みなさん!知ってますCAR?

2022年12 月31日 (土曜日)

1/12の価格で手に入るコンビネーションレンチ。台湾製ツールのビジネス!

アストロプロダクツのコンビレンチ

  今回取り上げるのは、アストロプロダクツ製のコンビネーションレンチ12mmである。
  ごく近く、自転車で15分、以前にはコンビニが入っていた幹線道路の脇にアストロプロダクツがオープンした。
  台湾製を中心にしたハンドツールで、ここ数年ぐんぐん店舗数が増え、ごくごく身近になった工具屋さんである。とにかく、アストロプロダクツは、安くて品質もそこそこ、というのが受けている理由だ。
  かつてヤナセで長年メカニックとして活躍していた友人が、バイク屋さんをオープンするにあたり急いで揃えた工具や機器類はほとんどすべてアストロプロダクツと聞いて、思わず「へ~っ!」と驚いたことがある。あれから10数年たつが、インパクトレンチに不具合があった、あるいは作業台に据え付けて使う万力(バイス)の塗料がはがれたり、鋳物本体の出来が良くなくガタが初めからあった。そんな多少の不満があったようだが、あらためて聞いてみると「意外と信頼性もそこそこで、コスパが高くていいと思いますね」という答え。
  このあたりに、アストロプロダクツのビジネスの極意があるのかもしれない。
  そんななか、アストロの企業案内をチェックしてみたら、面白い記事に出会った。TOP MESSAGE(トップメッセージ)と称して、いまの時代、まさに工具ブームであり、「女性がバッグを選ぶように、男性が工具を選ぶ時代」だというのだ。その背景には、3つの理由をあげている。ひとつは、完全週休2日制で「ゆとりの時代」だから。2つ目の理由は「コストパフォーマンスに優れた工具の登場」。そして3つ目が「ファッション性が高く、眺めているだけで楽しくなる美しいデザイン」。
  なるほど、アストロプロダクツのコンセプトは、かなりいいセンをいっている。ネットでも、近くのリアルショップでも購入できるとなれば、とりあえず鬼に金棒!? …‥あとは、ブランド力である。伝説に裏打ちされたブランド力が必要となる。
  あらためて12mmのコンビレンチを身体検査して眺めてみると、じつによくできた製品だ、と思う。税込み528円。見た目のあまり変わりないスナップオンがAMAZON調べで6389円だから、なんと1/12の超お手軽価格。この価格差をどう読み解くのか? あまりの落差にただボーゼンとするだけだ。

2022年12 月15日 (木曜日)

ネジザウルスのプラス2番貫通ドライバー

エンジニアの貫通ドライバー

  いつものホームセンターに久しぶりに足を踏み入れたところ、面白いドライバーにぶつかった。
  ブラック基調に緑色をあしらった、ごつい感じのグリップを持つ貫通ドライバーだ。このカラーリングは? はてさてと頭をめぐらしたら、すぐ分かった。
  大阪にあるファブレス、つまり工場を持たない工具屋さん「㈱エンジニア」の製品だ。エンジニアといえば、例のアタマが舐めた小ねじの頭部をしっかり捕まえ回す、困ったときのお助けプライヤー。工具業界の一角を画した「ネジザウルス」をデビューさせ、日本中に広めた企業だ。
  数年まえヘキサゴンボルトのお助けツールを登場させたと思ったら、今度は貫通ドライバーのニューフェイスを登場させてきたということのようだ。
  さっそく購入し、あれこれテストしてみた。価格は税込み1848円と通常の貫通ドライバーに比べ2倍だ。2倍もの価値があるのか? というのが今回の関心事だ。
まず、メジャー、ノギスそれにクッキング用の秤を使った身体測定。そこで、驚いたのは全長220mmとごくごく標準的な寸法だが、重量が177gというのはこれまでテストした10数種類のプラス2番の貫通ドライバーのなかでは飛びぬけて重い。一番軽いもの(アネックスのウッド)だと113g。つまり1.5倍の計算だ。通常120~130gのなかにある。従来の製品にくらべ2~3割がたも重い勘定。
  これはグリップが他の製品に比べひと回り大きいためだ。理由はそれだけではない。軸自体が差し込みタイプなので、軸ブレを抑制するため通常よりも支持剛性を高めており、それが重量増に響いているようだ。おかげで軸のブレ(遊び)が抑制されていて好印象だ。ちなみに、軸がグリップに埋没する長さは33mmだ。つまり手持ちの1/4インチの軸を使うときは、最低でも50mm長のものでないと使えない。
  やや重いのでは? という危惧については、実際使ってみると、このずっしり重い感覚がプラスに働いていることが判明した。同じネジを複数回すとなると、ドライバーの重さが気になるが、一発でねじを緩めるとかする場合は、むしろこれくらいの重さがあった方がしっくりくる(個人的な感想だが)。
  最後に、廃油で濡れた手でドライバーを回す、そんなことを想定した“意地悪テスト”をしてみた。大多数のドライバーは樹脂製グリップなので、たわいもなく空転して使い物にならない感じとなるモーレツに意地悪度の高いテストだ。
  ところが、このネジザウルスのドライバーは、かなりの高得点なのだ。グリップ感が高い。その理由は、機動戦士ガンダムを思わせるゴツゴツしたデザインだということが手で触ると理解できる。硬い樹脂とやわらない樹脂の2つを巧妙にデザインするだけでなく、細かな凹凸やでっぱりを付けている。
  しかもエンド部は丸断面に近く軸近くはほぼ長方形断面とし、その境にはまるでクビレのような大きな凹みをつけている。こうした人間工学的デザインを取り込んだ結果のようだ。
  ふたたび、冷静にこのドライバーを握ると、やはり重さが気になった。たぶん非力な女性だと持てあます感じになるのではないだろうか? 元祖ネジザウルスは、女性ファンも取り込んだと聞いたことがあるが、矛盾を含むいい方にはなるが、女性に受けるためには軽量化への努力が求められる。

2022年12 月 1日 (木曜日)

“台湾製のペール缶用のポンプ”の実用度はあるのか?

ペール缶用ポンプ1

ペール缶用ポンプ2

  ペール缶というのを、ご存じだろうか?
  20リッターのオイルが入った円筒形の金属製容器のことだ。ペールとは英語でPailとつづり、辞書には「潤滑油や塗料、溶剤などの液体を運搬したり貯蔵したりするのに用いる鋼鉄製の缶」とある。
  エンジンオイルを手に入れる場合、通常の4リッターの四角い缶入りにくらべ、ペール缶だとずいぶん割安(安いオイルだと7000円台で買える)なので、数年前から愛用している。ちなみに、1年以上封を開けたオイルは劣化が進むと心配になるが、きちんと封をして雨にあたらないところに保管すれば2年ぐらいなら大丈夫。
  ところが、このペール缶、オイルジョッキに移し替えるときかなり難儀をする。20リッターものオイルが入った鉄の缶は重いので、オイルジョッキに移し替えるとき体力を要する。少し手元が狂うとオイルが床にこぼれることにもなる。
  そこで、身近にある階段などの段差をうまく使い、厄介さを少しでも軽減することになる。
  そんなモヤモヤしているとき、台湾ツールでおなじみのアストロで「ペール缶ポンプ ギアオイル用」という製品を見つけた。本来は粘度の高いギアオイルをもっぱら吸い上げるポンプのようだ。でもパッケージには、それよりも柔らかいエンジンオイルも吸い上げられるとある。
  使い方は、簡単だ。ペール缶の口にポンプ本体を差し込み、円弧状になったオイル給油口にオイルジョッキをたらすだけ。このときジョッキが不意に倒れないように助手役の人に保持してもらうとかの工夫すること。ホース長が1.25メートルあるので、シリンダーヘッドのフィラーキャップを外し、ダイレクトにオイルをエンジン本体に注ぎ込むこともできなくはない。でも過剰に入れすぎると抜く作業が増え、けっきょく2度手間になるので、要注意だ。
  本体の手押しポンプを上下すると、オイルはペール缶からジョッキへと移送される。ワンストローク約60mlである。3リッター吐出させようとすると約33~34回ポンピングする必要あり、という計算だ。使わないときはホース先端部のノズルをポンプ上部の収納部に差し込むことができる。つまり、うっかりしてオイルを振り撒き、衣服を汚す心配はないわけだ。
  ただ、ペール缶によっては口の形状がぴたりと収まらないケースがある。当方の場合、このケースだった。仕方がないので手でホールドしながらポンピングしている。この点について製品にはいっさい説明がないのが残念だ。
  1年前に手に入れたもので、価格はたしか2780円だった。いまは円安で2倍近くになっているようだ。リーズナブルプライスとみて手に入れたので、いまならかなり躊躇すると思う。結論的にはあまりお勧めできない製品だ。

2022年11 月15日 (火曜日)

オリジナル「ツールバッグ」のプレゼント!

プレゼン ト1

プレゼント2

  2006年からスタートした、このブログ「知ってますCAR」を、今年でおしまいとさせてもらいます。
  長いあいだご愛顧いただいた記念として、読者プレゼントを企画しました。
        ※
  オートバイのトライアル競技に熱中していた時代。
  たとえばツーリングなどで、持ち歩く道具をどう収納するかに悩んでいた。ソケットツールなら差し込み角1/4インチなので、それほど大きなものは不要。市販でもあれこれ探しはしたが、ちょうどいいものが見つからず、ならば! というわけでつくってしまいました。
  それが写真の赤い布製のツールバッグ。何度も試作しては大きさやデザインを決めた。そして出来上がったのが、サイズは350mm×350mmで、下部に斜めに工具を差し込む袋状(緑色)の細工がしてある。収納と取り出しがスピーディにできるようにデザイン。
  親しいプロライダーなどに使ってもらい、頑丈さと使い勝手の良さは太鼓判。たとえばヤマハのトライアル監督で初代全日本チャンピオンの木村治男さんは、このツールバッグを携え世界中のレースに参加。「汚れこそ激しいが、機能上はまったく問題なしでいまも現役で使っています」という。ライダーのなかには、百均で樹脂製のクリップを探してきて、ワンタッチで紐をむすべるタイプに改造したユーザーもいる。たしかに紐を結ぶのが手間だという声もあるが、相撲の仕切りと同じでこの紐をむすぶことでライダーを平静に戻す意図がある。
  このツールバッグ、なにもバイクに限らず、たとえば、自転車でツーリングする場合、ヘキサゴンレンチなどの工具やタイヤレバー、バルブなどを収納できる。あるいはアウトドア愛好者なら、工具やペグ、小物を収納する袋としても使える。もちろん家庭でも、たとえばドライバーやボールペンなどを保管する袋として活躍する。
  このツールバッグを100名様にプレゼントします(上の写真の工具が含まれません)。発表は、商品発送をもって発表とさせてもらいます。

応募要領
  ●応募先;(有)昭和メタル 「ツールバッグ・プレゼント」係 
  昭和メタルのホームページよりお応募ください。
  https://showa-metal.jp/inquiry_contact2019-001/

●締め切り;2023年1月20日

2022年11 月 1日 (火曜日)

樹脂製のワークシートは使えるか?

ワークシート1

ワークシート2

  足回りの作業をするとき、あると便利なのは手ごろな「椅子」だ。床にドシリとお尻を降ろして作業する場合もなくはないが、やはりワークベンチというかワークシートがあるに越したことはない。作業時の足や腰の負担度が劇的に軽くなるからだ。
そこで、昔よく使っていたのがお風呂で使う小型の椅子。これでも悪くはないが、やや低く、椅子の周辺に工具や部品を置く場所があるシートが求められるところ。そこで、専用の「ワークシート」(正式商品名はローリングワークシート:品番030935)をようやく手に入れた。
  台湾製でたしか3000~4000円ほどで手に入れたオール樹脂製のタイプ。四隅にキャスターが付いていて、座るとスイスイ好みの場所に移動できる(もちろん床がそれなりに平たんである場合!)。座面の高さも330mmほどで日本人の体形にちょうどイイ感じである。樹脂製で1.9kgとだんぜん軽い。少し高級感のある鉄パイプ製でシート部にクッション性を持ったものは3~4kgなので、半分以下の軽さ。ヒョイと手に持ち移動することも簡単だ。手に持つことを想定しないらしく、素手だと手が痛くなるが‥‥。
  座面には蓋があり、開けると小ねじや部品が入れられる。まわりにも凹みが計3カ所あり、工具や部品が入れられる。1/2インチのラチェットハンドルぐらいなら楽々収まる容量だ。
  ただ、これが使ってみると、意外なところが気になった。座面がフラットで長時間座っているとお尻が痛くなる点。これはよくない。でも、まぁホームセンターあたりでゴムシートを手に入れ貼り付ければ大丈夫と言えなくもない。
  一番心配なのは、肝心のキャスターだ。2~3年でたぶんこのキャスターは駄目になる可能性が高いと見た。荒れた作業場の路面などで無理やり体重をかけて動かそうとすると、おそらく壊れる可能性が高い。キャスターの根元が破損したら、樹脂製だけに補修ができず、やむなく廃棄処分となる可能性大だ。
  となると、このワークシートは、価格が安いので、壊れるまで使い込み、壊れたら買い直せばいい。そんな感じのワークシートである。発売元:㈱ワールドツール http://www.astro-p.co.jp

2022年10 月15日 (土曜日)

“モノづくり”に携わるということの精神性とは?

東京タワー

  これまでいろいろなモノづくりの現場を訪ね、インタビューをして記事を紡ぎ出してきた。
  クルマの開発に携わるエンジニアはむろんのこと、日々新技術に取り組む部品メーカーの技術者など。きちんと数えたことはないが、たぶん3000人はくだらないと思う。
  そんななかで、いくつもの興味深いエピソードがあるのだが、ふと思い出すのは、クルマのある部品メーカーを訪ねた時のことだ。たしか、ATの内部構成部品のひとつであるトルクコンバーターを製作している浜松のとある企業の60歳代の役員だった。
  たしか板金製でつくられるトルクコンバーターの話を伺ううえで、彼は「俺はこんなふうにクルマを作っている!」とゆるぎない自信を、コトバと表情で示しながら説明し始めたのだ。話を聞くほうとしては、クルマの一部品をつくっていることは認めるけれど、クルマ全体をクルマはおよそ3万点もの部品で構成されている。だから、ひとつの部品にすぎない部位を取り上げクルマ全体をつくっている! というのはお門違いじゃないかしら? と思わず反論したいところ。
  ところが、なにしろ相手の迫力が一枚も二枚も上手でとても反論などできずに、モヤモヤした気分で終わった。
  このことが後々、頭の隅に残った。
  ふっと半世紀以上も前、小学生の夏休みの自由研究で、東京タワーの自分の背丈(約1メートル20センチ)ほどの模型をつくったことを思い出した。当時の漫画雑誌か何かでカラー写真を手に入れ、それを片手に近所の鉄工所のおじさんに話を持ち掛けつくったのだ。おじさんは“あいわかった!”とばかり、その場で手近にあった広告の裏紙に鉛筆でさらさらと設計図を描いてくれた。
  たしか8番線というとても子供が扱えるような細い針金ではなく、太い鉄の棒を曲げたり、溶接したりして2週間ほどでつくり上げた。作業は、子供そっちのけでおじさんの方が夢中になり、あれよあれよというまに作り上げてしまった。でも、学校に提出する段になるとなんだか、気分が乗らなかった。企画したのは自分だが、自分ですべて作ったわけではないからだ。ほとんどおじさんの手でつくられたのだ。友人に凄いと褒められると、犯罪を犯した気分になった。
  ところが、この東京タワーづくりは、子供時代の体験としていまも強烈に記憶している。おじさんが作業をしたとはいえ、横であれこれ観察していたからだとおもう。いわば他人事ではなく、わがこととして見守り続けたことが、大人になっても強い印象として残ったのだと思う。自分のなかでは、不思議にもインチキを犯したという思いが消え去り、いまではおじさんとの共同製作ぐらいにグレードアップしている。
  そこで、浜松のトルクコンバーターづくりの役員だ。若いころからたぶんトルクコンバーター一筋で、その製品がクルマに採用され、ふと街中で自分が製作した製品がATのなかで活躍している(外からは見えないが、機種で分かるんでしょうね)のを気づくと、「うん、このクルマは俺の開発した部品で動いている。俺がつくった部品がなければ1メートルも動けない!」そう思っていたに違いない。家族にもその都度、そのことを告げていたのかもしれない。
  だからこそ、「俺はクルマを作っているんだ!」と自信をもって人に伝えられるのだ。フェルデナンド・ポルシェや桜井眞一郎あたりは、クルマのどの部位を質問しても即答できた。そういう人なら「俺はクルマを作っている!」と言える。でも、クルマの一部品であっても“クルマを作っている!”と周囲の人に伝えても、ホラを吹いているとはけっして思わない。

2022年10 月 1日 (土曜日)

フェイバリットツールのひとつは? と尋ねられたら

TOP六角棒レンチ

  かれこれ30年ほど使い続けているだろうか?
  誰にも1本か2本は、よく使う工具というものを持っていると思う。10mmのコンビレンチの人もいるし、2番のプラスドライバーの人もいる。使用頻度が高い工具であるはずだ。
  ぼくの場合、イの一番にあげたいのがヘキサゴンレンチの「6角棒レンチ」である。20年ほど前の自動車のエンジンルームではあまりヘックスボルトを見かけないので、使う機会はなかった。ところが、バイクの世界では、1980年代からすでにヘキサゴンボルトがかなりポピュラーだった。ふつうの6角ボルトの頭とくらべ、一回りコンパクトになるので、バイクではとくに、ハンドル回りに多くのヘキサゴンボルトが使われてきた。アクセルグリップ回り、ハンドルクランプ回り、ブレーキ&クラッチレバー回りなど、指折り数えると10本以上ある。サイズはだいたい4mmと5mmだったと思う。これらのボルトを脱着したり、バイク本体を背の高いトランスポーターのワンボックス車に乗せやすいように、バイクを低くするためハンドル回りのボルトを緩めたりする。こうした作業で、実に6角レンチの使用頻度はグイっと高まる。
  TOP製の「6角棒レンチFHW-4568」は、このバイクのハンドル回りにあるヘックスボルトを脱着するのに便利。鍛造製のハンドルの両端に短い両頭ビットが付いていて、クルクル360度回せるスタイルになっている。4mmと5mm、それに6mmと8mm、つまり計4つのサイズのヘックスボルトに対応できるというわけだ。軸と90度の角度にすればトルクをしっかりかけられるし、ハンドルと同じ向き(つまりストレート)にすれば早回しができるのだ。1本で4サイズに対応するだけではない。
  ナイフタイプ、L字タイプ、ドライバータイプ、ソケットツールタイプなど6角レンチはいろいろなタイプがあるが、TOPの製品は実にユニークで使いやすい。
  全体の重量が154gと重く、手に持つとずしりと重く感じるのは事実だが、使ううえではそれはマイナスにはならない。頑丈につくられている、質実剛健さを醸し出すうえでプラスに働いているかもしれない。だが、これをもし平成の時代に作り直すとすると、たぶんハンドルをアルミの鍛造製にするか、同じ鍛造のスチールでもなかをくりぬき中空にするかもしれない。となると価格はたぶん10倍程度になる。現行だと実質1000円以下と格安。そう考えると、このままの姿に落ち着く? せいぜい表面にローレット加工を施すぐらいか? (写真は今回新たに購入したもの)

2022年9 月15日 (木曜日)

頭がつぶれたネジが外せるドライバーの有効性は?

パーフェクトドライバー2-1

パーフェクトドライバー2-2

  ハンドツールのなかで、ドライバーほどごくごく身近なわりには使うのが難しい工具はない。
  “ねじ回し”という別名があるせいか、ついつい回すのに気が回り押し付ける力がおろそかになる。そこでカムアウトと呼ばれるドライバーが浮き上がり、結果としてネジのアタマをつぶしてしまう‥‥。ネジのアタマにきっちり食い込むには、押し付ける力をおろそかにできないので、押しつけチカラ7割、回す力3割、なんてことが言われる背景はここにある。
  ソケットツールで6角ボルトを回すときのように、ノー天気で使うと思わぬトラブルを招くのがドライバーなのである。相手のネジに正対する姿勢も大切だし、ドライバーの先端がねじの頭部からずれないように気を遣うことも大切である。
  とはいえそれでもトラブルときはトラブルものだ。かくゆう私もこれまで不本意ながら失敗を犯している。
  そんなときに問題解決法として、最近はいろいろな商品が出てきている。頭部をプライヤーでつかんで回すタイプとか、鏨(タガネ)状の工具で新しい溝を構築して回す……などなど。
  今回取り上げるのは、後者の仲間で、通常の2番プラスドライバーの超変形モデルという製品だ。先端部を観察すると、矢じりのような形状で、よく見るとギザギザが設けられている。
  矢じりのようになっている理由は、そもそもこれは貫通ドライバーの部類なのでハンマーでグジャグジャになったネジの頭部に新しい溝をつくる、ということだ。その前に、先端のギザギザが効果をあらわし、すんなり回ってくれることもあり得る。ハンマーで叩いて、溝を作り直すのは、それでも回らない場合なのだ。
  貫通ドライバーは、非貫通ドライバーにくらべ、重い。軸自体が、ハンドルのエンド部、つまり座金まで延ばされているからだ。だいたい非貫通に比べ1.3~1.5倍重いと考えてもらいたい。
  この製品「パーフェクトドライバー2」は、重量129グラム、全長212mm。これまで内外の10数本の貫通ドライバーを測定してきたが、だいたい常識的というか平均値のなかに収まる重量と全長だ。特徴的なのは、軸が4角だという点。通常は丸軸あるいは6角軸で、軸径がφ6~6.4mmだが、これは幅6.0mm。ついでにハンドルエンド部の座金の径は18mmで、これも標準サイズ。グリップは6角断面のハイブリッド樹脂構造。黒い部分は少し弾力がある柔らかめ樹脂、シルバーの部分(軸の根元)には、硬めの樹脂素材を配する。グリップの径は、太いところで34mmある。
  手に持ったフィールは、ずしりとした感じで、硬質感があり、アメリカンツールなどにくらべ小ぶりの印象。
  こうした工具は、1~2回の使用には耐えるが、数回使うと肝心の先端部が磨滅して、初期の機能を発揮できないというケースがある。このへんのテスト結果は、後日報告したい。
  発売元は、藤原産業(株) TEL0794-86-8200.価格は、近くのホームセンター調べで713円。

2022年9 月 1日 (木曜日)

わずか500円で手に入るパーツトレイは使えるか?

アストロの500円トレイ

  いまどきのクルマはあまり触りたくはなくなったが、少し旧いクルマの部品を取り外す際、必要になってくるのが、パーツトレイ。
  パーツをどこに一時保管するかを考えずに、いきなり分解作業に入って戸惑ったり、ひどく後悔する経験は何度もあるからだ。たとえば、後先を考えずやみくもに分解して、徐々に増えていくボルトやナットを「組付けるときを想定して整理しておかなくちゃ!」という考えが頭をもたげると、次にどこを外すのか!? という思いと交錯して、混乱するものだ。安直に手近で見つけた段ボールの箱に入れておくと、ちょっと触れただけで、なかのボルトやナットがごちゃ混ぜになり、あるいは箱から飛び出したりして、最後に組むとき頭を悩ませることになる。
  大げさに言えば“後顧の憂い”を絶つ意味でも、安心の『パーツトレイ』を準備することが、よい整備をおこなううえでの必須事項である。たぶん、というか優れた整備士はみなこのことをよく知っていて、事前に準備している。
  以上のことをふまえて、今回のパーツトレイを眺めるみる。
  ほぼ手のひらサイズの大きさの長方形。深さ33mm、横縦同じく33mmのスクエアなボックスが3×5、全部で15個ある。取り出すとき指の太さなどを考えての寸法だ。バイクのアクスルナットなら収まる。ただしアクスルボルトは長すぎて収まらないので、もう一つ別タイプのパーツトレイに入れておけばいい・・・・たぶん優秀な整備士は、事前にここまで考えるのだと思う。
  重量は300gとやや重めだが、それこそ迂闊に触れただけでひっくり返ることはまずない。底にマグネットが付いているので、工具箱にぴたりと張り付く。
  計15のスクエアがあるので、使ううちにそこに埃やゴミが堆積する。そこで時々、綿棒などでそこをきれいにする必要が出てくる。考えられる難点といえば、そこだけだ。価格も500円なので、2つぐらい準備しておくと安心だ。発売元は、㈱ワールドツール http://www.astro-p.co.jp

2022年8 月15日 (月曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(最終回)

食い付きゲージ

  この工場では、日に目が回るほどの大量のネジをつくっている。
  となると、当然ながらオシャカというか不良品も少なからず出るハズ。長年記事をつくっていても自慢じゃないが、数ページに1個や2個は間違いを犯すものだ。校閲という人が校正作業をおこなうと、赤字で真っ赤になることも珍しくない。それからいえば、一日100個や150個は、失敗するネジが生まれてもおかしくはない。流通コインでも、印字がずれたり、刻字洩れということもある。となればネジでも、異品種の混入、ネジ山がずれる、ネジ山付け忘れ、頭部の変形といったこともあるのでは? 
  といったことを説明すると、逆の意味で驚かれた。「うちの工場は、100万個に3個以下の不良品です。じっさいは一日200万~300万個生産しているのですが、多くて3個、ゼロという日もあるんですよ。というのは、通常のネジメーカーは最終的に選別機にかけて、不良品を文字通り選別するのですが、当社は工程ごとに自動不具合選別センサーで常に目を光らせている。社内では工程内品質確認と呼んでいるのですが、こうした“つくり込み思想”は自動車大手サプライヤーレベルでは、高く評価してもらっています」
  たとえばネジ径が4㎜、つまりM4の頭がプラスネジ。これはプラス2番のドライバーを使う。JISで、ある程度緻密な各部の寸法が指定される。早い話、しょせんそれはある範囲内に入っていれば許される話。許容範囲があるということだ。だから、ボルトやネジはしょせんアバウトだという印象を持つ。ユーザーの満足度を100%充たせているとはいいがたい。
  「そこでうちではドライバーの老舗・大阪のベッセルさんのA-14という両頭ビットのプラス2番をぴたり合わせているんですよ。JIS規格には、“ネジ用十字穴”の項目に“食いつきゲージ”というのがあります(写真)。このゲージの先端にネジの頭を押し込み、その状態で垂直にして落下しないかをみる。ゲージに対してガタがあったり、ゲージの底にぴたりと付かないネジは当然、落下する。ステンレスねじの場合、磁力を持たないので、よほどピタリと各部の面が合わないと下に落ちてしまう。でもうちのネジは落ちないのです」
  論より証拠とばかり、試してみたところ“食いつきゲージ”の先端部の溝にぴたりはまり、ネジが落下することはなかった。このことは、たとえば組み立てラインでねじを取り付ける際、大きな力になる。うっかりしてねじが床に落ちたら作業時間が無駄になり、余計なトラブルを引き起こすことにつながるからだ。ふつうのドライバーで、バイクやクルマを修理する際にも同じことがいえる。エンジンルーム内にネジを落とすと、探すのに一苦労するからだ。(ちなみに・・・・後日、新潟の某ドライバーメーカーに問い合わせたところ当然ながら食いつきゲージを日常的に使っていることはむろんだが、最近の輸入ネジのなかには規格を満たさないネジが増えてきていて、ネジが舐めるトラブルが起きて困っているということだった。)
  ネジの世界で、これほど注力をそそぎ作り込んでいる。ここにすでに取り上げた「ねじガール」の存在価値や仕事への情熱がつながっているようだ。…‥当方もこれまでの気の抜けた記事作りを反省し、ネジを巻いて仕事に取り組む気分になって、工場を後にした。

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