三菱ふそうから、川崎工場の見学会の案内が舞い込んだ。≪昨年から中型大型トラックの車両ラインをストレート化して、より効率的になり、エンジン組み付け工場も一新したので見て欲しい≫というものだ。
量産工場についてのプロでもなんでもないが、工場見学ほど面白いものはない。根っこは小学生の社会化見学と同じノリで、取材した。1941年創業だから、すでに75年もたつ工場だけに、『ツギハギだらけだったラインを、約100億円をかけて、10年がかりで少しずつストレート化しました』(担当者)というだけに、500メートルほどの中型と大型トラックの組み立てラインは、以前見たときに較べ、わかりやすく壮観だった。
何が驚いたかというと、逆転の発想をしているのである。トラックはフレームにアクスルをまず取り付け、エンジン+トランスミッションを組み、さらにキャブと呼ばれる運転席ボックスを取り付けるのだが、フレームにアクスルと取り付ける段階で、フレームを反転していた。この方が作業者にとり高さをアジャストしやすく、作業性がいいという。エンジンを載せる前に太いチェーンを巻き付け、ゆっくりゆっくりフレームを正対に戻すのである(写真)。ちなみに、となりの小型トラックのほうは、従来通り正対のまま作業していた。
エンジンとトランスミッションを組み付け、ラジエーターなどの冷却系部品を取り付ける工程は、かつてのごみごみした感じから、コア生産といって少人数で、コンパクトに仕上げていくラインに変貌していた。ただ、残念なこともわかった。三菱ふそうは、ダイムラーグループの一員になっているため、小型から大型エンジンまで一貫してつくっていたかつての姿から、国内需要中心の中型エンジンだけを造り、小型はイタリアから大型はダイムラーから購入しているカタチ。国際的な相互依存構造である。これを裏付ける数字もある。国内需要の長引く冷え込みで、輸出比率が90年代から伸び、いまでは75%が輸出だという。自動車メーカーとして向き合うのは、どうも海外のようだ。