みなさん!知ってますCAR?

2022年8 月 1日 (月曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(短期連載 第6回)

チタンのボルト採用例

  結果的にはチタン合金のネジは頭部成形で活躍するパンチが3段、ネジ部成型のダイスが2段階という、やや手間がかかるネジづくり工程となった。
  このモノづくり挑戦ストーリーを日経系の新聞に取り上げられたところ、思いのほか反響があった。「キャップボルト(内6角ボルト)をつくれないか?」とか「チタンのボルトなら、市場はあるよ!」。ところが、これまでステンレスねじの世界でもキャップボルトをつくった経験がなかった。住宅関連のネジ市場にはキャップボルトはなかったからだ。
  これをきっかけに、ネジ径5mmとネジ径6mmを中心に自転車競技やモータースポーツ向けのチタンボルトを商品化している。たとえばMOMOのハンドルを止める6本のM5皿ネジ、自転車ではハンドルクランプやコラムクランプ、それにブレーキキャリパーのクランプネジ、いずれもM5,M6だが、一台の競技用自転車に合計27本、これだけで重量が従来ネジからチタンネジに変更して94.7g→70.1gとわずか24.6gだが、比較試乗してみるとさすがに軽くなった実感はないようだが、剛性感が高まるという。
  「4月にお台場で開催されたサイクルモードという自転車イベントで、チタンボルトと従来ボルトを比べる試乗会をおこなった結果、みなさんおしなべてしっかり感を得たというお褒めの声をいただきました。とくにブレーキの初期タッチがよくなり、コントロール性も上がったという評価でした。これって、譬えてみるとアイスクリームに醤油を一滴たらすとより甘く感じる、その感覚に近いと思います」(社長) 実食していないので良くはわからないが‥‥。
  ともあれチタンボルトの経験を踏まえ、2012年からインコネルボルトの開発にも挑戦している。
  インコネルはニッケルがベースの合金で、とくに耐熱性に優れスペースシャトル、原子力産業、化学プラント、産業用タービン、真空装置、発電プラント、航空機の部品で活躍。自動車の世界でもディーゼルエンジンの燃焼室に使ったり、エキマニやマフラーに採用しているケースもある。
  「インコネルは、塑性加工ののちのいわゆる加工硬化が起き、そこからの成形が困難になる傾向にあるんです。圧造過程で組織が変わる厄介さがある。そこで金型のデザインを見直したり、インコネル自体の種類を選択しなおすことで、製品化にこぎつけています。これもチタン合金ネジの製作過程での経験がずいぶん生かされ、とくに克服困難な壁ではなかったのはよかったです」
  経験とデータの蓄積が、モノづくりの世界ではおおいにモノをいうようだ。

2022年7 月15日 (金曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(短期連載 第5回)

チタンネジ

  面白いことにチタンはTiO2(酸化チタン)というチタンと酸素の化合物というカタチの鉱石で地球上には使いきれないほど埋蔵されている。マグネシウムを使い還元、つまり酸素分を除去して純チタンを生み出す。この精錬法が確立したのがわずか半世紀ほど前。チタンの量産はデュポン社が始めている。その意味では、まだまだ金属の歴史としては、まだ始まったばかり。
「ネジをつくるうえで重要な物理的特性に引っ張り強度というのがあります。ふつうの鉄のネジがだいたい400MPです。ここでのメガパスカルというのは、正確に言うとMP/mm2と表記する。1mm四方当たりにかかる力。ステンレスだとだいたい500MP、これがキャップボルトつまり内6角ボルトだと約700MPに高められるのです。これがチタン合金を金属組織から分類したβ型合金のなかのTi15-3-3-3と呼ばれるチタン合金だと、引っ張り強度をさらに780MPにまで高められたんです」と柿崎社長。
  このTi15-3-3-3というのは正確には15V-3Al-3Sn-3Cr。つまり重量比で15%のバナジウムとそれぞれ3%アルミニウム、スズ、クロム、残りが純チタンという構成のチタン合金だ。ちなみに、航空機や人工関節、あるいは人工歯根インプラントなどには比較的ポピュラーなチタン合金であるTi64(ロクヨン・チタン:6%のアルミニウムと4%のバナジウム)が用いられているという。これはコスト的には比較的リーズナブルだが、冷間時の加工性が難しい。いっぽう「15-3-3-3チタン」は、この64チタンにはない、冷間時加工性が高くネジに成形する際のトラブルが比較的小さくて済む特性だ。
  そこで、当初は、廃棄寸前の機械を使い、恐るおそるテスト的にネジづくりをしてみたという。
  つまりステンレスねじを加工する機械で、チタンネジがつくれるかを試した。心配なのは、素材が硬すぎると金型が割れたり、機械が急に止まったりのトラブルが起きることだ。
  小さな不具合が起きたものの、長年の知見で乗り切ることができた。金型を絞り方向の力を逃がすカタチに設計し直したのと、圧造のヘッダーを多段打ちに変更することで、大きな壁にぶつかることなく比較的スムーズに事が運んだ。これが2005年のこと。ネジ径M6のプラスネジを100個ほどつくることに成功したのだ。モノづくりとはことほどさように地味な世界。でも、ここから商品化がスタートした。モノづくりの醍醐味を企業内で共有できることになった。

2022年7 月 1日 (金曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(短期連載 第4回)

チタンの特性

  いうまでもないが、クルマばかりではなく、現在日本は大きな曲がり角に来ている。社会構造の変化の一つが、少子高齢化である。少子高齢化が進むと、いわゆる生産人口が減り、全体の世帯数が減り、それにともない住宅建築数が激減する。興津螺旋のネジを買ってくれるお客様の動向を眺めると、このことが顕著に分かるという。
  「たしか平成9年をピークにして、それ以降住宅建設が右肩下がりとなります。戸建て、マンションを含め全国で年間200万戸を超えていたのが、いまでは年間80万戸ほどになった。ですから、住宅関連の市場で使うねじに比重をかけているだけでは、興津螺旋の将来性は明るくはならない」
  大学で経済学をまなんだ現社長の柿澤宏一さんは、1996年に入社した。父親から3代目を受け継ぐにあたり次世代のネジづくりに期待された。振り返っても過剰なプレッシャーはとくになかったようなのだが、クルマが好きでなかでもトップエンドのポルシェが大好きだったこともあり、ネジ素材の頂点ともいえるチタンに関心をいだき始めたという。「とにかくチタン合金は、ゴルフクラブ、メガネフレーム、それに航空機などトップエンドの製品の素材の象徴的金属です。でも、加工が通常の金属にくらべ厄介だ」
  大学はモノづくりとは距離のある経済学部。だがサイエンスが好きだったこともあり、金属素材の研究を始めるのにさほどの苦痛を感じなかったようだ。1997年あたりからチタン合金の初歩から研究をはじめ、当初は、JISでいうところの2種のチタンを取り寄せ研究している。
  よく知られるようにチタンは、アルミの約60%の比重しかなく、単位重量当たりの強度はアルミの6倍、鉄の約2倍。優れた金属特性のため、航空機産業、具体的にはジェットエンジンのファンやファンケース。耐食性が優れているため、化学プラントや深海調査船のキャビンにも採用されている。柿澤さんはますます好奇心が高ぶったという。

2022年6 月15日 (水曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(短期連載 第3回)

ねじ工場内部

  創業者で初代社長の柿澤金男さんは、昭和46年に亡くなっている。バトンタッチした2代目社長(現社長の父親:現在81歳)には「次世代はステンレスねじを挑戦したらどうか」と生前に言い残したという。
  高度成長経済が始まり、ステンレスねじの市場が今後増えることを見越してのことだ。
  創業者のアドバイス通り、2代目はステンレスねじの研究に打ち込み、商品の種類を増やしていった。アルミ建材、家電、キッチン、バス、エアコンなど生活の身近なところにある装置や器具類で使われているステンレスねじを重点的に生産。興津螺旋をねじメーカーの上位に押し上げていったという。
  じつはステンレスといってもいくつもの種類がある。興津螺旋が使うのはSUS XM7である。SUSとはJIS(日本工業規格)でのステンレス鋼を意味し、英語のSTAINLESS USED STEELの略である。
  このSUS XM7は従来からあるSUS304の冷間加工性を高めたもので、18Cr-9Ni-3.5Cuつまりクロム18%、ニッケル9%、銅3.5%で、残りFe(鉄)。ねじ類に使われるポピュラーな素材。1977年にJISの仲間入りをしている。ちなみに、食器などに使われるポピュラーな18-8ステンレスは、クロム18%、ニッケル8%、残りFeである。このXM7は、銅が3.5%混じっているところがミソで、冷間時の圧造性を向上させているという。
  この工場では、ネジ径M3からM8(ネジの直径サイズで単位はmm)、首下が5mmから長いものだと150mmのネジをもっぱら生産しているので、線形は素材の違いがある。たとえばネジ頭部を成形する圧造時の滑りをよくするためボンデ処理(リン酸塩皮膜処理)を施すとか、いろいろな種類の線材を素材メーカー(正確には伸線メーカーだが)から購入している。その種類はなんと約40種類もあるという。

2022年6 月 1日 (水曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(短期連載 第2回)

柿澤社長

昔のネジ切り盤

  こうした男女差別を撤廃した職場づくりのキッカケは、3代目の社長の価値観に根差しているようだ。
  このネジメーカーは、昭和14年に現社長の祖父・柿澤金男氏の手で創業された。小ネジ、木ネジ、小鋲と呼ばれたリベットづくりからスタートして、戦時中は海軍の軍需工場となり、戦後民需品ネジ工場として復活している。
  「昭和30年代には木ネジの生産ではトップメーカーだったと聞いています。といってもシェアは10数%でしたが。その後昭和30年代後半に入ると高度成長経済を背景に住宅建築が右肩上がりの時代が続きます。このころわが社は、木ネジや小ネジ、釘、鉄線など住宅関連の装備で使われるネジをもっぱらつくっています。ところが、昭和40年代になると、アルミサッシをはじめ、家電、キッチン、バス、エアコンなどに使われるステンレスねじに、着目しました。その研究の成果は昭和48年に初めてステンレスねじを生産したことで花を開きました。そして約10年後には釘や鉄線部門を閉鎖してステンレスの小ネジやタッピングネジに大きく比重をかけていきます」
  こう語る今年49歳になる現社長の柿澤宏一氏は、中学の夏休みの自由研究で、自分ちの工場のことをリポートしている。本人の記憶も薄れてはいるが、とにかくネジの種類の多さを級友に知らせたくて一心不乱に鉛筆を走らせた」ことだけはよく覚えている。「たったそれだけ?」とやや不満げな当方の態度に、遠くを見てさらに思い出したようだ。「そういえば、ネジの作り方についての研究発表もした」という。
  ネジの作り方と言えば、いまは生産性の高い転造と呼ばれる製造法が一般的。ギザギザの付いた金型に丸棒の素材を押し付け転がして、あっという間にネジ部を作るやり方だ。工場の機械を眺めても、まるで“瞬間芸のように!”次々にネジができていく。でも現社長が小学生時代には、まだ一昔前の「ネジ切り盤」がかろうじて活躍していたという。
  ネジ切り盤といえば、ネジの歴史を書いた本のページがすぐ思い浮かぶ。丸棒を回しながらバイトと呼ばれる刃物でネジ溝をつけていく、小型旋盤みたいな工作機械。英国人で世界で初めてネジの規格(ネジ山の角度が55度で、いまの60度とは異なる)をつくったウイットウォース(1803~1887年)のネジ切り盤。イラストでしか見たことがなかったが、実はこの工場の片隅に大切に鎮座していた。原理は、旋盤の超ミニ盤だが、M6とかM8のネジを対象とするのであるなら、両手で持てるほど小型であることが確認できた(写真)。

2022年5 月15日 (日曜日)

お気に入りドライバーANEXビスブレーカーが“ワニドラ”に進化した?!

ワニドラ1

ワニドラ2

  新潟にあるドライバー専門メーカーANEX(会社名/兼古製作所)は、このところ意欲的に新製品を世に送り出している。たぶん背景にはDIYブームがあるからかもしれない。
  そのANEXのドライバーで一番のお気に入りは、ビスブレーカーというアイテムだ。
  その名の通り、頭がつぶれたネジを回せるという「元祖お助けドライバー」である。ふつうの貫通ドライバーだけではない。先端部に注目(写真:右が従来型で、左がワニドラ)。先端部もクロス形状にすることで、舐めたネジの頭にハンマーで叩き、新たなクロス溝をつくる。これで舐めたネジを回せるというわけだ。
  しかも新しいネジにも使えるので、普段使いにもとても重宝するドライバーでもある。
  このドライバーのいいところは、かつておこなった“意地悪テスト”で一番いい成績をあげたことからも分かってもらえる。
  どんな意地悪テストかというと、意図的に油が着いた手という想定で、食器洗い洗剤を手のひらに付着させ、ネジを回せるかどうか? というものだ。5段階レベルで、5点が満点として、大多数は3~4だった。なかには、ウッドのグリップなどは文字通りツルツルしてまったくチカラが伝わらず、使い物にならず評価1というものもあった。
  ANEXのビスブレーカーのグリップ力の秘密はややユニーク。グリップ自体が合成ゴム系(TPE:熱可塑性エラストマー)でつくられ、断面が楕円形状のうえリブが付いている。これが劇的にグリップ力を高めてくれる感じ。握ったとき親指を置くディンプル(溝)が軸の根元にあり、これで使い勝手を高めている。このグリップのことをメーカーでは「クロコダイルハンドル」と命名している。“ワニドラ”という商品名は、ここからきているようだ。
  ともあれ、この洗剤手のひらの意地悪テストでの評価は、5点満点でライバルを圧倒してしまった。
  今回、品番も3980で、従来の3960から進化している。重量が、実測で133gから115gと18g軽くなっている。見えないところで、軽量化している。
  この点をANEX本社に問いただしてみると「とくに軽量している意図はないです。個体差ではないでしょうか? ただ、刃先の形状を見直し、よりネジに食いつきやすく、結果として自社テストですが、従来比1/5の力でネジを回し外せます。素材も少し手にやさしく柔らかくしています。それと刃先をクロムメッキ+黒染めからパーカー処理に変更しています」とのこと。
  このドライバー、使ううえで要注意なのは、熱処理した硬い素材のネジ(HRC硬度が40以上)には、残念ながら歯が立たない点。この場合は、ドリルでもんで、古いネジを取り外すなり別の手法をとることになる。
  ホームセンターでの購入価格は、712円。海外ブランドに十分太刀打ちできるコストパフォーマンスだといえる。

2022年5 月 1日 (日曜日)

420円で手に入れたアストロのボール形状のパーツ・トレイは使えそう?!

パーツ・トレイ1

パーツ・トレイ2

  イトシンさんの本のレビューのところでも触れたが、30代の中頃、バイク雑誌の編集記者だった。そのころ、こんな面白いというか貴重な体験をしたことがある。
  イーハトーブという宮沢賢治の言うところの理想郷を表す造語を、そのまま車名にした125ccのトライアルバイクがあった。これを新車で手に入れ、2~3か月後の岩手の、それこそ同名のイーハトーブ・トライアル2日間大会に取材を兼ねて出場した。ワンボックスにバイクを載せ、1日がかりで現地に到着、さっそくバイクを降ろし、試運転したところ、しばらく走って突然エンジンがストール。そんな馬鹿な! 東京のSF(整備工場)で整備したばかりで止まるなんて……。
  その場にいたベテランライダーに見てもらったところ、とんでもないことが判明した。SFの整備士がACジェネレーターを点検したとき(点検項目にはなかったが、なぜか好奇心が働き覗いたらしい)、取り外したボルト数本を間違って入れたままカバーをしてしまった。だから、なかのボルトが躍って内部のコイルを断線させ、エンジンが二度とかからなくなったのだ。
  きめられたパーツ・トレイに取り外したボルトは入れ、管理すべきところ。魔がさしたのか、ホンダの整備士はあり得ない致命的な失敗をしでかしたのだ。(推測だが、取り外したカバーをパーツ・トレイ代わりにして、外したボルト複数本をカバーに入れた。取り付け段階でなぜか1本を紛失。しばらく探したが見つからない。ふつうなら必死で探すところ、職場の工場には同じサイズのボルトが腐るほどある。安直に部品棚から同サイズのボルトを探し、解決。ところが、カバーに無くなったと思った元のボルトが紛れ込み、ボルトを中に入れて作業を終えてしまった・・・・)
  こんなことなら点検など出さなければよかった。でもいまさら悔やんでも遅い。
  このままでは、記者として走れないから取材ができない。いち選手ならそこで、「はい残念でした! また来年」となるのだが、主催者側がこの事態に気付いた。報道してくれる媒体がひとつなくなるのは、つらい。そこで、詳細は忘れたがとにかく手を尽くし、ありがたいことに当時の岩手ホンダが動いてくれた。展示車両からACジェネレーターをそっくりそのまま取り外し、おいらのバイクに移植して、翌日軽やかにスタートできた。
  けれどコースさえ満足に走れない腕での成績はさんざんだった。土のうえで転びまくり、流れる川の中にもんどりうって倒れたり・・・・リザルトは、不名誉にも150人の選手中後ろから5番目ぐらい。2日間山を越え、川を渡り、極端な路面を300km以上走ったバイクもおいらもヘトヘトでくたびれ果てた。挙句に、ライバルのバイク雑誌に悪い見本として、無様な転倒写真を数限りなく掲載されたっけ! 
  このときほど、パーツ・トレイの大切さを身に染みて考えたことはない。
  前振りが長くなったが、今回アストロプロダクツで手に入れた「プラスチック・マグネットボール・スモール」は、直径110㎜のお椀型のパーツ・トレイ。重量が190gで意外と軽い。価格も420円とこれまたバカ安。
  底にマグネットが付いているので、ツールボックスの側面でもぺたりとくっ付く。お椀形状なので、垂直に取り付けても、なかのボルトやワッシャーはこぼれ落ちる心配はない。しかも、フック穴があるので、フックもしくは紐に通して、ぶら下げておくこともできる。
  色が黒というのが少し気になったが、なかに入れるボルトやワッシャー、ナット類は銀色系が多いので、問題ないか。内壁を波状の形状にして小さなボルトやナットが転がりにくくもしている。しかも、よくよく見るとマグネットを仕込んだ丸い底の外周に1/4ほどガイドをつけて、パーツ・トレイ自体が、不用意に転がるのを防いでいる。こう観察すると、価格から推定する・・・・≪安かろう悪かろう≫でもない、むしろ出色の製品であることがわかった。

2022年4 月15日 (金曜日)

アストロのシールド・ラチェットハンドルが安いから買ってみた!?

アストロラチェット1

アストロラチェット2

  例の台湾ツールの工具ショップ「アストロプロダクツ」にでかけたところ、シールドタイプのラチェットハンドルが格安で販売されていたので、ついつい買ってしまった。通常価格1210円(これでもバカ安だが)が、なんと半値近い680円。品番がRH462で、差し込み角3/8インチ。あとで説明するが、シールドタイプとは珍しい。
  それにしても恐ろしく安い。「安物買いの銭失い」ということわざ(かな?)が頭をかすめたが、好奇心が先に立っての買い物だ。
さっそく使ってみたところ、何ら痛痒を感じさせない仕上がりだ。
  これまで、30本以上の3/8インチラチェットハンドルを試しており、データ取りもしている。そこで、この製品がどのランクなのかをじっくり確認すべく、手のひらに載せて観察しまくった。
  全長200mmはごくごくスタンダードな長さだ。重量はカタログでは265gとあるが実測すると257gだった(この辺が台湾製のアバウトなところ?)。ヘッドの幅と厚みをノギスで測定してみると、幅が30.5mmでやや厚め、高さ24.2mmはライバルなどに比べ低い部類だった。
  使ううえでのフィールを左右するラチェットフィールについては、ややがさついて重い。けっして心地よい感じが伝わらないが、実用上には問題ない。左右に切り換えレバーの操作性も合格点。重くもなく軽くもなくで、ツナギの袖口で不用意に切り替わる心配もない。
  写真でも見るように、ヘッドの表側はノッペラボーだ。通常のラチェットハンドルなら、ギアのガイド穴、左右に小さなビス2本、切り換えレバーの軸のガイド穴などがあり、そこから、ほこりが侵入し、過酷な場所で使うシチュエーションでは、トラブルの頻度が高まる恐れがある。その点、シールドタイプのこの製品は、このノッペラボーのおかげで、ほこりの入る箇所がほぼほぼないわけだ。
  ヘッドの裏側を眺めると、プレートはスナップリングで留められている。ヘッドの内部を観察するには、このφ25mmほどのスナップリングを取り外せば、簡単に内部が顔を見せるハズ。そこで精密ドライバーのマイナスで、こじるうちに簡単にスナップリングが外れてくれた。
  このとき、ビョ~ンとばかりに空に飛ぶので、あとで探すのが大ごとになるのであらかじめ、まわりを片づけておいた方が無難だ。(あるいは器用な人はウエスか何かをかぶせながら作業する)。ギアは、36ギア、つまり1ギアあたりちょうど10度だから振り角度10度という計算。これはイマドキのラチェットハンドルでは少ない方だ。
  ヘッド内部を見て、失礼な物言いだが、「(価格のわりには)意外とまともにつくっているじゃないか!」と小さな驚きの声をあげた。36のギアを受けている切り換え部(ここに荷重が全部かかる)の当たり歯数が3個だった。ラチェットハンドルの不具合になるポイントは、このギア当たり部にある。いくら「CAUTION!「注意」」とユーザーに呼びかけても、無理やりの力を加えたり、なかにはパイプなどの延長棒でかたいボルトを緩めようとするユーザーが後を絶たない。使い方が間違っているとはいえ、まわりまわって工具メーカーの信用を汚すことにもつながるからだ。
  だから、信頼耐久性を維持するために多少なりともオーバークオリティを覚悟でつくり込む必要がある。この製品の中身を見ると、そんな楽屋裏の光景が連想される。結論は、ち密さが要求されるラチェットハンドルづくりにおいても台湾製は、侮れない存在だと再認識した。

2022年4 月 1日 (金曜日)

450円で買ったアストロの貫通ドライバーは使えるか?

アストロの貫通ドライバー

  「貫通ドライバーは、ドライバーの常道から外れる! ドライバーは叩くものではなく、回すものだ。叩くのならチゼル(鏨)を使えばいい!」かつて、欧米の整備士や工具屋さんから、そんな忠告を聞いた覚えがある。貫通ドライバーは、わが日本の工具業界だけのものだ、そんなニュアンスである。
  ところが、貫通ドライバーは、日本ではごくごく多数派というか、当たり前のように使われている。使うとわかるが、固く締まった、あるいは錆びついたビスを外す際ハンマーでショックを与えて緩める……そんな時に貫通ドライバーはとても便利なのだ。
  貫通ドライバーは、軸がグリップエンドまで文字通り貫通しているので、非貫通とくらべ確実に重くはなる。
  そのことを承知していても、やはり貫通ドライバーを選択するユーザーが多いようだ。
  先日アストロプロダクトにおもむいたところ、少し毛色の変わった「貫通ドライバー」を発見した。
  それが写真のドライバー(プラスの2番)だ。グリップ全体は透明の硬いアクリル(と思われる)樹脂なのだが、一部少しやわらか味のある異なる樹脂になっていて、しかもその一部が小山のように、まるで「つば」のようなでっぱりを付けている。手で握ったときに親指の腹がぴたりとそこにあたりグイっと力が伝わる工夫をしているのだ。しかも手前には小さなイボイボが付いていて、より滑ることなくチカラが伝わるデザインとしている。グリップの外形も、かなり太くしてトルクが少しでも多くかかるように考えている。
  グリップの一番太いところをノギスで測定してみたところ、33mm。通常というかこれまでテストした貫通ドライバーのグリップが30~32mmの範囲内なので、ひと回り太いといえる。ついでに全長は210㎜とこちらはごく平均的長さ。重量は148gでライバルたちとくらべるとやや重いカテゴリーとなる。軸の根元には、ボルスターを取り付けているため、重量的には重くなりがちだ。座金の径は、19mmで、こちらはごく平均的な大きさだ。

2022年3 月15日 (火曜日)

440円で手に入る台湾製コンビネーションレンチの素顔とは?

ASTROコンビレンチ

  このところ一部には物価高の気配がないわけではないが、ユニクロの衣料品ですっかり飼いならされているわが身としては、ときどきモノの価値が分からなくなってきた。
  今回台湾製の工具であるアストロ(ASTRO)のコンビネーションレンチを手に入れて、あれこれ調べてみると、なぜこれが440円(サイズは12mm)で手に入れられるのか? その素朴な疑問にぶち当たる。
  写真で見るように、普通のコンビレンチである。
  どこか、弱点というか死角はないものかとノギスやスケール、重量計を総動員し“身体測定”を行った。これまでテストした同じサイズのコンビレンチ約30ブランドの測定データが手元にある。その履歴と照らし合わせてもみた。全長が175mm、重量77g、スパナ部の外側幅25.7mm、メガネ部の外側幅19.0mm、軸の幅11.6mm、スパナ部の厚み6.5mm、メガネ部の厚み8.6mm、軸の厚み4.5mmなどなど。スナップオンやスタビレー、ハゼットなどの欧米の製品は、やや長く、にもかかわらず意外と軽い傾向にあり、日本製のコンビレンチはおおむね全長170~175mmで、重量が欧米並みというなかにあるといえる。
  アストロのコンビレンチは、こうしたデータを知り尽くしているがごとく、見事にジャパニーズツールの範疇に収まりながら、軸を欧米並みにやや細くすることでデザイン性を高めている。しかも、軸自体は中央がごくごく太くなったエンタシス形状。手に持った時のフィールを計算に入れているようだ。表面は、スナップオンを模した鏡面研磨仕上げで、サイズ表示もすぐ分かるように大きな文字だ。
  机上のテストでは死角が見えないばかりか、一条の魅力さえ放っている。これがワンコインでおつりがくるのだから、金銭感覚の磁場が狂うはずだ。

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