簡単には使いたくない言葉だが、「魔が差した!」としか説明が付かない。
他でもない、愛車のシエンタHV。残り厚さが3㎜程度となったフロントブレーキパッドの交換を行うつもりで、フロアジャッキでジャッキアップ。まずは左側からとタイヤを外し、ブレーキキャリパーのボルトを緩めキャリパーを上に持ち上げ、ブレーキパッドの顔を出させた。このとき、ふと「そうだ、ハンドルを左にフルロックさせて、パッド交換作業をやりやすくしよう!」。そう考えたのが、そもそもの間違いだった。
運転席に座り、ハンドルを左に切ろうとしたところ、ハンドルロックがかかっている。
そこで、エンジンをかけるのだが、いまどきのクルマはブレーキペダルを踏んだ状態でスタートボタンを押す。ノー天気にブレーキペダルを踏む。すると「スコ~ン!」とばかりブレーキピストンが飛び出したのだ。
パスカルの原理が働き、ピストンが飛び出るのは当たり前! ガ~ン! 一度出たピストンは容易には戻せない。クリアランスがごくわずかしかなく、どうしてもうまくゆかないのだ! そして戻そうとすると、ブレーキフルードが容赦なく零り落ちてくる・・・・これは手に負えない!
仕方なく、友人の1級整備士君に電話し、状況を説明。運悪く、その日彼は多忙。翌朝1番で来てくれ、ツナギに着替えると、わずか5分で苦も無く、ピストンを戻しゴムシールのストッパーリングも首尾よく装着しなおした。さすが職人だ!
そんな技にうっとりしていると、現実に戻された。簡略なエア抜きをおこないとりあえず低速でゆるりゆるりと走行できるレベルまで持っていった。近くのディーラーできちんとエア抜きをおこなえば、つまり診断機を取り付けるエア抜きのほうが信頼性が高いということなので、完璧を期して近くのディーラーに修理依頼することにした。ところが、その日は運悪くトヨタディーラーがみな休店。とりあえずペダルを漕ぎ、カーショップに向かいブレーキフルードを購入し、規定量注入した。
翌日、恐る恐るクルマを走らせ、2キロ先のディーラーに入庫し、そこでエア抜きをおこない、無事ふだんのクルマに戻ったのである。料金は5000円だった。
アタマがぼんやりしている真夏の時期に、慣れない作業はやらないほうがいい! そんな教訓を僕に教えてくれた、記念すべき大失敗のこれが顛末である。
数ある自動車メーカーのなかで、日産ほど毀誉褒貶(きよほうへん)の激しい企業はないのではなかろうか。
巨額の負債で瀕死状態にあった日産を、わずか数年のあいだにV字回復させた外国人カリスマ経営者を、昨年末いきなり追放したものの、依然として深刻な経営危機に陥っている。過去にも労働組合のトップが経営に深くかかわるなど異常な状況があったことを思い起こすと、今回、カリスマ経営者が残した「パンドラの箱」が開き、外からは見えにくかった負の部分が顔を出した、ともいえる。
その日産の発祥の地とされる横浜神奈川区にある「日産エンジンミュージアム」に2年ぶりに出かけてみた。
社会に広く顔をさらしている博物館がいまどんな現状なのかを知りたくなったのだ。じつは、この建物、昭和8年創業当時の日産本社の建物をそっくりそのまま利用しているところが、最大の魅力なのだ。木枠の間仕切り、木製の扉、真鍮の取っ手、それに昭和初めに流行したという大理石のような人工の石でつくられた階段がなんともいい味を醸し出しているのだ。
1階と2階の2つのフロアで構成された自動車博物館としては小ぶりだ。1時間もあればだいたいを見て回れる。
入ってみて驚いたのは、今年4月にリニューアルされていた。エントリー部の1階は子供でも理解できるクルマづくりのプロセスを分かりやすく解説。樹脂製のスパナと電動ドリルを子供が使いネジを緩めたり締めたりするコーナーやプレス加工による同じ厚さの鋼板が強度と剛性を高められる、そんなやや理解が難しい展示部もある。その奥には、日産の先端技術である可変圧縮比エンジン、ハイブリッド技術“eパワー”を支えるモーター製造技術などを解説する展示物が並ぶ。
2階は、廊下を挟んで、橋本増治郎の快進社をルーツにもつ日産90年のクルマづくりヒストリー、それに輝かしいレーシングエンジンを含め歴代の日産エンジン単体を30基ほど展示。詳細なパネルとともに、いかに日産がエンジンに力を注いできたかがわかる仕掛けだ。
ミュージアムの責任者の木村優(あつし)さん(65歳)は、1970年代九州の工業高校機械科を卒業し、日産のエンジン実験部門に入社。おもにエンジン補器類の耐久テストに従事してきた。燃料噴射方式になった80年代から燃圧が3倍ほど高くなり、燃料ホースの周辺機器の強化、それにヘッドガスケットの変遷、ヘッドボルトの締め付け法が弾性域から塑性域に変わるなど、いまにつながる高性能エンジンの話題を解説してくれた。ただ、このへんも個人の記憶でしかなく、かなりあやふや。そもそも技術のデータベースが欠如している。そのことにも気づかないところに、日産の病魔が潜んでいる。―――そんなふうに思うのは、深読みなのかもしれない。いずれにしろ、期待値以上の成果が今後の日産が得られるといいのだが。
発表以来200以上の言語に翻訳され、累計1億5000万冊を超える超ロングベストセラー「星の王子さま」。
その作者は、言わずと知れたフランス人のサン=テグジュペリである。20世紀初頭の1900年に生まれ、第2次世界大戦が終わる少し前の1944年7月31日に偵察飛行のためコルシカ島を飛び立ち消息を絶った。
サン=テグジュペリは、伯爵家に生まれた正真正銘のフランス貴族だが、飛行士にあこがれ工学校で学ぶ。そして24歳のとき2年間ほどソーレ社というトラックを製造する企業の販売員兼整備士でもあった。次の就職先のラテコエール郵便航空会社では正真正銘の整備士として働いている。いっぽうモノを書く才能は天性のものがあった。
1920年代だから、フォード社のモデルTのころだ。いまのクルマにくらべると、信頼耐久性は超低レベル。走るものの、すぐ壊れ、自分で修理する、そんな時代である。そのサン=テグジュペリが、42歳のときに書き上げた「戦う操縦士」のなかで、自動車および機械文明を鋭く評する言葉が登場する。上空から、全財産をクルマに積み逃げ惑うフランス市民たちを目の当たりにして…‥。
「機械というものは、時間に余裕のある、平和で安定した社会を想定して作られている。それを修理したり、調整したり、油をさしたりする者がいなくなると、すさまじい速さで老朽化していく。これらの自動車も、今晩にはもう、1000年も歳を取ったような姿になるだろう。…‥」(写真:光文社刊 鈴木雅生訳)
この本は、英語版では「アラスへの飛行」(FRIGHT TO ARRAS)となっていて、発売するやアメリカでベストセラーとなり、戦地に赴く米兵の必読書だった。すでにナチス・ドイツの占領下にあった北フランスのアラス上空を偵察飛行するサン=テグジュペリが、敵戦闘機との手に汗握る遭遇劇やきびしい対空砲火を浴びながら、戦死あるいは負傷した戦友たちとの回顧、生きるということ、人間の営みの意味などを哲学的に思想する。
「ノブレス・オブリージュ」(フランス語で、直訳すると“高貴さは義務を強制する”)という言葉がある。要するに、身分の高い者は、いざとなれば喜んで死地におもむく存在なのだ、という日本の武士道にも通じる倫理観。33歳までとされた偵察機の搭乗を44歳で無理やり敢行したサン=テグジュペリの場合、ノブレス・オブリージュとだけでは説明できない、なにか特別感があったと思われる。
ちなみに、サン=テグジュペリの作品は、戦争文学のカテゴリーともいえる。世に戦争文学は戦争におもむいた人に比べその数はごく少数。命のやり取りを行う行為の中で、文学的精神を発揮するのはごくまれだからだ。
“モノづくり・デザインコンペティション”という副題が付いてる「学生フォーミュラ日本大会」が今年で17回を迎えるという。
そもそもレースなどというものは、当人が一番面白く、見ている側はある種他人事で、「ふ~ん、それがどうしたの?」という感じである。若いころバイクの競技に熱中してきた筆者ですら、そんな印象である。でもそんな料簡の狭い考えでいるわけにはいかない! という思いが頭の隅に浮かんできて、主催者である「日本自動車技術会」のマスコミ向けの発表会に先日出かけてみた。
芝浦工大、横浜国大、東大、群馬大の4チームの担当者が、それぞれ意気込みやらマシンの概要などをかいつまんで説明。簡単に言うと、来月8月末の5日間にわたり静岡県袋井にある小笠山総合運動公園(通称:エスパ)を舞台に、98チームが戦う。うち26チームはEVで、韓国、インド、インドネシア、台湾、中国、タイ、バングラディシュなどの海外勢27チームを含む。
普通の自動車レースのように“よーい、ドン!”でのバトルではなく、タイムアタックなどの動的審査、それにデザイン、プレゼン、製造コストなどの静的審査の2本立てで、バトルが展開するのである。2つの審査の配点は1:2で動的審査を重視。昨年優勝の大阪大学は、1000点満点中853.34点だったという。
どんなマシンなのかというと、排気量600CC前後のバイクエンジンを流用し、それに独自のフレームで架装し、タイヤは10インチで、もちろん一人乗り。車両重量はだいたい210㎏の、100%手作りマシンだ。
主役である学生自らが、モータースポーツの車両を構想し、設計・製作・開発、そしてその成果を競うべく勝負する。
エンジンなど主要部品は、自動車メーカーの全面援助だが、運営費などが学生個人負担。
マシン製作費は約300万円で、モノづくりの総合力を養い、マネージメント力のなんたるかを知ることになる。意外とそのことに気づいていないが、自動車産業というのは、そもそもエンドTOエンドつまりモノづくりから、販売、サービスまでをカバーする一気通貫的な産業である。いわば産業革命のゴールあるいは頂点と言えなくもない。PCやスマートフォンもしかりだ。
となると、こうした若者の切磋琢磨から、世の中を一新する製品やシステムが誕生する。言葉を変えれば、日本のスティーブ・ジョブが誕生するやもしれない!?
「コンバートEV」というのをご存じだろうか?
コンバートは英語で“変換”の意味。野球用語で、「ピッチャーだったのが、今年から外野手にコンバートした選手」などと使う、あの変換だ。クルマの場合、ガソリンエンジン車だったのを電気自動車に“変換”した場合、「コンバートEV」というカテゴリーになる。
当初は、このコンバートEV、中高校生の科学教室的要素が強かったが、その後、エネルギー密度の高い高性能なリチウムイオン電池の登場で、お手軽に作れなくなった。鉛蓄電池なら、心配無用だったが、いわゆるバッテリーマネージメントを怠ると火災事故につながるからだ。リチウムイオンバッテリーの場合、常に充放電状況や温度を監視していないとヤバいことになるからだ。
横浜市都筑区にあるオズコーポレーションでは、このへんの電子技術のノウハウに秀で、しかも長年チューニング部品を開発した経験から、改造車検の知見が豊富。港北にある陸運事務所までクルマで15分ほど、の有利さも見逃せない。率いるのは、古川治社長48歳だ。
古川さんの目の付けどころが、なかなか面白い。
比較的入手しやすいVWの初期型ビートルをはじめ、ミニなどいまだ色あせないボディを使ったコンバートEVづくりに取り組んでいる点だ。もちろん、予算が合えば、永年慣れ親しんだ名車をコンバートEVにできるという。
クルマの魅力は、パーソナルな乗り物で自由さがある点だが、やはりモノとしてのカタチの美しさや愛玩動物に近い身近な存在だという点だ。「ビンテージカーに環境性能100%の性能を込めた、ひとつのソリューションがコンバートEVである!」
ひょっとしたら、これは21世紀の新しいクルマ文化の核になるやもしれない。そんな予感がします。ちなみに、ビートルのコンバートEVで価格は265万円からだという。
ひさびさに日本製の大型連節バスの路線バスが登場した。
通常の2倍以上の定員である120名を一度に運べる連節バスは、いすゞと日野の合弁企業であるJバス(宇都宮市)で生産されるという噂は流れていた。
これまで三菱ふそうバス・トラック㈱が扱うダイムラー製の連節バスしかなかっただけに、これで、日本の路線バスの明るい話題が一つ増えたことになる。
日野ブランドでは「日野ブルーリボン・ハイブリッド連節バス」という車名である。
面白いのは、路線バスでは世界初となる「ドライバー異常時対応システムEDSS:エマージェンシー・ドライビング・ストップ・システム」を標準装備している点だ。
これは、ドライバーに急病などの異常が発生した際に、乗客や乗務員が非常ブレーキスイッチを押すことで、減速して3.2秒後には停止するというもの。立席の乗客の安全性を配慮し、減速開始と同時に、車内では赤色フラッシャーランプと音声アナウンスで非常時であることを乗客に伝え、周囲へはホーンとストップランプ、ハザードランプの点滅で異常を知らせるというものだ。
エンジンは、直列6気筒SOHC24バルブのA09C型で、これにシリーズハイブリッド・システムとAMT(MTを自動化した変速機)を組み合わせ、省燃費と環境性を高めたという。価格は、通常路線バスは、3000万円程度だが、これは8800万円と2倍以上。
「しずしずとゆるゆると小型バスが走る!エンジン音がなく、運転席もハンドルもない!」
小型バスなので、もちろん線路の上ではなく、舗装路の上を走る! 速度が時速10キロ前後なので、じれったいといえばじれったいが、なんだかこれまでのクルマとは世界観というか概念が異なるので、すべてのこだわりや悩みが洗い流せる・・・・。まるでヨガの世界か、はたまた瞑想の世界!?
電車でもないし、これまでのバスとはまるで異なる不思議な世界を作り出したのは、フランスからやってきた「ナビヤ・アルマ(NAVIA ARMA)」という小型のバスだ。レベル4の自動運転のEVシャトルバス。日本ではソフトバンク系の企業SBドライブが扱う。
全長4750㎜、全幅2110㎜、全高2650㎜というから、いま街中でよく見かける日野のポンチョ路線バスに比べ、全長で約1~2m短く、全高で0.4m低く、全幅がほぼ同じ。車両重量は、2400㎏なので、ポンチョの約半分しかない。一回り小型のかわいいバスである。
面白いのは、デザインが前後とも同じ、前が後ろで後ろが前!ライダーセンサーを車体の前後側面に計8個付け、ルーフにはGPSで位置情報を確認しながら、時速20キロ弱で走る。車内には、運転席もないし、メーターもない。タブロイドのモニターに行き先を入力し、GO! すると、側面のでかい折り畳み式観音開きのドアが閉まり、ゆるゆるとバスが動く。シートの数は補助席入れて11席、吊り革が4つあるので、定員が15名ということだ。
低床(最低地上高が200㎜)なので、乗り降りがしやすく、乗り心地も悪くなかった。このバス、フランスのベンチャー企業が製作で、すでに世界で120台ほどが走っていて、日本にも4台導入され、あちこちで実証実験やデモ走行をおこなっているという。福島第1でも従業員のシャトルバスとして動いているという。4輪操舵なので、小回りが利く。回転半径4.7m。これはポンチョのショートボディより2.2mも小さい。
試乗して、途中でちょっとしたトラブルがあった。車両が歩道橋の下に入ったところ、GPSの電波が入力しづらくなり、止まったのだ。そのとき、車中にいた担当者が、ゲーム機のコントローラーのようなものを取り出し、リセットし、無事動き出した。現在ナンバー取得に動いているという。
札幌に住む友人・自動車ジャーナリストの山崎英志さんに電話したところ、クルマのサビについての本を書いている最中だという。そこで、ちゃっかりクルマのサビにまつわる最新情報を聞くことができた。
誰もが想像するように、一番の大敵は冬場の雪国で、路上に撒かれる融雪剤だそうだ。塩化カルシウムとか、海水とかを凍結が予想される橋の上とか、幹線道路のあちこちに撒かれる。これは、もちろん路面がコチコチになりスリップ事故が起きない処置。でも、クルマのボディにとっては、たまったものではない。クルマのボディは鋼板、つまり鉄の薄板。厚さ0.8ミリしかない。
もちろん、塗装を念入りに施され、ふつうならなかなか錆びることはないようにはできてはいる。ところが、海水などの融雪剤をまかれると、クルマの下回りに塩分が付着し、ほんのわずかなキズから錆が発生し、やがて大きな錆症状となり、ひどいときには穴が開く事態になる。
そういえば筆者も1年前、仙台の修理工場で、15年ほど使った路線バスのボディの修復現場を見た(写真)。座席やフロアのカバーなどを取り外したバスの車内に入ってたまげました! 驚いたことに、ホイールアーチのところがボコッと穴が開き、下の路面が見えていた。
現場の修理屋さんに聞いたら、「これは普通です!」というのです。融雪剤が犯人だという。だから、乗用車も油断できない。とにかく雪国のクルマは、融雪剤のおかげであちこちが錆び被害を被っている。「8年前の大震災の時エネルギー危機があったじゃないですか、あの時冬場街中の雪を解かすためのロードヒーティングが止まり、代わりに海水をまいたという雪国が多かった」そう山崎さんが言う。
なかには、海水などの融雪剤に加えて、砂利をまくケースもある。そうなるとピッチングといって、飛び石ですね、クルマの下回りの塗装に細かいキズが付き、そこに海水などの塩分が加わり、まさに泣きっ面にハチというか、文字通り、傷口に塩をこすりつけられる感じで、ひどいことになる。しかも、このところの異常気象で雪が多く降るということも、融雪剤散布が増え、クルマのボディが悲鳴を上げる要因となっているようだ。
さらにさらに山崎さんは、軽自動車のオーナーさんに警告を発しています。次号でお伝えします。
おじさんという存在は、「いまどきの学生は勉強していない」とか「本を読まない!」と自分のことを棚に上げ、ついつぶやくものだ。かくゆう私も、おじさんの仲間。たぶん、軽々しく“断を下す”のは、若者とふだん接していないからだ。
先日の取材は、このことが目から鱗が落ちるように合点した!
都内で開かれた、自動車技術会主催「学生による安全技術デザインコンペ」である。
大学生による、次世代のクルマの安全性をデザインするというもの。予選を勝ち進んだ4つの大学が、決勝に進んだ。東京都市大学、東京大学、広島市立大学、日本大学の4校。優勝チームは、6月にオランダで開かれる国際大会に参加できるという。
……でも、待てよ、いまさらクルマの安全性のデザイン?死者数はすでに激減しているし、今後自動運転になれば、事故自体が少なくなり、死傷者数も激減するはず。安全性を議論する意味が、あるのかしら?
そうノー天気にとらえていたら、ガツンとやられた。
「自動運転になると車内はサロン化し、ゲームをしたり、おしゃべりに興じる。となると、シートバックが寝かされ、万が一ほかのクルマがぶつかったとき、エアバックはきちんと機能しない!」なるほど、もぐら叩きではないが、別の問題が起きて、新たな安全性が脅かされるわけだ。
そこでド~するか? たとえば、それに合わせたダミーを考えるとか、衝突時の乗員へのダメージを根本から見直す……はたまた、シート自体が水平に移動し、むち打ち障害をやわらげる、などなどいろいろなアイディアが提案されていた。
写真は、優勝した日大チームの新型ダミーの開発。腰椎や腹部損傷を評価するもので、バイクや自転車のチューブを活用したり、Tシャツに内蔵をプリントし、デモンストレーションしたりして、会場を沸かせていた。
う~ん、やはりこれって「事実は小説よりも奇なり!」てことなのかしら?
先日、都内でおこなわれた軽自動車の新型発表会に出かけてみた。三菱自動車の「ekワゴン、ekクロス(写真)」である。例のカルロス・ゴーンの退場後、あれこれ話題をさらう日産と三菱自動車の共同開発“軽カー”だ。2社のジョイントベンチャー会社NMKVが企画開発し、三菱の水島工場で組み立てるという軽自動車。
プロジェクトリーダーの話が、興味を引いた。
いまや軽自動車は、日本の新車市場の54%を占め、うち30%は、ハイトワゴンと呼ばれるタイプ。そのうちの1/4がカスタム系だという。ここまでは、ある程度納得できる。ところが、軽自動車のアンケート調査の結果を聞いてたまげた!
軽自動車を選択する理由を顧客に聞くと、「少し前までは①税金・保険の安さ、②価格の魅力、③燃費の良さ、④車体色の豊富さ」だというのです。ところが、ごく最近の調査では選ぶ理由のランキングが変わった。「①車体色の豊富さ、②価格、③スタイルの順です」。少し前までスタイルは8番目に過ぎなかったのに、いまや3番目に躍り出た。
20年近く前から、「車体色でクルマを選ぶ。それは女性ユーザーが選択の主導権を持っているから!」ということを小耳にはさんで、「へ~っ、すごいことになった!」と思わず天を仰いだものだが、いまや車体色やスタイルは、クルマ選びの“鉄板”なんだな。
ちなみに、ekワゴン、ekクロスは、それぞれ価格が129~150万円台、140~170万円代と安くない。その背景は、自動運転の初歩版である同一車線運転支援技術、衝突軽減装置、車線維持支援装置などの安全装置やいわゆるコネクティド装置など先進技術を満載していること。「過去のクルマとは全く異なるクルマ。このことを消費者にご理解願いたい」そんな益子社長のやや悲痛とも聞こえる発言が印象的だった。
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