若い読者には信じられないかもしれないが、かつてトヨタと日産は互角の争いを繰り返していた。バトルを物語るものとして、1964年(昭和39年)に、社会現象とまでいわれたブルーバード・コロナ(BC)戦争まで起きた。
ところが、いまやトヨタは世界に冠たる自動車メーカーとなり、かたや日産は、経営不振からフランス・ルノー傘下の外資系自動車メーカーに凋落。国内販売ではいつの間にかダイハツにも抜かれ5位定着。国内では売れるクルマは、セレナくらいの弱小メーカーと成り果てた。
ところが、11月の月間車種別販売数ランキングに異変が! 何度も目をこすって確認。コンパクトカーのノートがアクアやプリウスを抜いてトップに踊り出たのだ。2位のプリウスに2451台多い1万6000台近くも売れたという。ハイブリッドカーがスタンバイしているのが秘密らしい。
押っ取り刀で、この秘密を探るべく、近くの日産ディーラーに出かけた。
元メカニックだったというセールスマンを取材。カタログを交互にながめた結論は、電気自動車リーフの部品を上手く使ったところにあった。リーフのモーターとインバーターをエンジンルームに載せ、駆動用のリチウムイオンバッテリーを前席下に押し込んだレイアウト。あくまでもモーター駆動で、1200ccエンジンは、発電専用に徹している。
発電用エンジンは、ロードノイズに紛れさせるため、あえて中速領域で発電させる。だから、人の耳には静かな印象を抱かせ、燃費も37.4km/lとアクア並み。車重も1200kg台に押さえている。リーフの部品を流用していることもあり、価格も、195万円台(売れ筋のe-POWER X)に抑え、戦略的プライスも販売にプラスしているようだ。セールスマンに言わせるとタンク容量は41リッターなので、満タンで900キロは走るというからプリウスPHV並み。燃費のよさも売れた要件のようだ。日産は、このいい流れを持続できるかが課題だ。