リアエンジン・リアドライブK-10のためのエンジンは、横置き2ストロークの360cc空冷2気筒。いかに軽量で高性能なエンジンを創り上げるかが大きな課題だった。参考にしたのは、ドイツ製のロイト2気筒2ストローク400cc12馬力エンジン。これを360ccにサイズダウンして、目標馬力を2馬力高い14馬力とした。当初、試作した360cc用のピストンとコンロッドをロイトのエンジンに組み込みベンチにかけテストしてみると、わずか10馬力しか発生しなかった。そこで、冷却性の高いアルミのシリンダーヘッド、鋳鉄製のシリンダーブロックを試したり、吸排気系にチューニングを加えるなどした。キャブレターに吹き返し現象の不具合が現れた。これにはキャブの前にパイプを付けることで解決。数々の紆余曲折があった。
こうしてエンジン開発の技術者は、細かいデータをひとつずつ積み重ねチューニングをしていった。やがて360ccのロイトのエンジンは16馬力を発生し、車両に組み込み実験走行を繰り返し、充分な低速トルクを発生することを確認、エンジンの実用性能を詰めていった。
ようやく耐久テストベンチの段階をへて、量産間近の試作エンジンが完成した。シリンダーヘッド、クランクケース、ピストン、排気マニホールド、デフケース、クラッチカバー、冷却フィンまではすべてアルミ製、シリンダーは新素材のSH鋳鉄という軽量素材が採用された。当時としては最先端技術が盛り込まれたのだ。