工具をウォッチィングしていて最大限にエキサイティングな気分に満たされるのは、当初はきわめてシンプルで改良の余地なしと思われたカテゴリーの工具のなかに、いつの間にか大きな存在感を備えた製品を目の当たりにするときだ。
最近のL型ヘキサゴンレンチの世界がまさにこれ。ヘキサゴンレンチの分類としてはナイフ型、ドライバー型、ソケット型、それにフレックス型といわれる両端が自在に動くタイプなどがあるが、やはり主流はL型。サイズごとにコンパクトにひとまとまりになるし、短軸と長軸があり、使い勝手がいいからだ。
このL型は「6角棒という素材を鋼材メーカーから購入し、曲げて、先端部をボールポイントタイプにしたり角を取ったりするだけ」と言えばそれまでの単純きわまりない工具。数年前までは、ショートタイプ、ロングタイプなどごく寂しいバリエーションしかなかったが、ここ数年で様相は一変。短軸を極端に短くしてタイトなところにアプローチしやすくするとか(写真一番上)、長軸部にカラーを付けて早回すができるという付加価値をプラスする(上から2番目)、あるいはボールポイントのアプローチ角度を38度の極限まで詰めたタイプ(上から3番目)、はたまたカド部でL字に曲げることで振り角度を小さくできこれまた狭いところでも使いやすくする(一番下)トリッキーな手法(モノづくりのオキテ破り!)、ボールポイントで相手のボルトをキャッチする機構を組み込んだタイプなどいわばL型ヘキサゴンレンチの爛熟期を迎えている。