カーボンファイバーなどの繊維分野、医療分野など幅広い事業で活躍している帝人(TEIJIN)が、注目を引く製品を横浜で行われた先の「自動車技術展」でお披露目していた。
「多機能天井トリム」というのがそれ。事の始まりは、「夏場、エアコンの吹き出し口から露骨な冷風は嫌だ!」という助手席の女性たちからの苦情。クルマの空調の♯me too!?
そこで、開発陣が発想したのは、「天井から冷風を出せないか?!」 フロントピラーから冷風を天井に導入し、さわやかな冷風を天井から吹き出す……。これがトントン拍子にうまくいったというのだ。
鍵となったのが、「縦繊維の不織布」。不織布は通常横繊維構造だが、帝人が縦配向のモノを開発していたからだ。天井に冷風層を設け、その縦繊維の不織布を介して車内に冷風を流すというものだ。この縦繊維配列の不織布は、光をも通すので、ルーフパネルの下部(ルーフトリム)にLEDを組み込んで、目にやさしい光を車内に届けられる。風の吹き出しだけでなく、光の演出もできちゃうということだ。
この斬新な機構、参考出品ながら、空調メーカーとジョイントすれば、すぐにでも量産車に取り込めるという。昔から「頭寒足熱」が健康にいいとされているだけに、実に理にかなった新次元のエアコンディショナーである。クルマの快適性が一段と高まるに違いない。
ちなみに、縦構造の不織布は、もともと新幹線のシートの座面に使われていて、蒸れ防止を狙ったものだという。聞いてみると、相変わらず技術は実に面白い世界です。