「ポン! と音を立てていきなり自動運転技術がクルマに搭載されるわけじゃないんです。いまは過渡期なのです。いろいろな課題があるわりには、メディアは明るい部分だけにスポットを当てすぎるのは問題です」
8月初頭、都内で2日間にわたって開かれた自動運転フォーラム(正式には「2017NCAPフォーラム」)でのドイツ人担当技官の衝撃の発言だ。
よく知られるように、世界の自動車メーカーはいまステージ1から徐々に技術向上してステージ5の完全自動運転を目指している。「ステージ4とか5の完全自動運転車が登場するのは2020年だ」とか「いやいや2025年を待たないとダメだ」といういろいろな情報が飛び交う。
国際会議を取材して見えてきたのは、「自動運転車両とはいえ、無事故で走れる完璧車両」ではないということ。
昨年のステラモーターの死亡事故が示唆するように、情報の至らなさでユーザーの誤解を招き、それが事故につながる。どんな技術も過渡期は、誤解と思い込みが横行する。言葉自体も「同一車線自動運転」とか「部分自動運転」といった自動車メーカーの売らんかな! の勝手な説明で、ユーザーは混乱し、誤解を生んでいる。
冷静に考えれば、自動運転の目的は、3つだ。
安全性の向上(運転アシスト)、労働力不足の解消(トラックのコンボイなど)それに高齢化対策である。その究極にいわば鉄腕アトムの世界をイメージする「完全自立走行」があるのだが、究極でも、ぶつけられる危険を抱える以上、“死亡事故ゼロ”というビジョンは、夢のまた夢なのである。ただ、人工知能が人間の頭脳を上回るシンギュラリティ(技術的特異点)が起きるとされる2045年時点では、完全自立運転車がガンガン走る世界が実現しているに違いない。