日本人は“モノづくりが得意”とはよく言われる。いっぽうで、そのモノづくりが危ないともいわれる。レースに参加する面白みは、勝ち負けもあるが、自分たちの作ったものがすぐに明白に評価されることである。そこには、日常生活では、味わえないダイナニズムがある。
リスクはあるが、挑戦する喜びを知っている集団は、生き生きしている。福島県にある(株)エヌ・ティー・エスというわずか50名ほどの精密金属機械加工のモノづくり工場も、その一つといえる。もともと社長自らがバイクのレースに青春を打ち込んだという。23台の5軸マシニングセンター、10台の3D金属プリンター、精密計測機など、小規模とはいえ最新のマシンがそろう。精鋭の職人による部品作りは世界レベルという。オートバイのレーシング・フレーム、カウル、エンジンのシリンダーヘッドなど多岐にわたる。たとえばカウルひとつとっても、空力特性だけでなくラジエーターの冷却性がダイレクトに影響。これらを一つずつに詰める工程は、量産品では得られない苦労と楽しさだ。
世界選手権Moto2に挑戦するこのチームのマシンが、このほど初ポイントを獲得し、世界に優秀性を証明したカタチだ。
この初ポイントゲットで得たものは、「突破力」だと社長の生天目将弘(なまため・まさひろ)さんは説明する。精鋭マシンのパーツを生み出す力は、複合的かつ多角的な解決力が大きなパワーとなるという。