「僕の妹とだいたい同じ重さなので、26㎏だと思います!」
小学3年生ぐらいの坊やが、鉄の塊、「トルセン」というクルマの部品を手にして、重さを推し測って思わず口から飛び出した言葉だ。なんだか坊やのファミリーシーンが目に浮かんでくる一言だ。
パシフィコ横浜でおこなわれた「キッズ・エンジニア」は、小学生のための自動車セミナーである。これはそのイチ光景。
30分前、樹脂製の「トルセン」が机の上にあり、「これをバラして、組み立ててください。組み立てるときのことを考え、途中メモしながら、分解するといいね」そんな紙切れ一枚を、頼りに樹脂製のトルセンをバラしていく。横には、お父さんかお母さんが熱いまなざしでアシストしている。ジェイテクトという自動車部品会社のセミナーだ。そもそも、「トルセン」とは、トルクセンシングLSD(リミティド・スリップ・デフ)のこと。リア駆動のスポーツカーのリアデフに使われる。高速コーナリングや悪路走破性の限界性能を高め、高次元のドライバビリティ(運転性能)を可能とする! というとますます分かりづらいが‥‥。
そんな大人ですら理解困難な自動車部品を樹脂製のフェイク部品とはいえ、バラして、組み立てる。最後に、本物の「トルセン」を子供に持たせて、その重さを体感させる。実際には6.5㎏なのだが、現代生活のなかでは大人ですら重さを推し測る機会が少ないため、かなりスリリングで非日常空間。
こうした体験が月に1度ぐらいでもあれば、たぶん子供の心に科学の波紋が広がるんだろうな。そんな思いを強く抱いた。