2万点とも3万点ともいわれる自動車部品のなかで、「一番シーラカンスしているのがバッテリー!」なんて、鼻を膨らませて知ったかぶりを決め込んでいた。クルマの歴史100年、クルマの蓄電池は、重いイメージの、鉛バッテリーというスタイルを固持しているからだ。
ところが、いわゆるエコカーやHV(ハイブリッド)カーのバッテリーを調べてみて、たまげた。
鉛バッテリーであるには違いないが、燃費優先のクルマの在り方の大変革のおかげで、鉛バッテリーが大きく進化を遂げていたのだ。
とくにアイドリングストップするクルマでは、耐久性が飛躍的に高まった。アイドリングの最中には、エンジンがかかっていないのでオルタネーター(発電機)が稼働しない。バッテリーは充電されない状態。だから、オルタネーターが動いている貴重なタイミングに、どんどんバッテリー電気を送り込む(充電)をさせなきゃ! ということで、電気の受け入れ特性をがんと高めたバッテリーに大変身させたのである。どんなふうに受け入れやすくしたのかと技術者に聞くと、「極板などに入れる鼻薬、と呼ばれる微量な物質のチューニングです」と、すげない返事が返ってくる。電気と化学の世界なのである。
バッテリーの規格もかなり変化している。たとえば、トヨタのハイブリッドカーには、ENJという新タイプのバッテリーが採用されている。これは欧州統一規格EN(ユアロピアン・ノーム)にジャパンのJを付け加えたもの。プラスマイナスの端子が、本体上面とほぼ同じの、欧州タイプ(従来のJISは端子がポコッと出ているタイプ)で、日本は、欧州より使用環境(気温)が高いので、液量を増やし、液枯れによるバッテリーの寿命短縮を防いでいる。
一級整備士に聞くと「バッテリートラブルは昔とあまり変わらない頻度で起きています。ただ、バッテリーの値段が1万~5万円と高くなった点。密閉式なので専用の充電器を使うのですが、やや高めの電圧で、注入電流を小さくし、ガスの発生を抑えながら行います」とのことだ。