軽自動車に比べ全長で約400ミリ短く、逆に全幅で約200ミリ長い、パッと見た印象はチョロQスタイル。これまでの「大きいことはいいことだ」という阿吽(あうん)の価値観をぶち破り、「小さくてもトヨタがつくれば、こんなプレミアム」で、パッケージング革命だ、というのがトヨタの主張。
エンジンはパッソ&ブーンに載る3気筒1000㏄をチューニングし、トランスミッション(といってもCVTだが)構造を変更することで、フロントオーバーハングを短縮。燃料タンクをフラット化し床下に配置することで、リアのオーバーハングも短縮、15インチタイヤが四隅に張り出す文字通りのチョロQスタイルを実現している。
乗車してみると、後席はやはり狭い。大人3名に子供1名ならなんとか東京から静岡あたりまで我慢できるレベル。2つのドアの厚みを軽自動車並みに薄くし、トランクルームも数本の傘が入るほど。となると衝突安全が心配だが、世界初のリアウインドウ・カーテンエアバッグを含む9個を備え、車両安定化制御を組み込むことで、高い安全を維持しているという。
気になる燃費は、軽自動車以上の23㎞/L(10・15モード)。エクステリ・アデザインは、巻貝や波紋などを基に作られた数理モデルを使い、自然界の造形美を生かした滑らかな線と面を採用している。価格は140万円~160万円といささかプレミアム。数ヶ月で、どのくらいの数が街中をうようよ走り回っているか? ヴィッツに変わるトヨタのベストセラーになるのか? 今後を注目したいクルマである。
ガソリンの値段がひところに比べやや沈静化したものの、経済の閉塞感からクルマの売れ行きが思わしくない。そんななかで一人軽自動車だけがかなり元気。なかでもスペース系といわれるワゴンRやムーブなどが好調。三菱のトッポ(写真)がよみがえった。
トッポはもともとミニカトッポからはじまりトッポBJ(ビッグジョイという意味)と進化し、3代目が今回のトッポなのだが、実はトッポBJは、三菱の一連のリコール問題などで4年前に販売中止。まるまる4年間空白だったのだ。
よみがえったトッポは、軽乗用車クラス最大の室内高1430ミリを持つ。小学5年生の男子児童がらくらく車内で直立できるのである。背の高いクルマは操安性が不利となりがちだが、トッポの場合、スプリングのバネレートを高めている。試乗すると不安のない領域だと確認できた。
トッポで注目なのは、先代のトッポBJや姉妹車eKワゴンの部品を積極果敢に流用している点だ。具体的にはプラットフォーム自体はeKワゴンと共通で、エンジン、トランスミッション、それにエンジンフードがeKワゴンと互換性あり。リアゲート、リアクオーターパネル、ルーフはトッポBJと共通。オリジナルなのは、フロントフェンダーと前後のバンパーぐらい。
外板部品の大半は他車からの流用がきくため、長く乗る人にはリサイクルパーツが探しやすく、そのぶん節約にもつながる。
あまり互換性率を高めると技術の進化が緩くなるし、だからといってその都度オリジナルにこだわると地球環境にマイナスになる。互換性とリサイクル性の相関関係を考えるうえでとてもいいクルマなのである。
10月1日デビューするパジェロディーゼルに一足先に試乗した。
1800バールの高圧噴射システムコモンレール(デンソー製)に酸化触媒、DPF(ディーゼル・パテュキュラー・フィルター)、NOXとラップ触媒の3つの後処理装置で、新長期規制をクリア。ディーゼル嫌いの石原都知事に文句を言わせない排ガス性能だ。
ディーゼル乗用車は、かつて≪うるさい・臭い・のろい≫と悪態をつかれていた存在だったが、新世代のディーゼルはすでに欧州では半数以上を占めることからわかるように大人気。テールパイプに鼻を突き出しても臭わないし、振動もガソリンとほぼ同じ。それで燃料代がガソリン車の7掛け前後。
走ってみるとたしかに前世代のパジェロディーゼルとは隔世の感がある。後席にいるぶんにはまったくディーゼル車とは気づかないほど。運転席にいると、加速時の燃焼音が≪これはやっぱりディーゼル車だ!≫と気づくくらい。ガソリン車の場合籠もり音として聞こえる音がディーゼルでは高周波音となるので、つらいところだ。
パジェロディーゼルは3.2リッターの直列4気筒エンジンで、IHI製のVG(バリアブル・ジオメトリー)ターボで動力性能は文句ない。ロングボディ3グレードのみディーゼル仕様で、価格は346万5000円台から。
「EV車ならライバルの自動車メーカーであるトヨタやホンダに負けないほど業界をリードする自信があります」
というのは現場に居合わせた日産の役員の気持ちのようだ。
08年の夏。横須賀にあるテストコースで、次世代型車両を試乗することができた。
次世代とは燃料電池車であり、ハイブリッド車であり、電気自動車だ。うち燃料電池車は発売のめどが立たず、庶民がマイカーとして視野に入れるにはずっと先。EV車とハイブリッド車は、2年後の2010年には市販すると明言するだけに、つぎ僕たちが手に入れるクルマとして大注目だ。
ハイブリッド車は、FRのスカイラインのボディにシステムを搭載したものを試乗した。エンジンとトランスミッションの間にジェネレーターを挿入したタイプで、既存の部品を最大限使え、価格を抑えることができそうなところがアドバンテージ。だが、乗ってみると試作車ゆえか、ノイズと振動が多くあまりいい印象ではなかった。
これに反してEVのほうはガゼン好印象。
キューブのボディに80Kwの新開発のモーターを載せインバーターシステムとの相性も良いらしく、力強い加速で、ぐいぐい走ってくれた。電池は、ラミネートタイプのリチウムイオン電池だ。制御次第で、低速よし、高速よしのドライバビリティが得られるという。ユニットによる室内空間の犠牲がやや課題だが、完成度は高かった。2年後の専用デザインボディによる発売が期待できる。さらに2014年にはこのEV,世界戦略車両としてグローバルに登場するという。
リッター200円時代がごく身近に感じられる昨今、燃費のいい究極の環境エンジン車の開発が待たれる。モーターアシストのハイブリッドカー、燃料電池車、はたまた電気自動車と、いまのところ21世紀を制する環境車として3つが有力候補だが、知られざるダークホースが存在する。
HCCI(ホモジニアス・チャージ・コンプレッション・イグニッション:予混合圧縮着火)である。簡単にいえばガソリンエンジンなのにディーゼルエンジンのようにスパークプラグではなく、圧縮による着火で作動する4ストロークエンジン。
このHCCIエンジン、完成すれば燃費で40%アップ、CO2の排出量も30%レスという≪夢のエンジン≫。全世界の自動車メーカーが現在真剣に取り組んでいる新エンジン・システム。
この新エンジン、どこが課題かというと、アイドリングプラス~中負荷までしか今のところエンジンとして働かない。
その原因は、通常のガソリンエンジンに比べ着火時間が約200倍の2000μsec(マイクロ・セコンド)と劇的に長い点。その長い時間にC,H,N,Oなどが絡んだ2000以上もの化学反応が燃焼室内で起きるので、まずその解析を行う必要があるというわけ。この一回の燃焼計算の解析に従来なら約2ヵ月間かかったところ、日産は3次元シミュレーションを使った高度なモデリング技術で3日間でできるようになったという。日産のエンジニアの見通しとしては「約7年後に実用化ができそうだ」とのことだった。その7年後のクルマ社会の変化は未知数。
10月31日からスタートする世界ラリー選手権WRC第14戦ラリージャパン。今年で5回目だが、昨年まで十勝を中心にしていたのが、今年はより注目度の高い札幌を起点とする。プロ野球やサッカーのJリーグでおなじみの札幌ドームも舞台の一つとなるのだ。
このWRCに「三菱自動車ディーラーチーム」が3年ぶりに参戦する。マシンは戦闘力の高いランサーエボリューションⅩ。
このマシンを整備するメカニック選考会が、このほど伊豆のモビリティパークで開かれた。全国から選りすぐりの21名のディーラーメカニックが、赤いつなぎで3日間腕を競い、うち5名が栄えあるラリーメカニックとして表舞台に立つ。いわば、≪メカニックの甲子園≫である。炎天下のなか100メートル走からはじまり、腕立て伏せ、サービスカーの車庫入れ、トラブルシューティング審査、リアデフとフロントサスペンの脱着競技など審査内容もバラエティに富む。体力、気力、知性、機敏性、チームワーク、リーダーシップなどあらゆる≪人間力≫が審査される。
最終日には、爆走してきたランエボⅩを4名で、下回りチェック、ブレーキパッド交換、車体清掃などをわずか20分で行う。埃の舞う炎天下、ガレージジャッキで車体を持ち上げ、ウマでリフトアップという作業。普段の仕事とはかなり趣が異なる。選手のつなぎは汗みどろ。ブレーキパッドは200℃前後となり、素手ではつかめない…。軍手もしくはウエスでつかむも、限られた時間内、バタバタ状態となりがち。でも、何度もやるうちに選手の何人かは、飛躍的に腕を上げていくのだ。
クルマは発進時や急坂を登るときは大きな駆動力を必要とし、高速走行時にはそれほどの駆動力は要らないが、ホイールを高回転させる必要がある・・・トランスミッション(TM)はギアの噛み合い(変速比)を変えることで、エンジン出力をクルマの走行状態に応じた駆動力と回転数にしてホイールに伝える役目。
TMの歴史は、マニュアル・トランスミッションからスタートし、ATに、さらにCVTがそこに割って入るという流れ。ところがそのTM戦国時代に新しい勢力メカニズムが登場した。
ツインクラッチというのがそれ。ツインクラッチというのは、欧州で10数年前から登場した電子制御マニュアルTMから進化したもので、電子制御化された2組の多板クラッチ(これには湿式と乾式の2タイプあり)にそれぞれ奇数(1,3,5速)軸と偶数(2,4,6速)軸を担当させて交互に使う。次に使うギアを予測して準備しておきクラッチを瞬時に切り替えることで、トルク抜けのない高効率な変速とマニュアル・トランスミッションと同等の低燃費を実現。
ランエボⅩ、ポルシェ、GT-Rなど比較的高価なスポーツカーに登場しているこのツインクラッチ、つい最近「ギャラン・フォルテス・ラリーアーと」にも搭載された。2リッターのインタークーラーターボにフルタイム4WD、そこにツインクラッチが付いたいわば鬼に金棒的で日常使用OK。スポーツ走行が楽しめる300万円を下回る値段のセダン。ミニバンやSUVに飽きた読者には、最高のクルマだと思う。
死亡事故数は年間5000人前後と減少してはいるが、交通事故による負傷者数は年間100万人以上。人口1億人として100人に一人の割合。ということは10年単位でいえば10人に1名の割り・・・と考えると空恐ろしい。
なかでも、トラック・バスが関係する交通事故は、死亡事故など重大事故となるケースが、乗用車の2倍といわれる。こうした背景からか、三菱ふそうが安全を優先したコンセプトカー≪セーフティ・トラック≫を開発した。大型トラックの「スーパーグレード」(車両総重量:トラクター16.8トン+トレーラー25.95トン)をベースにしたもの。
このセーフティ・トラックは、乗用車のものより進んでいると自負する運転注意力モニター「MDAS(エムダス)-Ⅲ」を備え、近々商品化する予定の衝突被害軽減ブレーキ(AMB)と車両挙動安定装置(ESP)を組み込んでいる。
ハブなどの設計不良で社会問題となり長い低迷時代を潜り抜けた三菱ふそうの、安全に対するココロザシがにじむコンセプトカーと読み解くこともできる。交通安全などのツールとして全国で活躍するという。
なお、衝突被害軽減ブレーキは、前方車両との距離をミリ波レーダーで監視するタイプ。スバルのCCDカメラ方式とは手法が異なるものの、障害物の手前で自動的に制動がかかることは共通。欧州では、完全に車両を障害物手前で停める設定だが、日本では軽くぶつかる設定となる。せっかくエンジニアが努力して≪ ぶつからないクルマ≫を作り上げたのに、それに水をさすのはおかしい。国土交通省の指導でのこの設定、「何か変だぞ! 日本の行政」のひとつとして加わった!?
CO2の発生が少なく燃費のいいクルマとして、ディーゼル乗用車は欧州ではモテモテ。半数以上がディーゼル乗用車。フランスなどは7割までもディーゼル車が占めているほど。
ススの入ったペットボトルを振りかざす石原都知事のパフォーマンスで、すっかりディーゼル乗用車に関心を失った感のあるジャパニーズ市場。今年9月にクリーンディーゼルという触れ込みで日産がディーゼル車を発売する。エクストレール・ディーゼルがそれで、09年10月から施行される排ガス規制「ポスト新長期規制」にいち早く対応するという。
実はこのディーゼルエンジン(排気量2リッターで可変ノズルターボ付き・1600バールのコモンレール式)は、ルノーとの共同開発ユニットで、エンジン型式名はルノー式のM9R。すでに昨年追浜のテストコースで欧州仕様に試乗、静粛性と高いドライバビリティを確認している。後席に乗っているぶんには、まったくディーゼル車であることを忘れさせてくれるほど、エンジン音が抑え込まれている。
トヨタもホンダもすでにヨーロッパでは自社製ディーゼルエンジンを載せた車両を販売しているので、来年には日本市場に投入する模様。スバルの世界初水平対向ディーゼル車もスタンバイしている。ガソリン200円時代の到来を踏まえ、来年から再来年は電気自動車、ハイブリッドカー、それに新世代のディーゼル乗用車が目白押しになる模様。
ところが先陣を切るエクストレール・ディーゼルは、マニュアル車だという。MT車は日本ではわずか5%に過ぎない。日産はどうもこのクルマを本気で売る気はないのかもしれない。
植物自動車、といっても最近“環境VS食料”という対立軸で語られ、エネルギーの高騰をめぐり物議を醸しているバイオ燃料のことではない。
COMS-BP(コムス・バイオプラスチック)のことである。
一人乗り電気自動車≪コムス≫をご存知だろうか? 12V-28Ahの鉛蓄電池を備え、車重290㎏,1充電で約35km,最高速度50㎞/hという性能で、トヨタ店やカローラ店に行けば70万円台で手に入る。
そのコムスの車体をほとんどすべて植物由来のプラスチック製にしたのがこのプロトモデル。先日横浜のみなとみらいで行われた「人とくるまのテクノロジー展2008」に展示された。
半年で高さ3~4メートルにも生長するケナフ。そのケナフの表皮は強い繊維質でポピュラーだが、従来廃材としていた茎からリグニン樹脂という接着剤を取り出したところがポイント。このリグニン樹脂は耐熱温度150℃と高く、しかも成型時の製品性を左右する寸法安定性に優れている。このリグニンに繊維が細く強靭として知られるマオの繊維をフェルト状にし、含浸させ、熱プレスにかけ成型。
こうしてできたのがリグニン/マオ ボードと呼ばれる素材。この植物由来樹脂でこのクルマのボディの大半をつくったという。カーボンニュートラルで、通常の石油由来のABS樹脂などに比べ10%軽量だという。内装材はすでに量販車の一部に採用されているので、近い将来、植物系のボディと内装を持ったクルマも夢でない!? 課題は強度とコスト。開発したトヨタ車体では、“植物自動車”の実用化を目指しさらに研究中だという。
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