燃料電池車の普及は、インフラ整備との追いかけっこでまだ先のことだが、いまや燃費のいいハイブリッドカーが多数派を占めつつある。軽自動車を除く登録車の世界で、トヨタ陣営の枠外にある、どちらかというと弱小メーカーであるスズキは、どんな手段で存在感を示すことができるか? ホンダのような個性を売り出すメーカーを目指すのか? はたまたマツダのように、他にはない技術を結実させてのクルマづくりで勝負をするのか?
スズキのカービジネス生き残り作戦は、どうもこの2つのメーカーとは一線を画すようだ。
どこのメーカーもほとんど気付かないニッチな領域でのクルマづくりに、かけているように見える。軽自動車のハスラーは、遊びゴコロ満載のクロスオーバー。ダイハツや三菱、ホンダには存在しない。むろん過去には同じようなコンセプトのクルマはあったが、販売に結びつかなかった、いわば、お蔵入りしていたコンセプト。スズキの凄みは、埃をかぶった手法を21世紀のふさわしい色合いで飾りつけ、成功したのである。この世界は、売れれば官軍である。
同じようなコンセプトで、今度は登録車で展開したのが今回デビューした「イグニス」(IGNIS:ラテン語でかがり火の意味)である。“年齢を問わずアクティブなユーザーがターゲット”が言葉としてのコンセプトも、なんだか遠い昔に聞いたようなキャッチ。半年ほど前デビューしたワンボックスの「ソリオ」のプラットフォーム(台車)とエンジンなどのパワーユニットをソックリ使った。持ち駒をすこし仕立て直すことで、価格を下げ、購買意欲を高める作戦。車高をやや高くして、アウトドアでも使えそうに見せるのがクロスオーバーという手の内。そのぶん乗り降りがやや面倒になり、シニア世代には受け入れられない!? でも、クルマのボディカラーだけで買うか買わないかが決まる世界、こんなクルマにもココロ動くユーザーがいるのかもしれない。(イグニスはなんと13色もある!)ちなみにスバル同様のステレオカメラが採用され、自動ブレーキ性能が強化されているのは慶賀すべきだ。排気量は1200ccで、すべてCVT。価格は130万円台から。