大げさに言えば、オイルフィルターレンチは、星の数ほどある。
エンジンルームに手が入りやすかった1970年代後半ごろまでのクルマなら、いわゆる汎用(ユニバーサル)のオイルフィルターレンチが大活躍していた。オイルフィルターの外径に合わせて回すタイプ。ところが、1980年になると、排ガス関連の装置がエンジンルームに取り付き、汎用タイプのレンチは使えないことが多くなった。
そこで、登場したのが、俗にいう“お椀型のレンチ”だ。フィルターの外径に合わせるタイプ。このタイプは、クルマを買い替えるとその都度フィルターレンチに悩むことになる。ところが、“案ずるより産むが易し”で主要国産乗用車のオイルフィルターの外径はだいたい5~6種類ほど。だから、いまではオイルフィルターレンチといえばお椀型を指すほど。
今回見つけたのは、ランプメーカーのPIAAのお椀型フィルターレンチだ。どこが目新しいか、というと、「トルクメーター付き」だという点。新品のフィルターを取り付ける際、オイル漏れがないといいが……と思いながら締め込む。私の場合は、手でしっかり締めてから1/2回転ほどレンチを使い、締め足している。取り付け後数分エンジンをかけ、オイル漏れがないかを確認する。
この製品を購入後、どこに「トルクメーター」なるものが付いているか、穴が空くほど観察した。どこにもそれらしき機構は組み込まれてはいない。
ただ、外周に90度間隔で、1,2,3,4という数字が刻まれている。このことを指して、「トルクメーター」と呼んでいるらしい。日本国語大辞典によると、「メーターとは、物の量や度合いを測る器械」とある。測る器械など何処にもない!
「こりゃ、羊頭狗肉! 詐欺じゃない!」と思わず叫んだほど。数字を刻むことで締め付け角度を確認できるという理屈らしい。ところが、この刻まれた数字が読めるほど、フィルター回りの環境はよろしくない。たとえばシエンタなど、フィルター脱着作業はクルマの前に横になった状態で、ラジエーターの下に片手を入れ手探りでフィルターを見つけるのだ。この作業、慣れればどうってことないが、とてもお椀の上の数字など読めるものではない。
総括すれば、どうも机上で考えただけの製品と断定できる。というか現場を知らない開発陣が思いついた製品。そんな不可思議でイリュージョンめいたフィルターなのである。100歩譲って「トルク目盛付き」とすればよかったかも? 価格は、1490円だった。