6角レンチ(ヘキサゴンレンチ)といえば、L字型、ナイフ型、ドライバー型、ソケットタイプといろいろあるが、先端部は要するに6角のソリッドタイプか、斜めから入れられるボールポイントぐらいだろう! 線材をカットして創れることもあり、世界には6角レンチのメーカーはオーバーに聞こえるかもしれないが、星の数ほどある。
そんなふうに高をくくっていたところ、前々回のフジ矢の「ネジバスター」を取材するため東大阪のフジ矢に問い合わせたところ、たまたま営業部の中空賢司(なかぞら・けんじ)さんが電話口に出たことから、お会いしたこともないにもかかわらず、ついつい工具をめぐる話が弾んだ。そして、筆者が知らなかったヘキサゴンレンチに行き当たったのだ。
新潟県三条市にある「若穂囲(わかほい)製作所」は、おもに6角レンチの工具メーカーだ。燕三条には、かれこれ30年近く前から片手の指では間に合わないほど取材で伺ってはいたが、迂闊にしてこの製作所の存在を知らずにいた。
その若穂囲を数年前東大阪のフジ矢が傘下に収め、WISE(ワイズ)というブランドで、6角レンチなどを展開しているのである。社名も「ワイズ株式会社」と変更している。
さっそく、カタログを取り寄せ、いくつかの商品を試すことになった。
今回は、その1番バッターで「スティックボールレンチ」だ。L字タイプのロングタイプで、横から見るとアルファベットのI(アイ)に限りなく近いL。つまりスモールLがきわめて短くできていて、タイトな場所にあるネジにも対応できるタイプ。これはそう珍しくはない。
ところがである。そのスモールLの先端にズームインすると、なんと先端部が12角に加工してあるではないか! フムフム……通常の6角部なら、振り角が60度であるが、これなら半分の30度でOKという理屈だ。なるほど、これなら手が入りづらいバイクのエンジン回りなど有効だ。3mmから10mmの6サイズにこれが採用されている。ちなみに、価格は使用頻度の高い5㎜、6㎜あたりで800円前後。
ところが、読者もすでにお気づきの通り、スモールLが短いと、ロングL側の先端部のボールポイントの6角部を使うとき力が入りづらい! アンビバレントな事態だ。そこで、このときは、別売りの補助ハンドル(ネットで650円ほど)を使うとき、作業性が増して具合がいい。作り手側の意思が伝わる商品だといえる。http://www.niigata-honmono.jp/wise/
このWISE、“使用者ファーストな製品”があるようなので、しばらく探索をしていくつもりだ。