「わくわくドキドキ感」という言葉が、わずか30分あまりの新車お披露目会のなかで、30回以上は使われたのではないだろうか。
北米では「ホワイト・ブレッド」つまり「食パン」、日本でいえば“白米”のようなクルマ。そんなふうに言われているカムリは北米で、月3万台以上も売れている。グローバルでは累計1800万台というから凄い。でも、そのココロは、「いいクルマだけど、いささか退屈なクルマ」なのである。
そんなカムリが6年ぶりにフルモデルチェンジされた。イメージカラーは燃えるようなレッド。低く構えたプロポーションは、なんだか地を這うスポーツセダンである。全高で25ミリ下げ、フードの根元ではなんと40ミリも下げたという。これは様子が違う。もっともカムリらしからぬカムリ!?
エンジンは新開発の2.5リッターにリチウムイオンタイプのハイブリッドで、なんと熱効率41%で、燃費が33.4㎞/lというのだ。車重は1500㎏台。熱効率はふつう30%台だから、冗談抜きにノーベル賞ものだ。エンジンをゼロから開発しただけに、21世紀のハイテクを投入できたという。真っ青になった他メーカーの技術者の顔が浮かぶ。
この新型カムリのキャッチコピーは、「ビューティフル・モンスター」。早い話“エロかっこいいセダン”。これでもって少数派に転落していたセダンを復権させるという。
120年ほど前に地球上に出現したクルマは、もともと自由のシンボルだった。個人の移動の自由の象徴であった。
このテーマを強く具現化したクルマなんだな……と一人合点して新型カムリに乗り込むと、とたんに自由がわからなくなった…。筆者の座高の高さもあるけど、天井に頭をぶつけそうな気配なのだ。前席に座ると、ルーフのエッジが頭上にかぶさる感じで、梅雨時のうっとうしい気分全開で思わずふっと息を吐く。キャビンはなんだか、監獄に見えてきた。ふだん無駄に空間が広がるSUVなんかに乗っているからだと思うが、この400万円前後のこのカムリは、自由のカギを握っているのか、逆に不自由さを手にするのか、わからなくなってきた。