「21世紀の新しいモビリティ社会はまだ遠い先のこと・・・」と思っていたら、世の中ため息をついている間に、どんどん変化しつつあるのかもしれない。
先日、東京ビックサイトで催された「スマートコミュニティ2016」の取材で、埼玉でのEVや電動バイクの実証実験を取材した帰り、おなじみの鎌倉街道を走っていて、赤信号で止まって左を眺めていたら「水素ステーション」がただいま建設中であることに気づいた(写真)。水素ステーションは昨年安倍首相が年内に100軒建設すると大見得を切ったものの、1軒あたり5億円近くの建設費のため、早々たやすく計画通りにいくものか!? 実際数えてみると現時点で計画中を含め現在90軒(おもに首都圏とその周辺だけで青森、北海道、岩手、鹿児島、熊本はじめ計27県にはない!)。それにいまのところトヨタとホンダからしか燃料電池車がリリースされていないし・・・まだ先の先! と冷たく眺めていたのだが、こんな地元に建設されると、さすがに胸騒ぎがするものだ。利用する車両がそんなにあるのだろうか? 余計な心配もしたくなる。
そういえば、数時間前取材したなかで「ロスアラモスのスマートシティの実証実験」というのがあった。日本のNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、アメリカのニューメキシコ州のロスアラモスや、そのとなりのアルバカーキー市でも、実証実験がおこなわれている。前者は、住宅内エネルギー制御、後者はマイクログリッドの実証実験である。ロスアラモスといえば、いまから75年ほど前、ロバート・オッペンハイマー(1904-1967年)を所長にして、1万人以上の科学者たちが集まり広島、長崎を一瞬にして壊滅的状況に追い込んだ大量殺人兵器・原子爆弾の開発がおこなわれたマンハッタン計画の舞台。ここに、平和と繁栄の象徴のスマートコミュニティ・テクノロジーがおこなわれているとはなんとも皮肉。でも、人の歴史は墓場の上に繁栄が築かれるのかもしれない。