「大きな事故を起こさないで通常の使い方をするクルマはどのくらい、何年、何万キロぐらい使えるのだろうか?」
大きな声で言うと、いささか恥ずかしいが、これが筆者の好奇心の発露。カッコよくいえばジャーナリストとしてのひそかな矜持(きょうじ)である。リッター40キロのエコカーに心動かされもするが、それ以上に“クルマの寿命を見とどけたい”が大きなテーマなのである。それもあって、平成13年式だから丸16年目を迎えた、17万7777キロをあとにした愛車ファンカーゴを手放さないで、日常の足としている。バイクを積んで大人3人が乗車できるという、稀有な収納能力を持つコンパクトカーという理由もあるが。
名車でもなんでもないクルマに、万単位の修理代をかける理由はそこにある!?
先日も、友人の一級整備士Kさんから「電動ファンのモーターのベアリングが悲鳴をあげているのでは」という指摘を受けた。確認すると、確かにエンジンを停めた時に耳をすませるとベアリングが駄目になる前兆の嫌な音がする。モーターを単体で手に取りたしかめたいという子供心に似た気分で、作業に飛び込んだ。
運よくその日は日本列島に冬の移動性高気圧が張り出した小春日和。電動ファンはラジエーターに取り付けられているので、まずラジエーターを取り外す。エンジンフードを開け、エンジンサポート、フードヒッチなどを取り外し、冷却水を抜き、ラジエーターを取り付けている3つのボルトを取り外し・・・という手順で、監督のKさんの指示で着々と作業進行。旧いクルマのラジエータータンク(ナイロン製)は劣化が進み衝撃で破損するおそれあるから要注意、と脅かされながらも作業である(写真A)。
途中、ラジエーターキャップのスプリングがなくなっていたり(写真B)、LLCがひどく汚れていることに気づきなどしたが、それぞれ新品に交換し、無事完了。作業時間は約2時間30分。これで真夏の渋滞でもオーバーヒートの心配は遠のいた。
試運転したところ、なんとなく、エンジンもクルマ全体も若返ったような気分で、筆者も幸福感を味わった。クルマのアンチエイジングなのかも。部品代はLLCを含めずに合計2万1000円ほど。旧いクルマを維持するということは、どこか「もぐら叩き」に似ている。こちらを直せば、またあちらが悪いことに気づくという。クルマ好きといってもいろいろなカテゴリーがあるが、クルマいじりの楽しみが最大級なのだと再認識した。