自動車部品のメガサプライヤー・コンチネンタルを取材したら、今すぐにでもクルマの鍵が不用の世界をつくれることがわかった。鍵の替わりに「完全仮想キー」を使う。「完全仮想キー」とは、文字通り、クルマの鍵,機械的なキーでもなく、現在主流のスマートキーでもない。鍵の概念(コンセプト)を180度ひっくり返した鍵。鍵ではないものを鍵として使う!?
スマートフォンだ。じつは、“スマホをクルマの鍵として使用する試み”はすでに欧州ではスタートしている。世界的な市場で成長しつつある「カーシェアリング・サービス」で、このスマホをつかった仮想キーサービスが進んでいるというのだ。コンチネンタル社が、ベルギーの自動車サービスグループであるディートランと共同で「OTA keys(オータ・キーズ)」という企業を設立した。OTAはOVER THE AIR つまり“無線通信”という意味。具体的には、社用車(フリート)、カーシェアリング会社、レンタカーの企業向けに新ビジネスを展開するというものだ。じつは2008年から仮想キーの研究開発をしてきており、ベルギーでも試みが成功すれば日本をふくむアジア市場と北米市場にも、このシステムを展開していくという。
スマートフォンを使った、仮想キー「OTA keys」の仕組みを見てみよう。
車両とスマートフォンのあいだでデータの送受信をおこなうのだが、近距離無線通信NFCあるいは省エネ規格のブルートゥースBLE(Bluetooth Low Energy)がつかさどる。そこで、ドライバーはスマートフォンのアプリを立ち上げ、自分の都合に合わせてカーシェアリングを予約すると、OTA keysシステムは偽造防止のため暗号化されたデータレコード(つまりこれが“仮想キー”となる!)をユーザーのスマートフォンに送信する。クルマに対するアクセス権限をふくむ仮想キーは、スマートフォンのSIM(サブスクライバー・アイデンティティ・モジュール・カード)カードに保存される。NFCあるいはブルートゥースで、そのスマートフォンから車載リーダーに認証、車両&診断データ、ユーザープロファイルなどのデータが送信される。車載リーダーは車両のドアなどに組み込むことができるので、エンジンを始動する前に車内の別の受信機がスマートフォン内の仮想キーを認証すると、エンジンを始動でき、いつでも出発することができる。かつてクルマの所有の象徴だったクルマの鍵がなくなり、スマホが、擬似的なキーになる!?