電気自動車といえば「航続距離ガソリン車並みを目指す、2次電池リチウムイオンを使ったタイプ」と思われてきた。が、この常識にガツンと言わせる「もう一つのEV」を提唱する人物がいる。このひとにインタビューした。
東大工学部の堀洋一教授(63歳)である。子供の頃ラジオ少年だった堀教授は、東大入学後、秋葉原電気街に入りびたりの電気オタク。伺うと、実にフレンドリーなお人柄。
卒業後パワー・エレクトロニクスの世界で活躍され、自動車にキャパシタを組み込み、走らせる実験を始めたのは、実に1990年代から。キャパシタというのは、要するにコンデンサーだ。2次電池のように化学変化する電池は寿命が数千回だが、キャパシタはただ帯電し、放電するだけで化学変化がないので、その寿命は約200万回。しかもパワーは約10倍で、グイグイとモーターを回せ、加速も悪くない。加えて、4輪の制御が楽にできるので、路面のミュー(摩擦係数)を感知した4WDとしての期待値も高い。
ただ、課題は、エネルギー密度が、わずか1/10という点。だから、せいぜい20㎞ぐらいの航続距離。
そこで、堀先生が提唱するのが、走りながら充電するというコンセプト。ガードレール、あるいはマンホールの鉄の蓋にワイヤレス充電装置を組み込めばいいと。つまりちょこちょこ充電ながら走るEVなら、十分実用化できるというのだ。このインフラ整備は約5000億円と試算する。
ちなみに、中国・上海の路線バスでは、バス停に停止中に充電するキャパシタ路線バスが活躍しているという(写真)。