“荷物がたんと積める!”でおなじみのダイハツ・タントがフルモデルチェンジした。初代タントの広さにも驚かされたものだが、今回のタントは、軽自動車最大の室内長2160ミリと室内幅1350ミリ、それに室内高1355ミリを持ち、小学生3~4年生ぐらいまでなら立ったままで着替えや後席サイドウォークスルーができちゃう。
使い勝手のよさは、なんといっても助手席側のセンターピラーがないことだ。
じゃ、厳しい側面衝突事故をクリアできないじゃない! と思いきや、助手席ドアとスライドドアにリインフォースメント(強化部材)を組み込み、側面衝突時の安全性をクリアしている。これって、言葉にすると簡単だけどボディ設計者の相当の苦心があったはず。
いまどきのクルマらしく、もちろんパワースライドドアで、開け閉めでき、開閉時にドアに一定以上の力が加わると自動的にドアが反転して挟み込みを防いでくれる。助手席ドアを開け、スライドドアを後ろに開いた状態で、1480ミリもの開口幅を出現する。多彩なシートアレンジ、数多くの収納スペース、リバース連動リアワイパーとリバースに入れると自動で下向きになるドアミラーなど使い勝手もかなり高い。
このタント、とにかく子育ておかあさんと子供の意見をうんと取り入れたクルマだということだ。気になる燃費はNAエンジンとCVTの組み合わせで、20.5km/lと上々だ。価格は108万円台から。
眼前に現れたのは直径7.1メートル、高さ4.5メートルのドーム。そのなかに入ると赤いLS460が鎮座している。よく見るとタイヤの替わりにアキュムレーターという機械が取り付けられ、頭上には8台のプロジェクター(映写機)があり、360度の球面スクリーンには御殿場の市街地が映し出されている。
乗車してクルマをスタートさせると球面スクリーンが動き、あたかもクルマが動いているのとまったく同じ感覚となる。このドームは縦35メートル、横20メートルの範囲で動き、ドーム自体も最大25度傾くことができる。精密なコンピューター制御で、ターンテーブル、傾斜装置、振動装置などが作動し、速度感、加減速感、乗り心地を忠実に模擬。
当初、ゲームセンターの機械に毛が生えた程度と思っていたところ、あまりのリアルさに軽い車酔いがともない、バーチャル世界の完成度に度肝を抜かされた。
実はこの機械とほぼ同じものがアメリカのアイオア州の大学に設置されて居眠り運転状態や酔っ払い運転状態などの運転特性を科学的に分析し、予防安全技術の開発につなげている。実車での走行では危険がともなう実験や特定の条件化で自動車を走行させる実験に威力を発揮する。ただ、酒を飲んでの運転もこのドームに入るとき、酔いが冷めるということもあり、リアルな酔っ払いドライバーをどう養成(?)するかが課題だという。
トヨタは、この実験システムを4年半の歳月を使い完成させ、来年春から本格的に実験に入るという。
≪ふだんは燃費を考えたジェントルな運転特性≫でも、急を要するとき、たちどころに≪ロケットの如し驚くべき加速で、あっという間に横にいたクルマを置いてきぼりにしてしまう!≫ かつて銀幕に登場した007のジェームス・ボンドが操るスーパーカー(ボンドカー)にそんな”夢のクルマ”が登場したものだ。
インプレッサWRX STI(写真:365万4000円)はまさにそのボンドカーをホーフツとさせるクルマだった。
「SI-ドライブ(SIは、スバル・インテリジェントの略)」と呼ばれる機構がこの夢の特性を具現化している。センターコンソールにあるパネルのツマミをS(スポーツ)、S♯、I(インテリジェント)にあわせると自由自在にエンジン特性を変化させるのである。Iは文字通り燃費重視のおとなしい走りを希望するとき、Sシャープがロケット走行を希望するときで、Sはその中間、つまりワインディングを楽しむときなどである。
エンジン特性を変えるとは、具体的に何を変化させるのか?
点火時期、ターボチャージャーの過給圧、それにバルブタイミング&リフト量可変機構。この3つをエンジンコンピューター上で変化させる。こうした夢の走りができた裏には、電子スロットルと呼ばれる従来の機械式なアクセル機構ではなく電気的にアクセルを制御するメカが組み込まれたからである。
このコントロール手法は、走りを楽しむクルマにも使えるが、実は超燃費重視のセッティングにもつくりこむことができる。つまり今後のクルマの柱のメカニズムになると思われる。
ケナフ(Kenaf)という植物をご存知だろうか?
アオイ科の1年草で、生長が早くあっという間に4メ-トル近くとなる植物。このケナフを使ったバイオ繊維がクルマに登場し始めている。植物はCO2を吸収するので、結果としてバイオ繊維を使えばCO2の発生を抑えられ、地球温室効果ガス低減につながる。
ラウムのバイオ製スペアタイヤカバーをつくっているトヨタ紡織もそうした企業のひとつ。東京モーターショーで登場したのは、射出成形によるバイオプラスチック。射出成形によるバイオ樹脂成形は世界初だという。ドアトリム(写真、背景はケナフ)である。ドアトリムはスペアタイヤカバーの耐熱要求温度60℃より50℃高い110℃。夏の車内を想定すればそのくらいの温度に耐える必要がある。そこで、ケナフとポロ乳酸(PLA)でつくるのだが、従来はせいぜいケナフが30%前後にとどまっていたのを、2倍の60%まで増量できたという。
耐熱性の向上のポイントは、ある温度条件下での加工によるPLAの結晶化がキー技術。現在PLAの価格が高いので安いケナフの使用率が高まるほどコストダウンにもつながる。従来のプレス成形に比べ射出成形は歩留まりが高く、その面でもコスト上有利。それでも通常の部品よりも5割り増しとなるようだ。
一方マツダでも、トウモロコシをベースにしてつくった樹脂をショーでお披露目した。シート表皮、シフトゲート、インパネの一部、フロントコンソールなど耐衝撃性の高い部位に使えることを実証。水素ローターリーエンジンとモーターによるハイブリッド車に採用、このクルマを来年中に企業・官公庁向けにリース販売するという。
バイオの樹脂は、今後ふつうのクルマに使われる動きが活発化し始める。
「よそ見をしていて前方不注意で、事故ってしまった」あるいは「カーオーディオをいじっていて気がついたら、前のクルマにお釜をほってしまった!」
重大な人身事故に至らないまでもクルマの事故はあとをたたない。そこで≪絶対に事故を起こさないクルマ≫は人類の夢だ。その夢が現実のものになろうとしている。
スバルが次世代型ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)を開発し、来年発売予定のレガシーに搭載する。
新世代ADAというのは新型高性能ステレオカメラと3D(3次元)の画像処理エンジンを用いることで、プリクラッシュセーフティ・システムを実現。レーダーを使わずにシンプルな機構でまとめ上げたスバルの技術陣に拍手である。
従来から開発されていたフラツキ警報や車線逸脱警報といった予防安全機能を組み合わせることで高度な事故回避支援性能実現に至っている。市街地走行時の事故回避と駐車時のペダル踏み間違いによる事故回避も盛り込まれている。あわせて時速ゼロから時速100キロまでのクルーズコントロール付き。これで装備価格が約20万円だという。
市街地での死亡事故の大多数は、65歳以上のいわゆる交通弱者と呼ばれる人たちだという。こうした安全装置の普及で、悲惨な死亡事故を激減できる日も間近だ。となると、軽自動車やコンパクトカーに装着できる価格、つまりABSやカーナビ並みに価格を10万円台にするのが今後の課題だ。
「働くクルマ」といえばトラックとバスをイメージするが、ダンプカーも立派な働くクルマである。
そのダンプカーの近未来バージョンが、今回の東京モーターショーでお披露目になる。
三菱ふそうの「キャンターECO-D」がそれで、リチウムイオン電池を使ったキャンターハイブリッド・トラックのプラットフォームを流用した未来型の都市型ダンプカー。全長5500ミリ×全巾2000ミリ×全高2500ミリ、ホイールベース3350ミリ。最大積載量3トン。
働くクルマのサイドパネルは通常平パネル構成で,乗用車のような3次元の曲線を描いていない。ところが,このダンプカーは、まるで乗用車の感覚でエクステリアを作り出した感じ。威圧感を感じさせない全体のデザインは革命的!? ちなみにボディはFRP製だが、将来はカーボンファイバーで作りたいと担当したデザイナーの夢は広がる。
ホイールアーチは、タイヤとの隙間を詰め、タイヤが巻き上げる小石などを極力撒き散らさない形状。青色のサイドイルミネーションで夜間の被視認性を高める。ベッセル(積載部)の上げ下げは、通常のダンプではエンジンをかけておこなう。そのため、少なからず近所迷惑なのだが、このダンプカーは、ハイブリッドの強みでモーターで油圧を介しリフトアップ&ダウンができ、とてもサイレント。しかもハイブリッドなので、燃費は2割り増しで向上している。
この手法はダンプカーのみならず、ミキサー車、塵芥車にも応用がきく。コストなどのハードルはあるが、こうしたクルマが登場する社会がくることを期待したいね。
このところ、従来のATに替わりCVTが多数派を占めつつある。
変速ショックが少なく、理想的なパワーバンドを保つことができるなどCVTは、1980年代に小排気量の乗用車で登場。当初は油圧制御だったため燃費向上の切り札とはなることはなく、新しいユニットゆえのトラブルも少なくなかった。そのご機械的な進化と電子制御が加わり、排気量2.2リッタークラスまで登場しつつある。金属ベルト式のCVTがデビューしてまだ40年ほどにしてはかなりの進化具合である。
2002年にATメーカーのアイシンAWとボッシュがCVTEC(シーブイテック)社を設立、06年にボッシュが合弁を解消し、代わってトヨタがアイシンAWと再スタートし、現在すでに100万台以上のCVTを世に送り出している。
最新のヴィッツのCVTもこの企業がつくったもので、4速ATと同等の搭載性と59kg、全長347.5ミリと軽量コンパクト。燃費向上率はなんと7.1%だという。
エンジニアに聞くと、このCVTの自慢は耐久性だ。従来のATのように摩擦材が走行6万キロあたりで黒くなったり摩耗したりせず、フルード交換は10万キロまで大丈夫だという。
今後の課題は、安全マージンを考えた油圧を可変化し、必要最低限の油圧制御をおこない燃費を高めることだという。つまり可変ルブリケーション化ということらしい。
いまさら声高に言うのも変だが、マスプロダクションは少数派の声を結果的に無視したり、どちらかに片寄る力が強く働く。ここ10年~15年の乗用車の世界がまさにそれだ。右を向いてもミニバン、左を向いてもミニバン、軽自動車から3ナンバーまでミニバンのオンパレード。荷物や乗員が多く載せられるポテンシャルの高さは認めるが、クルマを操る喜びは二の次三の次だった。セダンは長く氷河時代を迎えていた。
そんななか、三菱自動車がセダンの代名詞ともいうべき「ギャラン」を蘇らせ、『ギャラン・フォルティス』(フォルティスはラテン語で勇敢、勇壮の意)の名前で登場させた。三菱がセダンを国内投入するのはなんと7年ぶりだという。
エンジン排気量2リッターでトランスミッションをCVTにすることで10・15モード13.6㎞/l。エクステリアがどこか懐かしくて新鮮味を帯びる。三菱伝統の逆スラントノーズと、台形グリルと呼ばれるフロントグリルデザイン。
顧客ターゲットも、ズバリ40代から60代の男性だという。若者向け商品が氾濫するなか、どこか気合が入ったクルマが久々に登場したという感じだ。5速マニュアル車もスタンバイしている。
≪グローバル基準のスポーティセダン≫というキャッチフレーズのこの新型ギャラン、価格は178万円台から240万円台と比較的リーズナブル。ふたたびセダンが盛り返す時代が来る予感がする。
歩行者とクルマがからむ事故があとをたたない。
無防備な歩行者は自動車の硬い個所にぶつかり、深刻なケガを負うケースが少なくない。
こうした背景で生まれたのが「ポップアップエンジンフード」。ジャガーXKやシロトエンC6など超高級車にはすでに採用しているものだが、今回日産も商品化できたとして、その技術を公開している。8月初旬、横浜の追浜試験場で、この秋デビューするスカイラインクーペに採用されたポップアップエンジンフードの実験をマスコミに披露したのである。
時速35キロで走ってくるスカイラインにダミー人形がぶつかった瞬間の写真がこれである。ちょうど頭部がフード(ボンネット)の根元の堅いところに当たり致命傷を受けた瞬間・・・と思いきやその直前フードが上に持ち上がり、「空間」をつくり、頭部への衝撃が劇的に緩和される・・・。
このポップアップエンジンフードは、フードヒンジ付近に火薬を内蔵したアクチュエーター(作動部)を備え、フロントバンパー内に仕込んだ加速度センサーからの信号でわずか100分の3秒後に、フードが上部に約100ミリ持ち上がる仕掛け。
スポーティなスタイルを実現するためフードを低くしたいが、歩行者保護もしたい・・・そんな相反する機能を解決するハイテクなのである。開発したエンジニアにコストはいくらかと聞いたが、答えがなかった。軽自動車やコンパクトカーに使えるにはまだ先のこと。重量が4~5キロアップするのも悩みの種である。
「余裕の2.2リッター」あるいは「ゆとりの大排気量エンジン」という言葉は今や昔、乗用車エンジンのトレンドはいまやダウンサイジングである。
9月から発売予定のゴルフのスポーツワゴン「ゴルフバリアント」の主要エンジンが1.4リッターで10・15モード燃費が14.0リッターというところがウリ。スーパーチャージャー+ターボ付きエンジンとしては燃費がいいのはエンジン排気量が小さいから。≪小排気量ながら高効率なエンジンとそこそこの大きさのボディとの組み合わせ≫というのが、このところのトレンドとなりつつある。
先日フルモデルチェンジしたマツダのデミオもその流れと見て取れる。
ハイテンションスチール(高張力鋼板)をボディ全体の60%も採用し、サスペンション各部を軽量化。実に旧デミオよりも100kgも軽く仕上げている。しかも主要エンジンの1300には≪ミラーサイクルエンジン≫を採用。これは、膨張比を大きくするために吸気バルブが閉じるタイミングを遅くし、熱効率を高めた燃費重視型エンジン。アイシンAW製のすぐれたCVTとの組み合わせで、商品化できたという。10・15モード燃費はクラストップのリッターあたり23kmだ。ライバル・ヴィッツを打ち落とす勢いだ。価格は112万5000円から。
ただし、エンジン開発者に話を聞くと・・・このエンジンはトルクがダウンするため、アルミ製ブロックとスチール製クランクシャフトの熱膨張差によって、旭川あたりの厳冬地での始動性に難が生じたという。そこで、スターターの容量を1.0KWから1.4KWにアップし、クランクシャフトのメタルクリアランス(間隙)をミクロン単位で少し大きくしているという。
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