横浜のみなとみらいの一角にあるパシフィコ横浜で、毎年5月に行われる「自動車技術展」は、素人には難しすぎて、大半が“木を見て森を見ず”の感じ。でも、なかにはがぜん興味を引く展示物にぶつかり、思わず立ち止まり話を聞いてみたくなる。
前回も同じ書き出しだったが、今回はちょうど梅雨時に入り「ワイパーモーター」の話題だ。ワイパーモーターは、長い間1個のモーターで、リンクといって、金属の棒(中空だが)で左右をつなげていた。だから、フロントガラスの下部にはリンクを存在させ、動くだけのスペースが必要なのである。群馬県の桐生市にある(株)ミツバは、ワイパーの4大メーカーのひとつだそうだ。そのミツバが、参考出品していたのが、「ブラシレス・ダイレクトドライブ・ワイパー」である。
早い話、左右に1個ずつワイパーモーターを持ち、そのモーターのシャフトの直接ワイパーアームがつながっている。一見非効率に見えるが、これが最新のトレンドだそうだ。左右別々に制御できるので、たとえば、右だけ稼働、左はお休み、なんて芸当ができる。むろん右ゆっくり、左は速くなんてこともできるのだ。
「それより、クルマのデザインが変わるんですよ」とミツバのエンジニア。「リンクが存在しないということは、そのぶんボンネット周辺の形状の自由度が高くなる」というのだ。どんなふうにデザインが変化できそうなのか想像できないが、エクステリア・デザイナーには革命的事件なのかもしれない。モーターがブラシレスということは、ブラシがないぶん静粛性が向上する。より静かになり、モーターの寿命が延びて故障が少なくなる。でも、逆にコストは今のところ1.5倍ほどで、量産化することで、コスト差を小さくする…これまでの自動車部品がたどってきた新機構と同じ流れをたどることになるようだ。