矢沢のエイちゃんがTV画面で、ハンドルから手を離し「やっちゃえ日産!」と叫ぶ。インパクトのあるCMが何度も繰り返し流されるのを見るにつれ、これまで何度も裏切られたにもかかわらず、「今度の日産はいいのかな?」とつい判官びいきしたくなった!?
いち早く試乗した友人から聞くと、その表情はかんばしくない。「アクセルとブレーキを制御することで、前のクルマに追従する機能。ハンドルを制御することで走行レーンを維持する機能。この2つでプロパイロットと呼ぶセレナの半自動運転は構成される。でも、もたもたした加速とタイミングが悪いブレーキング動作で未成熟さはぬぐえない」とのこと。アイドリングからの再始動時の不具合問題もあり、どうやら「やっちゃえ日産!」のトップバッターは、討ち死に寸前!? 三菱ほどではないが、トヨタやホンダ、それにマツダなどのこのところの果敢なビジネス戦略の前にあせりが出てしまったのかもしれない。
ライバルよりも一刻も早い開発。一方クルマは安全性を十分確保しないといけない。しかもクルマは電子制御のカタマリ。あらゆる面での製品の確認作業には愚直さが求められる。ここに社風が色濃く現れると考えると、わかりやすい。
とはいえ、新型セレナは、このジャンルでの販売台数NO.1を長く維持していただけに、なかなか魅力的装備を備える。8人分のシートアレンジの妙、上部ガラス面だけでも開けられるリアゲートの手の込んだ構造、リアのスライドドアを車体下部に足を押し入れるだけで開閉できる機構(ハンドフリー・オートスライドドア)、USBコネクターが各シートに付くなど、使い勝手の面では、いまのところライバルを凌駕しているようだ。ただし、燃費性能はいただけない。マイルドハイブリッド車なのでJC08燃費で17.2km/l。ノアなどのストリングハイブリッド車は23.8km/lだから、明確に後塵を拝している。「やられた! 日産」と揶揄されないように、技術陣は励んでほしい。