一流の文筆業の一人ではないから、痛いほど分かることがある。自分のことは棚にあげ、ある程度の目利きの能力はあるのかもしれない。
ともかく“一流品”ということをときどき強く意識する。工業製品でもいいし、食べ物でも、あるいは映画、音楽や絵画、文章にも言えるのだが、これが一流でここからが二流というボーダーを設定しづらいが、それでも「こいつは一流だぜっ!」と確信するときがある。
工具も工業製品であるので、良し悪しがあり、ときどき一流品と思えるものに出会い、ニンマリすることがある。KO-KENの次世代型ツールシリーズZ-EAL(ジール)の2726Z-3/8。いっけん何の変哲もない首振りタイプのラチェットハンドルのようにも見えなくはない。差し込み角1/4インチのボディに差し込み角3/8インチ角を移植したハンドルだ。
これを手にとり撫でまわし、ラチェットを作動させ、音を聞き、次に切り換えレバーを逆にして、ふたたびラチェットの音に耳を傾けると、たいていの人は破顔するはず。ギア数こそ36で、80ギアとか90ギアを誇るコンペティターにくらべると見劣りしないではない。だが、何しろ空転トルクが軽く、軽くできているので、まったくスペック上のアゲインスト状態は軽く吹き飛んでしまう。全長11ミリと手のひらサイズで、重量も107グラムと軽く、価格も9800円とリーズナブル。