アメリカの工具ブランドDEWALT(デウォルト)は、181ピース(工具セットの組数をピースと表現する)も入って1万2000円弱。バカ安の背景は、化粧ケースに明記している通り、中国製だからである。低いレーバーコストで、量産すれば、とんでもなく安い価格で売ることができる。そんな見本商品である。メイド・イン・ジャパンには到底真似できない。
困ったことに(エンドユーザーは当面は困らず大喜び!?)、これはなかなかの品質なのだ。今回は、前回のラチェットハンドルに引き続き、コンビネーションレンチにスポットを当ててじっくり観察してみることにする。
まず、写真を見てもらいたい。メトリック(ミリサイズのこと)の6本をずらりと並べてみた。これとは別にインチサイズも6本あるのだ。
黒光り(ブラッククロム・ポリッシュと誇る!)するせいもあるが、見た目はなかなかイケている風情。ロングタイプで、スマートに見える。サイズ表示も表裏、滞りなく表示されている。ところが、よく見ると、メガネ部の内面両端に塗り残し部分がある。塗装のプロセスで、クリスマスツリーのように、フックに複数本ぶら下げ、塗装する。このとき、フックのところがどうしても塗り残る。ここをいかに誤魔化すかが実はポイントなのだ。日本のモノづくり世界では、これは初歩の初歩。こんなところに中国製が顔を出している。微笑ましい? それとも腹が立つ? 機能的にはさほど差がないとみるか?
試しに12ミリを一本ピックアップして「身体検査」をしてみた。重量を測定し、全長、各部の肉厚、幅などをノギスで測定するというものだ。重さ80g、全長195㎜…‥。これまで23銘柄を測定していたので、これらのデータと照らし合わせると、「長いタイプに入るが、やや重い。スパナ部とメガネ部の肉厚は、やや大ぶり気味」。総評すると、“可もなく不可もなく”という感じである。