取材に出歩くと面白い現場に出会うことがある。神戸から電車に揺られ約1時間のところにある兵庫県三木市の工具メーカーにうかがった折、無人駅の上に「金物博物館」を発見。足を踏み入れたところ、「たたら製鉄」の復刻現場を発見した。月に一度、街のひとにその様子を見せるというのだ。三木市はもともとハサミやノコギリなどをつくる金物の町なのである。
「たたら」とは、1000年以上の長い歴史を持つ独自の製鉄技術で、もともとは「強く熱する」という意味で、インドあるいは中央アジアを源にする言葉だという。BC15~20世紀にヒッタイト(いまのトルコあたり)生まれた製鉄技術がインド・中国を経由し朝鮮半島から日本に渡ったのが西暦6世紀(古墳時代後期)とされる。おもに砂鉄を素材として、大量の木炭を使い、やがて日本刀づくりへと発展する。大量の木炭を使うため、中国地方などは禿山に近い状態になったという。大山にその姿が見えなくもない。
粘土質の炉の中に木炭を入れ、点火後“ふいご”といわれる空気注入箱で、風を炉内に送り木炭と砂鉄を交互に上から加え続け、炉内の燃焼反応で高温にし、砂鉄から酸素を奪う(還元)で、和鉄をつくる。これを鍛錬で、脱炭(炭素分を抜く)ことで和鋼(わはがね)を作り出すのである。ちなみに、1トンの鋼をつくるのに木炭13トン、砂鉄13トンが必要だったといわれる。