今年は平成29年だが、これが30年前の昭和時代にもどったら、「すげっ、クルマじゃん!」と褒めちぎられていたハズ。世界のカーオブ・ザ・イヤーを総なめ間違いなし。
昨年10月にデビューした新型スバル・インプレッサのことだ。このクルマに乗って3ブロックも走らないうちに思わず冒頭のツブヤキを発してしまった。おじさんの心をぐっと掴むのだ!
前を走るクルマのブレーキランプを識別して、さらに性能向上したアイサイトのバージョン3や歩行者エアバックを標準装備。これらの安全装備は、21世紀のハイテクであることは認める。ステッチ入りの小洒落れたシートデザインは、乗るたびにオーナーに満足感を与えることもわかる。それでもこのクルマはハンドリング・ファーストを標榜している。なにがなんでもハンドリング!
操る喜びを重視のクルマづくりは、昭和時代からスバルが追い求めてきた一大テーマ。
「上州生まれのスバルのモノづくり」がここに結実した! てな感じ。おちょくっているわけではない。イマドキの自動車メーカーは、「燃費ファースト」と「広さファースト」に血道を上げているが、このクルマはそうした流行には背を向け「究極のハンドリング・ファースト」なのだ。
先日、近くのスバルディーラーで試乗して、このことがよく確認できた。10分ほど走っただけで、遊びのないシャープなハンドリング、ボディの剛性感の高さ、ググッとくる直噴2リッターNAエンジンの加速力で、走りの実力はすぐわかる。ふだんダルな6人乗車のファミリーカーのオーナーを自分の選択にほぞを噛む?! こんなクルマに乗っていれば世界観まで変わるかも。やはりクルマは“官能に訴える乗り物”と再認識させられた。
面白いことに、客が押し寄せているという。たぶん昭和時代にいいクルマに恋焦がれたおじさんたちに違いない。燃費と広さを追求するだけのクルマに日本の一部のユーザーは飽きつつあるのだろうか? ちなみに試乗した2.0ⅰ-Sアイサイトは258万円台から。けっして安くはない。しかも燃費はJC08で、17.0km/l、横浜市内走行で約8~9km/lとけっして誉められたものではない。筆者のシエンタHVは、この2倍の好燃費なんだから。
一瞬の走りの鋭さに感動するか、GSでお金を払うときに思わず笑みを浮かべるのを優先するか、それが問題だ。どっちも欲しいのが人間だけど。