海外に出かけると、日本のことが外から見えてより理解が及ぶのと同じように、トラックのことを勉強すると乗用車の輪郭がよりクリアになるようだ。ここ半年ばかりトラックの取材をしていての一つの想定外の成果の一つである。
たとえば、ブレーキだ。
乗用車では、フットブレーキと駐車ブレーキの2つしかない。
ところが、トラックには、乗用車同様にフットブレーキをもちろん備えるが、このほかに排気ブレーキやリターダーと呼ばれる補助ブレーキが付いている。重い荷物を載せるトラックは、たとえば下り坂などで、フットブレーキだけでは、制動力がおぼつかないため、補助ブレーキを必要としているのである。
排気ブレーキというのは、普通ステアリングホイールの左から生えたレバーを上か下に押すことで(上か下かはトラックメーカーで異なる!)作動する。原理は、排気管の途中にバルブを設け、閉めることにより排気をマフラーに行くのを防ぐことで、エンジンの動きを抑制する。
乗用車で、かつて雑誌の取材の冗談ページで、マフラーの先端を大根でふさぎ、エンジンを止める! なんてことをしたことがあるが、まさにこれが「排気ブレーキ」そのものである。完全にフタをすると、エンジンが止まるので、トラックの排気ブレーキシステムのバルブは、隙間をもうけ排気ガスを少し逃がしている。
もう一つの補助ブレーキの「リターダー」というのはプロペラシャフトの回転に、直接負荷をかけることで速度を落とすという原理。電磁石の力でおこなうか、流体の力でそれをおこなうかいくつもタイプがある。50~60万円と高価なので、あまり使われないという。写真は、三菱ふそうの小型トラック・キャンターの排気ブレーキのスイッチである。