「……ネジについては、みなさん“産業の米だ!”とかなんとか誉めておきながら……ふだんネジやボルトのことなど、どこ吹く風で、クルマやバイクで楽しんでいる人がなんと多いことか!?」
いきなり「チコちゃんに叱られる!」の上から目線のナレーションもどきをかましてしまったが、要するにクルマやバイク、冷蔵庫や洗濯機など工業製品を組み付けている製造ラインで、大活躍している電動式のドライバー(写真)とねじのお話である。
この電動式ドライバーを使い、1個ずつねじを締めつけていくのだが、これを手に持つのは作業員である人間だ。そこで、ネジを締め付けるという作業は、相手のメスネジに、オスネジ(ボルト)をねじ込む作業なのだ。この場合オスネジを相手のメスネジに対して斜めにいれてしまうと、「ネジ山がかじる!(つまりネジ山が破損しちゃう!)」という事態になり、ラインが止まり、工場側としては大変なこととなる!
いくら手厚い訓練を受けた作業員の場合でも、つい前夜飲み過ぎたとか、朝夫婦げんかして気分が平静でいられなかった……などといった理由で、つい油断してしまうことがある。(まぁ、これが“人間だもんね‥‥仕方ないさ”と相田みつを先生曰く!?)
とにかくだ。オスネジの先端部をよ~く見ると、「案内ネジ部」といわれる通常のネジ山より半分ぐらいの低さのねじがあるので、たとえ斜め挿入具合が、9~10度ぐらいなら何とか“かじり事故”、“焼き付き事故”が起きずにセーフだという。ところが、これ以上になると、ラインが止まり、生産性が落ち、コストを引き上げる原因ともなりかねないのだ。
そこで、登場したのが、イワタボルトの「APボルト」だ。APというのは、アジャストメント・ポイントの略。ネジの先端部の案内部をさらに長くすることで、たとえ斜めにオスネジが挿入されても、セーフになる可能性を高める役割をする(イラスト)。だいたい12度ぐらいまでならセーフだという。2~3度の差、実はこれ製造のラインでは大きいことなのだそうだ。
ネジというマニアックな世界の、なかでもトリビアチックなお話でした。