われわれ庶民も足を踏み入れることができるようになった「迎賓館赤坂離宮」。その白亜の殿堂ともいうべき、迎賓館の前庭で、このほどメルセデスベンツの最新モデルがパフォーマンスを展開した。じつは、この日は単なる最新安全技術を携えた新型車両の発表会というだけではなかった。特別な場所でのお披露目の背後には、なにやら窺い知れない意味があるのかもしれない。とにかく、100年の歴史のある迎賓館に足を踏み入れることにする。
20人近くの太鼓隊が、威勢よく太鼓を叩きながら背後から現れ、ベンツの「パテント・モトヴァーケン」と「VISION TOKYO」を横目に、迎賓館の正面へと向かう。
「パテント・モトヴァーヴェン」とは、いうまでもなく1886年内燃機関を持った地球上初お目見えしたベンツの3輪自動車である。「VISION TOKYO」は、2015年の東京モーターショーで登場したベンツの近未来車。近代都市東京をリスペクトしたデザインとスペース効率、多目的性、知性をふんだんに持ったコネクティング・カーである。
スロープにはあらかじめ白いベールに包まれていた完全自動運転にさらに近づいたメカニズムを搭載した数台の最新型Eクラスが、おもむろに、その姿を見せた。左右のスロープを降り、そのうち2台が平行して走る。完全自動運転にさらに近づく革新的なドライブパイロットと呼ばれる先行車を追従する自動運転を披露しているのである。このクルマには、ウインカー操作だけで、車線変更を自動でおこなう「アクティブ・レーンチャンジング・アシスト」という機能も備わる。くわえて、事故時の衝撃音から乗員の耳を守る世界初の「PRE-SAFEサウンド」を装備。その後、Eクラスは、「パーキングパイロット」機能で、ハンドルから手を離し、自動で、駐車スペースに収まった! こうした動きは、よほど注視していないと理解できないものだったが、確実に近未来を指し示すパフォーマンスであった。それにしても100年以上の歴史ある迎賓館と最新モデルのお披露目との組み合わせ、なんとも目を丸くする不思議な光景だった。