン電池を内蔵し、約1時間の走行が可能。下部には、モーターと車輪が内蔵した樹脂ハウジングがフレームを兼ねるモノコック構造。

車輪にはHOTドライブシステム(全方位駆動車輪機構)と呼ばれるシステムが組み込まれている。これは20数個の小径車輪を一列につなぎ合わせて構成した大径車輪を、前後左右斜めに駆動できる世界初の車輪機構。車輪をモーターで制御し、大径車輪を動かすことで前後移動、小径車輪を動かすことで左右移動、2つそれぞれの動きを組み合わせることで斜め移動が可能としている。

最高速度時速6キロなので急速な動きこそできないが、数分でこつを飲み込めスムーズな移動ができた。身障者用の乗り物だけでなく、デリバリーやイベント会場での移動などさまざまなシーンで活躍できそうだ。

2009年9 月15日 (火曜日)

太陽エネルギーを使ったソーラーカーの進化具合は?

Img_5434 太陽光で発電してモーターを回すソーラーカーは究極のエコカーである。

製作過程ではCO2の発生が多少あるものの、一度つくってしまえば、走行中いっさい化石燃料を消費しない。地球温暖化の原因CO2を発生せず、燃費は無限大。まさに理想のクルマである。

このソーラーカーは、現在どのくらいの進化具合なのだろうか? 近い将来実用化されるのだろうか? このほど東海大学で製作し、世界最大級のソーラーカー・レースに出場するマシンを取材してみると、現時点でのソーラーカーの実力度が見えてきた。

東海大学が参加するレースは、オーストラリアの北部の街ダーウィンから南部の街アデレードまでの約3000キロ。参戦するソーラーカーには、宇宙用に開発された高効率のシャープ製ソーラーパネルを6㎡敷き詰めている。ミツバ製のダイレクトドライブモーターに高精度の制御を組み込み、ボディはカーボンファイバー製である。東海大学では世界クラスのソーラーカー・レースには、1992年からすでに5回ほど参加し、マシン作りも過去に7台の実績を持つ。昨年の南アフリカでのレースでは見事優勝を勝ち取っている。

ソーラーカーのレースの成否は、ソーラーパネルの性能、ボディの空力、それにエネルギー・マネージメントの3つだという。エネルギー・マネージメントというのは、事前にチームが天候を分析し、出し入れする電気エネルギーを考慮し、回生ブレーキを効率よく使うなどソーラーカー特有の知的な駆け引き。ただ、ガソリンエンジン車のレースのように、むやみやたらにアクセルペダルを踏み込めばいいというわけではない。エコランを組み合わせたレースと考えると分かりやすい。

ちなみに、このマシンは、車両重量約150㎏で、理論上最高速度150㎞/hだが、実際には100㎞/hがやっとだという。つまり、ソーラーカーが大量生産され、公道を自由に走るには、コストだけでなく、居住性、信頼耐久性、動力性能、操縦安定性など無数の越えるべきハードルがある。ソーラーだけをエネルギーにするには困難が大きすぎる。となると、電気とソーラーとのハイブリッドカーが20年後に出るかどうか!?

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