新車を購入後3年目、それ以降は2年ごとに車検という、クルマを所有し、使ううえでの「関所」というか「関門」がある。そのタイミングで、重量税を払わされ自賠責保険に入り、車検整備で発生する費用を考えると、ウ~ン確かに日本の車検制度は「関所」と見えなくはない。
でも、約10分という短時間ながらも“国(国土国交省の出先機関だが)が公道を走れるだけの安全性を備えているか”を見てくれる! そのように、プラス思考で考えれば、世界一厳しい日本の車検も目の敵にする制度ではなく、育てていくべきものと思えてくる。
……といった理屈はともかく、ひさびさに川崎の自動車検査登録事務所でユーザー車検に挑戦した。3年ぶり、累計12回ほどか。
シエンタ・ハイブリッドの初回(3年目)の車検である。走行キロ数が、3万キロ弱なので、整備するところはほとんどなかった。半年前早目にフロントタイヤを変えているし、オイルとフィルター交換も走行7000㎞毎にしているし、メンテナンスノートの項目をチェックしたが、タイヤの空気圧を調整するぐらいだった。冷却水の減りもなかった。もし、車検ラインで、はねられたら「あと整備」で整備すればいい、という考えも頭の隅にあった。
ただ、一番のネックは、「整備モード」に即切り替えられるか? である。
排気ガスチェックのときにアイドリングストップしていると、排ガスが測れないし、スピードメーターチェックのときTRC(トラクションコントロール)を解除していないとまずいからだ。「エンジンOFFしたあとスタートボタンを2回押し、アクセルペダルを全開で2回踏む……云々」という、「整備モード」という文字をインパネに表示させるには、やや煩わしい操作が必要なのだ。
このあたりの説明は、畳の上で泳ぎ方の説明をしているようで、何だかもどかしい‥‥。
ところが、こうした心配はすべて杞憂(きゆう)に終わった!
検査ハンマーを手にもつ検査官は、灯火類のチェックや同一性の確認をしてくれる。これとは別のもう一人の検査官が、試験ラインにクルマを入れるや否や、横に付いて逐一、操作を教えてくれるのだ。世にいう「行政サービス」である。そのぶん、少し緊張を強いられたものの、一発で車検合格! メデタシメデタシ! である。
ネットでの受付もスムーズにできるし、現場のユーザー車検受付カウンターもちゃんとあるし、係官の物言いも分かりやすく、親切だった。どうやら、「嫌われたくない公務員になろう!」みたいな標語を掲げ、事前にロールプレイングの訓練をしているに違いない!? 車検手数料こそ1700円とかなり高額になったが、車検時に必要な書類代20円が1年半前から無料化されたのは悪い気分ではない!
…‥車検という敷居が低くなった感じだ。これなら、少しクルマに詳しい主婦が、お買い物帰りに自分のクルマの車検を受けにくる! そんな妄想がまんざら絵物語でなくなる気がしてきた。振り返ると、日本のクルマ社会もずいぶん進化したのかもしれない。