オフィスビルが立ち並ぶ福島駅周辺から一歩足を踏み入れると・・・ペンキが剥げ落ちてはいるが「電装品専門店○○商事」、あるいは「ベアリングの◇◇商会」という文字が読み取れる。
シンガポール、フランスなど海外にも店舗をかまえ、国内では600以上の店舗展開をするエンドユーザー向けオートバックスセブンは、いまでこそ本社を東京としているがそのルーツは福島にある。昭和21年に故住野敏郎氏が自動車部品の卸売りを目的に個人経営の「末廣商会」を創業、その後「富士商会」「大豊産業」をへて現社名になったのである。
過日、オンボロのマイカーのボディについた小傷を自分で修復しようと近くにあるオートバックスに足を踏み入れた。例によって社員教育の行き届いたスタッフから、カラーナンバーの見方など初歩的知識を教えてもらった。マニュアルどおりの接客ではあるが、悪くない感じだ。
≪好奇心≫といえばかっこいいが、物書きとしての悲しき習性で、ふとこんな言葉を彼に投げかけてみた。「そういえば、先日お宅の店のルーツである大阪のオートバックスの前を通りかかりましたよ」。すると、その社員は何を言われたのか分からなかったようで、返事はなかった。中年男の唐突な質問に引いたのかもしれない。「大阪の・・・」ではなく「大阪福島にある・・・」と言えばなにかしらの答えが返ってきたのかも知れないと、少し悔やまれた。
・ インタビューに答えてくれた方々(敬称略)松田鶴義(廣見商会・代表)/長安敏夫(パシフィック工業株式会社・会長)/上田長之輔(上田興業株式会社・代表)/中島功(SPK株式会社・会長)/森山峯明(守山自動車工業株式会社・会長)
・ 参考文献 大同自動車興業「60年の歩み」/大阪府自動車部品販売組合「30年の歩み」/「50年目の日本陸軍入門」(文春文庫)/「日本における自動車の世紀」(グランプリ出版)/「日本自動車史年表」(グランプリ出版)/「自動車販売王・神谷正太郎伝」(自研社)/「国産車を創造った人々」(トヨタ博物館)/「ヘンリー・フォードとT型フォード」(トヨタ博物館)/「日本史年表」(岩波書店)/「近代日本総合年表」(岩波書店)
(次回からはスズキの知られざるヒストリー「浜松スズキ物語」をお届けします)