元アメリカ大統領候補アル・ゴアの指摘(映画「不都合な真実」)を受けるまでもなく、CO2の排出による地球温暖化は差し迫った問題。93年後の2100年には最大6℃の地球温度が上昇し、洪水・干ばつ・海面上昇が引き起こり人類破滅へのシナリオ。化石燃料であるガソリンや軽油の消費を減らし、バイオ、つまり植物由来のエネルギーを使う必要が出てきた。バイオ燃料を燃やしてもそのとき発生するCO2はもともと大気中のCO2を植物が生育時に吸収したもので、大気中のCO2の増加にはならない。そこで、日本でも今年4月から関東圏を中心に約50店舗のガソリンスタンドでバイオ燃料を販売する。この添加バイオ燃料はETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)を重量比7%レギュラーガソリンに混ぜたもので性能自体は通常のレギュラーとほとんど変わりないという。08年には100ヶ所程度に、さらに09年度には1000ヶ所に拡大するという。少し話はややこしいが、このETBEというのはブラジルなどで大々的に使われているサトウキビからつくられたエタノール(エチルアルコール)にイソブテンという石油由来の成分を混ぜ、エタノールが持つデメリット(水の混入問題など)をクリアしているという。まだ日本では実用化はされていないが、軽油に添加するバイオ燃料の実用化ももうすぐだ。マーガリンなど食料として使われるパーム油をベースに石油会社がより使いやすいカタチで水素化をおこない、バイオ軽油として登場する見込み。この軽油、エステル化でつくるバイオ軽油に比べより完成度が高く、いわゆる第2世代のバイオ軽油と呼んでいる。
軽くてコストが安くつくことが多い樹脂は、最近のクルマにはどんどん採用されている。外装部品ではPP(ポリプロピレン)製のバンパーカウルがごく一般化している。エンジンまわりではインテークマニホールドやヘッドカバーなどがすでに樹脂製品が少なくない。軽自動車のリアゲートのなかには樹脂製というタイプもある。
このほどフロントフェンダーに樹脂を使ったニューモデルが登場した。三菱「デリカD:5」がそれ。D:5はディー・ファイブと発音するのだが、デリカ歴代第5回目のフルチェンジの意味と、新生三菱が発売する第5番目のニューモデル、この2つの意味があるという。
樹脂製フロントフェンダーは、PA(ポリアミド)つまりナイロンにPPE(ポリフェニレンエーテル)を混ぜ合わせつくり上げたもので、柔軟性と復元性に富んでいる。そのためスーパーのカートがぶつかった程度の小さな衝撃ではへこみもしないし塗膜が剥がれるということはないという。これはとくに初心者ドライバーにはありがたい。通常の板金製(スチール)のフェンダーにくらべ重量が約2kgも軽く、およそ1/2になったという。クルマ1台分で約4kgも軽くなり、しかもコストもスチールとさほど変わらないという。加えてバンパーブラケットなどが一体で作ることができ部品点数が減り組み付け性も二重丸だという。
モノゴトなんでもそうだが、すべての面で具合がいいことはあまりないものだ。この樹脂製フェンダーもエンジニアに聞くと、樹脂が伸縮するため、寸法をきちんと整えるために成形法に苦心をしているし、建て付けの面でも開発と生産の部門で何度も協議し完成にまでこぎつけることができたという。
この樹脂フェンダーをデリカD:5のすべての車種で採用している。ちなみにデリカD:5は、今年のダカールラリーで優勝した三菱チームをサポートして約7000キロを走破している。このエンジンは2.4リッターのMIVEC(可変吸気システムのこと)付きのDOHC16バルブエンジンが載り、全車に電子制御の4WDを搭載している。価格は、260万円台から。
クルマの世界にもいつの間にか「ダウンサイジング」という流行言葉が使われはじめている。少し前までマークⅡやスカイラインに乗っていたおじさんが、コンパクトカーや軽自動車に乗り換える。このことを指してダウンサイジングというのである。生活レベルを落とす、というのは少し嫌な感じなので、この場合「身の丈(たけ)にあったクルマに乗り換える」という意味で使われている。昨年の軽自動車の販売数が200万台を超えたのはそうした風潮の証拠!? ところが一度贅沢を知ったひとはプアな暮らし向きに戻るのはやはりシンドイ。 この微妙な心理を突いてきたのが、このほどデビューしたトヨタの「ブレイド(BLADE)」。ブレイドの語源は、英語の刃(やいば)のことで、人を魅了する鋭さをもったクルマ、という意味を込めている。 ターゲットユーザーは、子離れした団塊の世代。プラットフォームは06年10月登場したオーリスと共通。フード、ルーフ、それに4枚のドアもオーリスの部品を流用している。そのせいか、エクステリア全体の印象は、最近の2ボックス車のトレンドから脱皮しない、見方によっては没個性的ともいえる。 だが、リアサスをリジッドのトーションビームから、独立のダブルウッシュボーンに換え、エンジンも1.8リッターから2.4リッター(2AZ-FE型)。2ボックスの上質感溢れるクルマで、VWゴルフの対抗馬的存在。サイドエアバック、カーテンシールドエアバックが標準装備。そのわりには価格は220万円台から。試乗してみるとノイズとバイブレーションをうまく抑えこみ、パワフルな走りで感動を与える。悔しいけどトヨタのクルマづくりに脱帽である。お買い得感高し。気になる10・15モード燃費は13.4㎞/l。
いまやクルマの排出ガス性能はゼロエミッション化に向けて、至上命令だ。
クリーンな排ガスを得られるためなくてはならない貴金属触媒。白金、ロジウム、パラジウムの貴金属の微粒子表面で化学反応が進む。
粒子が細かければ細かいほど排ガスに触れる面積が増え、効果がアップするが、エンジンから出る1000℃に近い超高温で、貴金属は隣り合う微粒子とくっつきながら大型化してしまう。走行キロ数が長くなると触媒が徐々に低下するのはこうした理由。そこで、この低下分をあらかじめ想定して貴金属を増量しているのは普通のクルマの触媒。貴金属分はある程度リサイクルされてはいるが、このままでは限られた貴金属資源の枯渇化が進む!?
ダイハツの軽自動車で展開する触媒技術はこの難問に対するソリューションだ。スーパーインテリジェント触媒がそれで、ナノテクノロジーにより貴金属を微粒化よりもさらに小さなイオンとして電子レベルでセラミックの結晶のなかに配置。貴金属のイオンが排ガス成分の周期的な変化と連動して、まるで知能を持つかのようにセラミックの結晶への出入りを繰り返し、大粒化を避ける。この自己再生機能によりいつまでも触媒としての性能を維持するとともに貴重な資源である白金、ロジウム、パラジウムの3種類すべての貴金属使用量を大幅(約1/3)にダウンさせることができたのが、このダイハツのインテリジェント触媒なのだ。
この技術は兵庫県にある大型放射光施設「スプリングエイト」で培ったもの。発案の中心人物は48歳のインド放浪の経験の持ち主であるダイハツ材料研究担当・田中裕久さん・・・なにかとエピソードの多い技術だ。すでにソニカやこのほどデビューした新型ミラにも採用されている。英国の科学雑誌「Nature」(02年7月11日号)でも紹介され、今後の自動車用触媒のグローバルスタンダードになると思われる。
ふつう『クルマ』というと乗用車のことをさすのだが、経済の屋台骨を支えているのは働くクルマであるトラックだ。ここ昭和メタルにも大型キャリアカーをはじめとする20台近くのトラックが活躍している。
小型トラックの代名詞的存在のいすゞのトラック『エルフ』。TVCMで「ど~こ~までも、どこうまでも~、走れ走れいすゞのトラック~」でおなじみのトラック。
そのエルフがこのほど6代目がデビューした。エルフの初代は1959年というから半世紀近く続く、累計生産が500万台とベストセラー。乗用車なら4~5年に一度の全面改良だが、エルフは13年ぶりゆえ、メーカーの意気込みがすごかった。
発表会場も、ふだん「自動車技術展」などをおこなう横浜の“みなとみらい”にあるイベント会場だった。キャブ(キャビンのこと)のバリエーションは用途にあわせ標準キャブ、1.8メートルのハイキャブ、それにワイドキャブの3タイプ。
個人的に一番関心のあるのはエンジンだ。インタークーラーターボ4バルブDOHCエンジン3000CC。可変容量型のターボと大容量クールドEGRで低速トルク向上、低燃費、PM(粒子物質)の低減を図っている。車外騒音も2デシベルほどダウンしている。注目すべきは、小型トラックで初のアイドルストップ&スタートシステムを組み込み、排ガスと騒音の低減、燃費向上にも貢献している。目標寿命200万キロのディーゼルエンジンゆえ、今回鋳鉄シリンダーブロックの上部、つまりピストンが上下するところに高周波焼入れをおこない耐摩耗性を高めふつうにメンテナンスすればボーリングの必要がないという。
ところで気になる価格はどのくらい?
270万円~450万円。お金を稼ぐトラックのお値段としては意外と安いのかもしれないね。
ロボット化するクルマ、といってもあまりピンとこないかも知れない。
「知能化するクルマ」と言い換えたほうが分かりやすいかもしれない。すでにいま販売している大部分のクルマは「電子制御スロットル」なる装置を付けている。エンジンに入る空気量を調節しエンジンパワーを調節するのはドライバーの右足で踏み込むアクセルペダルだけだと思いきや、実はコンピューターが制御してスロットルバルブをコントロールしているのである。ドライバーの右足の踏み込み量を参考に燃費、排ガスなどを勘案したうえで最良のスロットル開度を決めているのである。
操舵系、つまりステアリングにもこれと同じメカトロニクス的装置が登場した。イチローと渡辺謙を起用したTVコマーシャルでおなじみの新型スカイライン(排気量2500㏄と3500㏄の2本立てで、270万円台から最高380万円台)に採用された「4輪アクティブステア(4WAS)」がそれ。
4WASは、ハンドル操作に対する前後のタイヤの切れ角を車速に応じて調整し、極低速では少ないステアリング操作で前輪が大きく切れ車庫入れしやすく、時速40~80キロでの市街地や幹線道路走行でも小さなステアリング操作で前輪が大きく切れ、さらに後輪が同じ方向に切れるため安定して思った方向にキビキビ曲がれる。時速80キロ以上の高速走行ではハンドル操作に対する前輪の切れ角が抑えられ,さらに後輪も前輪と同じ方向に切れるためレーンチェンジ等で車体がぶれることなく、安定した走りができる・・・というものだ。
つまり街中やワインディングではキビキビ走れ、運転しやすく、なんだか運転が一段上手くなった感じになるのが狙い。クルマは今後、こうしていくつかの小さなロボット要素が付け加わり、ドライバーの支援をする。いつも鉄腕アトムのような善良なロボットでいてくれるといいのだが・・・・。
いきなりですが、ここで質問です。かなりの難問だ。
「クルマの神経系統、あるいは血管と呼ばれている部品は何ですか?」
答えはワイヤーハーネス。
“自動車用の組み電線”と呼ばれるもので、ワイヤーは電線の意味、ハーネスは馬車の引き具のことを指し、クルマの電線がこれと似ているところから命名されている。電気の供給や電子部品間の伝達など重要な役割をにない、隣接した回路への電磁気的なリーク防止、電気ショートの排除などの機能が求められる進化するクルマのエレクトロニクスを支える基本要素だ。
クルマ1台分のワイヤーハーネスは平均で1.5~2キロにおよび、重量は40~50kg(ヒューズボックスからコネクターなど全部を含むのでこんなに重くなる!)とされる。
このワイヤーハーネスの素材(被覆)はこれまで低コストな塩化ビニールだったが、塩ビは燃やすことで有毒ガスのダイオキシンを発生することから代替物が求められている。つまりハロゲンフリー化(ハロゲン:塩素のこと)である。ちなみに電気が流れる導体は銅だ。
ハロゲンフリーのワイヤーハーネスの主役に躍り出つつあるのがPPO(ポリフェニレン・オキサイド)という樹脂。この新素材の被覆は、塩ビコードのような金属水酸化難燃材を使わなくてもいいので、軽量化かつ薄肉化ができ、従来の電線より重量で26%減、断面積も44%もダウン。耐熱性もいまのところ120℃前後はOKで、今後の研究でエンジンルーム内でも使えるように180℃を目指すという。ところが至れり尽くせりのいいことづくめ、と思いきや、PPOを素材にしたワイヤーハーネスは今のところコストが2倍近い。
クルマには縁の下の力持ち的な部品は数多い。ワイヤーハーネスもその代表選手だが、超地味な部品にもこんな物語があるのですね。
(写真左がハロゲンフリーハーネス。右が従来品。いずれもインパネ下部のワイヤーハーネス)
「軽自動車買うならターボ付きエンジンに限る。NA(自然吸気)エンジン車はアクセル開けれどクルマは前に進まないから・・・」
そんな常識を覆すクルマが登場した。ダイハツの新型ムーヴがそれ。
新型ムーヴは、すでにテレビCMで見慣れているのでそのスタイルはイメージできるかもしれないが、実は中身にも驚きが多い。車体を新規に作り直すことで、ホイールベース(前輪と後輪との距離のこと)を軽最大級の2490ミリにし、これまた軽最大の2110ミリという長い室内長と1350ミリの室内幅で、軽自動車最大の室内空間を実現。サスペンションのチューニングで、うれしいことに後席の乗り心地も改善されている。
注目すべきは、ロングストロークの新型エンジンKF-VEとダイハツが20年越しで完成した新型CVTとの組み合わせ。リッター23kmの超経済性だけでなく、アクセルペダルを踏めば素直に加速していく動力性能。軽は過給機付きエンジンでないとダメ!という暗黙の了解を見事に裏切る。
ターボエンジンは熱負荷が大きくオイル交換時期も5000キロごと。NAエンジン車より2倍も短い、しかもオイル管理が悪いとエンジンが壊れやすい、というデメリットを抱えていた。メカ通のユーザーからは「NAエンジンでよく走る軽自動車があればいい」そんな声なき声にきちんと答えたクルマだといえる。このクルマはたぶんライバルのスズキもスバルも三菱にも脅威に写るハズ。さらに軽自動車戦争が加熱すること間違いなしだ。長く愛するクルマを熱望しているユーザーには、楽しみだ。
(リッター23kmのムーヴの車両価格はXリミティドで123万9000円)
リコール隠しなどで売り上げ減少であえいでいた三菱がこのところ元気だ。
ミドシップKカーのⅰ(アイ)、新型パジェロなど意欲作をデビューさせるだけでなく、つい最近電気自動車(EV)の展望を発表した。
このEVの車名は「ⅰMⅰEV」(アイ・ミーブ)。ⅰ(アイ)の車体を流用したもので、高性能リチウムイオン電池と小型高効率モーターの組み合わせで4人乗車の魅力に満ちた乗り物に仕上げるという。今年11月から東京電力など電力会社に供与して実証実験をおこない、4年後の2010年に発売にこぎつける。いまのところ、1充電160キロだが、リチウム電池をより高性能化し、1充電200キロを実現するという。
EVというとなんだか古い感じがしないではないが、リチウムイオン電池の飛躍的な発展で、ここ数年でいっきにEVの世界が明るくなったのである。
航続キロ数だけでなく、充電時間の短縮、それにコストなど克服すべき課題は少なくないが、燃費(経済性)は、深夜電気を使えばガソリン車のわずか1/13! CO2の排出は72%減、とウルトラ・エコ車にしてハイブリッド車も真っ青な超好燃費車。ちなみに、充電は家庭用電源のほか、今後コンビニなどで3相交流電気ステーションを作る構想もある。つまりコンビには、21世紀の車社会を変革する!?
気になる価格をエンジニアにズバリ聞くと・・・「200万円を切らないと誰も買ってくれないし、150万円を切ればかなりのひとが関心を持ってくれる・・・」という答え。一番お金がかかるリチウムイオン電池が安くできればクルマも安くなるということ。ということは、他メーカーもがんばってEVをつくれば量産効果で電池の価格がダウンしクルマも安くなる、という論理らしい。
マツダのロードスターに電動式のハードトップが登場した。
ロードスターは初代が1989年にデビューして以来、3代目でオープンカーとしては異例の77万台以上を販売している。比較的低価格のライトウエイトスポーツカーにベンツなど高級車と同様の快適装備の電動式ハードトップがプラス20万円で選択できるということ。
開発者に聞くと、実は3代目の発売である昨年に同時デビューする予定が予想外に手間取り1年遅れの発売になった、いわく付き。通常、ハードトップは収納するとトランクの半分ほどをないがしろにされ、収納容積が縮小するのだが、このロードスターの場合は、キャビンの背後に上手く収めることでトランクルームの容積犠牲はなし。しかも、開閉速度は12秒と世界トップなのである。
このハードトップ、SMC(シート・モールディング・コンパウンド)と呼ばれる樹脂を外側に、PP(ポリプロピレン)にグラスファイバーを混ぜた樹脂を内側に、そのあいだに薄い鉄板で剛性を持たせたもの・・・と言葉で説明するとそれまでだが、この製造にえらく苦心したという。比較的面積の大きな薄い樹脂を2枚張り合わせるモノづくりは、それまで経験していなかったからである。
この電動式ハードトップの重量増は約37kg。小学生の上級生がルーフに乗っている状態・・・と言えなくもない。人馬一体を表明するロードスターとしてはコーナリング時のロールが大きくなり、このままではとてもスポーツカーとはいいがたい走り。そこで、リアのコイルスプリングのバネ常数を高め、前後のダンパーの減衰力をチューニングしている。かくして・・・足踏みも含めスタートから約5年、ようやく世に出たのである。
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